禅僧ティクナットハンの言葉です。

我々の敵はある特定の人間たちではありません。本当の敵は人間の心の中にある憎しみや怒り、差別なのです。

ベトナム戦争時に大切な友を失い、大きな怒りや苦痛を味わった後、その怒りを鎮めていく過程で彼が辿り着いた結論でした。

殺害の加害者である米兵は「共産主義から守るために村人たちを殺した」と主張していました。その米兵はただ平和の実現を誤認識していただけなのです。いわゆる「誤認識の犠牲者」でした。その結論に辿り着くことができた時、彼の怒りは鎮まっていった、といいます。

そのような誤認識の犠牲者を、一人でも減らし、悲しみや憎しみを世界から無くすためには、愛と慈悲の共同体(サンガ)を拡大していかなければならないだろう、との発想に彼は辿り着きました。そしてキング牧師と対談し、意見の一致を見たのです。しかし、そのすぐ後に大変残念なことに彼は凶弾に倒れてしまいました。

フランス ボルドー地方にある彼の寺院には世界中からマインドフルネスを実践したい、という人々がやってきます。彼らの多くは、怒りや憎しみや悲しみを抱えてきました。

そこで学ぶのは怒りの鎮め方です。歩く瞑想により、呼吸を意識しながら一歩づつゆっくりと歩きながら、自分が親や先祖から命を受け継いでいる貴重な存在であること、全ての命と繋がっていることを意識しながら、自分の中にある怒りを見つめていきます。

けっしてそれと戦ったりそれから逃げてはならず、むしろしっかりと抱き締めて、大切に扱ってあげるのです。そうする過程の中で、やがて燃え盛る怒りの原因を見極められるようになっていき、その怒りは鎮まっていきます。

そして、まさに泥から蓮が生まれるかのようにその苦しみの過程から慈悲や愛が生まれるのです。

我々、人間ばかりでなく自然界や宇宙は相互に依存し共存しています。なので敵や味方などというものは本当は存在せず、相手や自分などという境界もないのです。そして、あらゆる誤認識から解放された時に最終的に無我の境地にたどり着くことができるのです。それが相互共存の教えです。

ですから、右派や左派というものも実際には共存しているのであり、どちらかに対して消えてほしいと願い、行動し、実際にそれを消したとしても、やがて再びそれは姿を表します。それで大切なのは相互を深く理解し共存していくことなのです。


こうして、エホバの証人では決して教えられなかった、このような貴重な教えを私は今学ぶことができるのです。本当にありがたいことです。