Ron Carter in Blue Note Tokyo (2016/11/13) | UNTITLED

Ron Carter in Blue Note Tokyo (2016/11/13)


ジャズファンならば言わずと知れたベーシスト、ロン・カーターブルーノート東京で11月11日(金)~15日(火)まで公演すると言うことで、13日(日)の1stに行って参りました。



ロン・カーターは今年で79歳という高齢ながら、今も一線で活躍するジャズ・ジャイアント。
私はそんなロン・カーターの大ファンなのです。

なぜそんなにロン・カーターが好きかというと、「私をジャズ好きにしてくれた」という音があるからなのであります。

私がジャズというジャンルの音楽を意識して聴いたのは中学生の時。
父親が秋葉原で揃えたオーディオセットのスピーカーがDIATONEのDS-600Zで、そのおまけとして貰ったCDが、DIATONEのオーディオチェック盤の高橋達也クインテット「Secret Love」でした。
このアルバムの良かったところは、クインテット構成のアルバムにもかかわらず、曲によってカルテットになったり、トリオになったり、デュオになったり、更にはリーダーの高橋達也さんが抜けたピアノトリオの曲があったり・・・
そんな様々な楽器構成でつくられたアルバムだったので、初めて触れた「ジャズアルバム」だったのにも関わらず、飽き性の私が最後まで飽きずに何度も、何度も聴きまくったのであります。

そんな折、とある中古CDショップで1枚のジャズアルバムを見かけて買ってみたのですが、そのアルバムが私が聴き馴染んだ高橋達也クインテットの演奏とは全く異なり、スピード感と怒りにも似た曲の展開について行けず、いったんジャズから離れてしまいました。(ちなみにそのアルバムとは、ドラマーのラルフ・ピーターソン「ヴォリション」なのですが、今では普通に楽しめますよ)


その後、暫くして大学生になった頃でしょうか、別の中古CDショップでロン・カーターの「So What」に出会います。


So What / Ron Carter

 


アルバムのタイトル曲にもなっている1曲目の「SO WHAT」はロン・カーターのベースを主役に、ピアノのケニー・バロン、ドラムのルイス・ナッシュがしっかりと支えつつ、ゆっくりとしたペースから後半のハイテンポな演奏まで安心して・・・と言うのはおかしいですが、ラルフ・ピーターソンで一端ズタズタになったジャズへの興味が、聴いているウチにどんどんと復活していくのです。
そして2曲目の「YOU BE SO NICE TO COME HOME TO」になると、ケニー・バロンとルイス・ナッシュがソロをとり、ロン・カーターとルイス・ナッシュのベースとドラムのデュオ演奏も楽しく、「あぁ、ジャズってやっぱり面白いんだなぁ」「他にも色々なアルバムを聴いてみたいな」と、ジャズの泥沼にズブズブと沈むきっかけになったわけです。


そんな私がジャズ好きになった恩人ともいえるロン・カーターのライブ、やっぱり、どうしても聴きたいじゃないですか。
コレまでも何度も機会はありましたが、なかなかスケジュールが合わなかったり、ちょうどお金が無い時に来日したり・・・と、ライブに行けずに居りましたが、今回は行ける!行かなきゃ!!だって、ロン・カーターももう79歳だし、あと何回来日公演できるか分からないし!!


ということで2016年11月13日、満を持してロン・カーターのライブに行ったわけであります。



実はブルーノート東京自体初めてな私、開場時間ちょっと過ぎに到着してドキドキしながら2重の扉を開いて店内に入り、チェックインを済ませて席に通されましたが、おぉ・・・客席からステージまでそんなに距離が無いんだ・・・ということにビックリ。
しかも、ちょうどステージに向かうと真ん前にロン・カーターが使うであろうピッコロベースが!!

いつものジャズ喫茶やライブハウスとは異なる雰囲気に若干気圧されつつ、フルーツ インプロヴィゼーション(旬のフルーツのミックスジュース)とフォアグラの竹炭マカロン ワサビとアプリコットのジャムをオーダーして堪能。そしてその後にダージリンティーと本日のチーズを注文して、ちょうどチーズが運ばれてきたタイミングで店内が暗くなり、ミュージシャンの登場となりました。


本日のメンバーは以下の通り。
 Ron Carter(piccolo b)
 Leon Maleson(b)
 Donald Vega(p)
 Payton Crossley(ds)
 Rolando Morales-Matos(per)
 Carol Buck(cello)
 Zoe Hassman(cello)
 Maxine Neuman(cello)
 Claire Bryant(cello)

まずはこのノネット(9重奏団)という編成にびっくりなのですが、演奏内容がまたビックリなのでありました。


9人が着席後、最初は4人のチェロで厳かに始まり、暫くこのチェロによる演奏が続きます。
時折ロン・カーターが4人に向けて手で合図をして指揮を執り、静かでゆっくりとしたチェロ四重奏が暫く続くのですが、徐々に「・・・今日、本当にジャズやってくれるんだよな?」と不安になってきます(苦笑)。

そこから徐々にピアノ、ドラム、パーカッション、そしてレオン・マレソンのベースが合流をしてリズムカルになってくるのですが、まだロン・カーターは指揮をしています。
この辺になってくると、不安というよりも焦ってきます。
「まさか演奏しないなんてことないよな!?」・・・と。

そんなこんなで若干ヤキモキしながら聴いていると、メロディーの切れ目に入ったところでスッと背筋を伸ばしたロン・カーター。腕で抱えていたピッコロ・ベースを引き寄せ、いよいよ演奏を始めました。

ロン・カーターの演奏に関して色々言う人もいますが、なかなか老練な演奏で力強さはレオン・マレソンには及びませんが、歌うようにメロディーを繰り出し、こうやって生で聴くと余計に説得力があります。
また、左手の指の動きが非常に滑らかで、指一本一本がそれぞれ別々の生物の様にスルスル、ニュルニュルと弦を押させていく様がしっかりと見られて、それだけで感動してしまいました。

ピッコロ・ベースの音色は「ピッコロ」という響きから高域に特化したチェロ寄りの音色かと思われますが、実際にはしっかりベースで、レオン・マレソンとのベース同士の掛け合いには、その迫力に非常に興奮しました。
ロン・カーターが緩急をつけて疾走した演奏を聞かせてくれたかと思うと、レオン・マレソンもロン・カーターに付き従うだけでなく、時に追い越し、追い抜こうと仕掛けてきて、それに真摯に向き合ってさらに複雑なアレンジで返すロン・カーターの姿は、まさに名人、老師そのものです。
ベース同士の駆け引きはやっぱり面白い!!


それにしても、今回ロン・カーターグループのBlueNoteでの演奏は、全体を通して「ロン・カーター組曲」というような感じだった。昔、クラシック演奏家を志していた時の気持ちが、この年になって再び蘇ってきたのでしょうか?

兎にも角にも、ロン・カーターファンとしては、ロン・カーターの世界にどっぷりと浸ることのできた80分。
大満足でした!!
う~ん、今度はトリオで演奏するロン・カーターのライブも聴きたい!!(あ、ベース2名のカルテットでも良いかも)