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2016-07-03 08:24:04

【15】どんな仕事か

テーマ:ショートショート「古ぼけた原稿用紙」
夕食後、母親があらたまった様子で
「これからの世の中、どんな仕事がいいのかね」とたずねた。
私はケータイをさわりながら
「高齢者がいっぱい増えるから、やっぱり介護系かな」
「そう、団塊の世代の人たちが年寄りになって、その人たちの世話をするのは、あなたたちなのよ」
「となると、やっぱオレオレ詐欺かな」と兄もケータイをさわりながら言った。「オレだよ、オレ、ってやつ。年寄りが多くなるから、金をまきあげる相手も多くなるってわけ」
「なに言ってんのよ」と母親が少し怒りぎみに言った。
「そうよ、オレオレ詐欺なんて」と私も言った。「昔の年寄りはお金を持っていたけど、これからの年寄りは金もないんだよ。大金まきあげるの、むずかしいんじゃない」
「そういうことでなくて」と母親が私をにらんだ。
「女だったら、金持ちの年寄りと結婚するっての、どう? すぐ死ぬから財産もらえるよ」兄はあいかわらずケータイをさわりながら言う。
「玉のこし、ってやつね」と私。
「そんなことしか考えないんだね」と母親がため息をついた。「将来のこと、しっかりと考えないと。これからの世の中は、金持ちか、貧乏で、中間のいない格差社会になるんだから」
「どんな仕事が儲かるんだろ」と兄。
「金儲けもたいへんだよね」と私は言いながら、ケータイでネットカジノで20万円をもうけたのを確認した。
兄はケータイでデートレードをしているが、毎月100万円の収入があるそうだ。
もちろん母親には内緒だけど。
「本当に、どーしたら金がもうかるかね」
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2016-06-01 05:59:48

【14】赤レンガの家の少年

テーマ:ショートショート「古ぼけた原稿用紙」
通学路に赤いレンガでできた洋風な家がある。
二階建てで道路に面していて、二階に窓がある。
大きなレンガの門があり、私は学校へ行く途中でいつも見とれていた。
こんな素敵な家にいったいどんな人が住んでいるのだろう?
通学途中、興味津々で家を見上げる毎日だった。
そんなある日、二階の窓が開いていた。
白いカーテンが揺れていて、はっと窓を見上げると、
そこに彼がいた。
彼は窓際に立って、遠い目をして空を見上げていた。
そのしゅんとした鼻立ちと、さびしそうなまなざしに私はドキッとした。
年は私の二つか三つ上だろうか。
思わず見とれていると、彼は窓を閉めてしまった。

一目惚れかもしれない。
学校へ向かう途中、ずっと彼のことを考えていた。
どんな人なんだろう?
ずっと家にいるんだろうか?
寂しいんだろうか?
その日一日、学校で何をしたか、全く覚えていない。
学校から家への帰り道を急ぎ、あの家の前まで来た。
期待しながら窓を見上げたが、窓は開いていなかった。
私はしばらく家の前をうろうろしていたが、窓は開かなかった。
あれ、これって、変質者?

次の日の朝、登校時に窓を見上げたが、やはり窓は開いていなかった。
「カナエ!」
学校で私の様子を心配した友人が声をかけてきた。
私は声を出せないので、タブレットを取り出して、
赤いレンガの家の少年の事を教えた。
友人は彼のことを知っていた。
「ああ、彼ね、でもカナエは彼とはうまくいかないよ」
「どうして?」私はムッとしながら、タブレットで文字を打つ。
「だって、彼、目が見えないの。
声の出せないあなたと、どうやって会話するの?」
                                 (終)
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2016-05-08 17:54:43

【13】運動会の夜のごちそう

テーマ:ショートショート「古ぼけた原稿用紙」
運動会の夜、母親が皿いっぱいの唐揚げを出した。
「今日、がんばってたから、鳥の唐揚げよ!」
ユキとヒロシは大歓声を上げた。父親もうれしそうにビールの催促をした。
保育園での運動会で、ユキは徒競走で一位だった。障害物走でも一位、大玉ころがしでもチームは優勝した。
ユキの活躍ぶりに、父親はビデオ撮影しながら、大喜びだった。
弟のヒロシも大喜びだったが、それは運動会とは別のことでだった。
運動場の溝の中に巨大なカエルがいたからだった。
それは四十センチもあろうかと思われる巨大なウシガエルで、子どもたちの人気を集めていた。子どもたちは棒きれを持ってくると、巨大なカエルをつついては喜んだ。ユキはこわくてさわれなかったが、園児たちは何人もさわっては、キャーキャーと歓声を上げていた。
「おいしい」とヒロシは唐揚げを食べながら、「でも、あのカエル、大きかったね」
「ああ、だから今日は、こんなに唐揚げがたくさんあるんだよ」
「えっ」ヒロシとユキは不思議そうに父親の顔を見た。「なんて言った?」
「これ、カエルの唐揚げ」父親はビールをうまそうに飲んだ。「鶏肉みたいな味だろ」
「食べない」「私も」
子どもたち二人はいやそうな顔をして、箸を置いた。
「あなた、独り占めしようと思って、そんな嘘ついちゃ、だめよ」母親が言った。
「ああ、悪かった。そういう話だったな」
そう言うと父親は口からカエルの足をペッと吐き出した。
                                  (終)
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2016-04-26 06:29:50

【12】合唱コンクール

テーマ:ショートショート「古ぼけた原稿用紙」
合唱コンクールは苦手だ。
声を出せない私はもちろん歌うことができない。
それなのにクラスの中にまざってただ黙って立っていなければならない。
学年で練習した時に私のことを知らない他のクラスの先生に大きな声を出して歌うように叱られたことがあった。そんな時、担任の先生が慌ててフォローしてくれたけど、私は傷ついた。
中学三年生になった。
中学生最後の合唱コンクールということで、皆気合の入り具合が違っていた。リーダーの人たちは最優秀賞をとりたいという気持ちが強く、練習の指導にも力が入っていた。朝練に、昼休みも練習、放課後ももちろん練習だった。
そんな中で、歌わない私はとても目立つ存在だった。
だからクラス会長の山根さんが
「カナエちゃん、口パクでいいから、大きな口を開けてくれない? クラスのためなの」と私に頼んだ。
実は私は小学校から中学にかけての合唱のたぐいは口パクしていた。でもそれはけして大きな動作ではなく、申し訳程度に口を開けていただけだった。
リーダーたちの一生懸命のお願いと指導があって、わたしは 実際に歌っているかのように大きな口を開けて、体を揺らした。
合唱コンクールの当日も、皆に合わせて歌うふりをした。
私のクラスは最優秀賞に選ばれた。
皆、喜び、泣いていた。
私は思った。
バカらしいって。
                             (終)
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2016-04-10 19:49:24

【11】夢はアイドル

テーマ:ショートショート「古ぼけた原稿用紙」
夏休みに親戚が集まった。
小学三年生の従妹の未来(ミキ)が
「私の夢は、アイドルになること」と言った。
親戚一同、騒然となった。
確かに未来は目がクリッとした髪の長い美少女だったのだ。
「未来ちゃん、アイドルか!」とおじが笑った。
「未来ちゃん推しになるよ」
「未来ちゃん、なんでアイドルになりたいの?」
おばの質問に対して、未来は自分に視線が集中していることを意識し、大人たちをグルリと見まわすと答えた。
「だって、いろんなとこに行けるし、いろんなおいしいものいっぱい食べられるでしょ。きれいなお洋服も斬れるし、ブランド物のバッグもいっぱいもらえる。みんなにチヤホヤされるし、TVにもいっぱい出られるでしょう」
未来の意外と現実的な答えに大人たちは笑った。
「お金、いっぱいもうけられるし、そしたらみんなにおこずかいあげるね」
『楽しみにしてるよ、未来ちゃん」とおじ。
「大介さん、家建ててもらえるかも」とおばが未来の父親に言った。
「ええ、お父さん、家、建ててあげる。でも男性アイドルグループのリーダーと恋愛事件を起こして、写真週刊誌でたたかれて、ネットでたたかれて、ゴシップまみれで苦しむの。あー、そういうの、やだな。やっぱ、アイドル、やめた」
あっと言う間の決断に、大人たちはあっけにとられた。 
(終)

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