明けましておめでとうございます。

私の名前は高梨久美子。

父は超が付く、一流企業の取締役。母は全国15店舗のジュエリーショップのオーナー。
そう、いわゆる私は俗に言う、お嬢様ってやつ。
お嬢様が通う小学校、中学校、高校を出て、現在は国立大学に通う21歳。
一切勉強なんてせずにエスカレーター式で今に至っている。いや、エスカレーターというより、ほぼエレベーター。
だって、行き先は決まっているから。

お父様が決めた男性と結婚をして、子供を産み、笑顔の順風満帆な人生に終止符をうつ。

家はお金持ち、だけど心は貧困。


そしてついにその男性と出会う日が来てしまった。

朝早くから起きて出迎える準備。低血圧の私は寝ぼけ眼をこすりながら、大きく伸びをした。
「トントン!お嬢様!起きてらっしゃいますか!?そろそろ大旦那様がお嬢様の婿を連れて参りますよ。」
「起きてるわよ~…もう、朝から騒がしい…」


私はお化粧が得意じゃないから、昔からお手伝いの橋本さんにしてもらっている。いや、化粧だけじゃなく、身近なことは小さい頃から全て橋本さんだった。

「開けますよ~…あら!まだなぁーんにも準備できてないじゃないですか!私が来た時には着替えとか済ませて、あとはお化粧だけって状態にして下さいねって昨日クギを刺したのに!もう大旦那様に怒られてしまいますぅ~!」

そういうと私の布団を剥ぎ取り、洗面台へと促した。


「そういえば橋本さん。私の懐中時計を直してくれる時計屋さんは見つかった?」


「見つからないですよ~どこに持って行っても直らないって言われるだけですから。お嬢様が乱暴に扱ったんじゃないですか?」


「橋本さん!私はそんなに乱暴者じゃないわ!ちゃんとした大人よ!」

「歯を磨きながら、しゃべって唾を飛ばす…どこがちゃんとした大人なんだか…」


「…とにかくお母さんからもらった大切な大切な懐中時計なの。必ず直して。お願い。」


わかりましたと言って、橋本さんは懐中時計を机に置いた。
あの懐中時計は私が13歳の時に死んでしまった母の大事な形見。
そう、ジュエリーショップのオーナーの母は私が15歳の時にお父様が連れて来た新しい母。
仲良くはやっているのだが、やっぱり私のお母さんはあのお母さん。
もちろんこの懐中時計がお母さんの形見だとはいまの母には言っていない。
そして8年前、母が亡くなった次の日に懐中時計も何の故障でもなく動きを止めた。



ピンポーン


「帰ったぞ~。橋本さん!橋本さん!」


お父様が婿候補を連れて帰ってきた。


「はーい!今行きますので~!」


そそくさと、懐中時計の事なんて忘れて出て行ってしまった…
私はペンとメモを取り、

”直しておいてください”

というメモを懐中時計で挟んだ。





準備が整い、下の大広間に行くと、いつもより豪華な食事が嘘でしょ?と言わんばかりに机を埋めつくしていた。


そしてその部屋にはお父様、橋本さん、あと4人の仮面をした男性が居た。


4人!?

1人じゃないの!?

仮面!?


何者?何事??


「さぁ久美子、座りなさい。みんな待っているのだから。こんな豪華な料理を前にしてウズウズしない若者など居ないのだろ⁉︎ワァーハッハッハッ…」


そんな仮面をしてたら若いかどうかもわからない。わかるとすればお父様よりは全員年下というくらい。


私が呆気にとられながら、椅子に座るとそれぞれが自己紹介を始めた。


「私の名前はスペード。よろしくお願いします。」


スペード?はい?意味がわからない。

「そうだそうだ、久美子。今日はみんなには本名等、基本的なプロフィールは伏せてもらっているんだ。そして今日の食事会だけで判断して、明日の朝には誰と婚約するのかを、決めてもらうからな」

プロフィールを伏せる!?

あ~だから仮面をしてるってわけね♪

って納得してる場合か!


明日の朝!?急過ぎ!!



「私はダイヤ。よろしくです。」

「俺はクラブだ。よろしく。」

「えっとー…俺は…ハートだね。よろしく♪」


全員、トランプの図柄。
覚えやすいは覚えやすいかもしれないけど…

安易な付け方。


それぞれが私に質問して、私もプロフィールに載らないような事(趣味、特技、好きな食べ物etc)を聞き返した。


その会は、盛り上がることも無かったが、盛り下がることも無く、ダラダラと続いた。


多少疲れて来たので私は1度、化粧を直すという理由で席を立って部屋に戻った。


「お嬢様、誰か良い人は居ましたかな?」

「居ない!というか、わからない!仮面してる名前もわからないような人よ?誰が良いなんて決めれない!」

私は部屋の中に入った。


ベッドにバタンと横になり、一息ついていると、


カチカチカチ…


聞き覚えのある音がした。


ふと、机の上に目をやると形見の懐中時計が動き出していた。


「何で!?橋本さん!懐中時計が直ってる!動いてるわ!」

「あっ本当ですね~」

「あれ?橋本さんが直してくれたんじゃないの?」

「私にはそんな技術はありませんよ。…ん?この紙は?」


橋本さんが取り上げた紙を私はすぐに取り上げた。


”お金持ちは結局、最強の私が直しておきました”


私の書いた”直しておいてください”の下にそう書いてあった。
そしてメモの下にジョーカーのカードが…


誰?誰なの??でも確実に今この家に居る人。
橋本さんは違う。お父様も直せなかった。

ってことは…


「私、この懐中時計を直してくれた人と婚約する!」


私は部屋を出て、階段を駆け下り、大広間の扉を開けた。



「懐中時計を直してくれたのは、誰!?」



わかりましたかね?
この答えを知りたいなら2015年もこのブログを読み続けてください。


ということで、今年もよろしくお願いします。