Being at home with Claude ~クロードと一緒に~
皆様、こんばんは。
これを言うのも何回目かわかりませんが、更新が滞ってしまい申し訳ありませんでした。
舞台『Being at home with Claude ~クロードと一緒に~』
無事に全公演が終了しました。
劇場に足をお運びくださった方も、そうでなかった方も、
応援、本当にありがとうございました。
怖かった。
とてつもなく怖かった。
『何が?』と問われてもよくわからなかった。
でも、とても怖かった。
だから千秋楽を終えて、
何が怖かったのか、ちゃんと向き合って考えてみました。
まず単純に台詞量、これはもう確実に今まで舞台で演じてきたどの役よりも多かった。
特にラストは約30分1人で独白をし続ける。
「途中で台詞が飛んだらどうしよう、噛んだらどうしよう」
でも、これはまだ恐怖の初期段階。
その先に待ってた恐怖の足下にも及ばない。
本当の恐怖は、彼、イーブという人間を知ってから襲ってきた。
知ってからというか、知っていた。
本当にどう言えばいいのかわからないけど、相馬圭祐はイーブを知っていた。
でもそれは、普通に生きていれば見る必要のないもの。
それを見にいくこと、感じにいくことがとてつもなく怖かった。
「どう説明したらいいかわからない、信じてくれなくてもいいよ、けどわかってほしい」
これが相馬圭祐のイーブ。相馬圭祐とイーブ。
そして彼と僕が話す言葉がダイレクトに身体中を蝕む。
どう蝕まれ、どう感じて、どうしたいのか、それを赤裸々に口に出す。
嘘をつくことがどれだけ楽なことか。
でも知っているから、嘘はつけない。
調子に乗ったカッコつけの言葉に聞こえるかもしれないけど、
あれはイーブであり僕だった。
だから怖かった、つらかった、逃げたかった。
同時にそれを「自分はズルしてるんじゃないか?」とも感じた。
役なのか自分なのか、よくわからない状態で舞台上にいたから。
自分がどう感じて、何をわかってほしいか、その全てをぶつけたけど、
イーブがぶつけてるのか相馬圭祐がぶつけてるのかわからなくなってしまった。
自慰行為になってしまっている気がした。
全然気持ち良くない自慰行為。
役者をやる意味がわからなくなった。
あの時見えたものは嘘じゃなく、幸せだったけど、どんどん景色は変わって、最後に空っぽになる。
幸せなのに、涙が出てくる。
絶望なのに、笑えてくる。
詩的に書いてるわけじゃなく、そうなってた。
体力や気力も振り絞っていたけど、何かもっともっと違うものが消えた。
だから今またこうやって振り返ることがとても怖い。
せっかくまた嘘をつくことができる生活に戻ったのに。
こうやって書いているブログすら嘘なのだと思う。
とんでもない回廊にいる。
なんだろう、凄いカッコつけた自己陶酔満載の文ですねここまで。
独白をしている時に本当は、
「どうだ俺は、こんなに長い台詞を汗と鼻水と涙とで一杯になりながら演じてるぜ、スゲーだろ」
とか思ってたのかな、相馬圭祐は。
もうそれすらわからない。
絶対に違う、なんて言えない。
ただ自分以外の人間にそれを言われたら、その人を心から軽蔑して憎む。
何言ってんだろ。
笑いたきゃ笑ってほしい。
こんなブログを書くことは2度とないだろうから。
誰とも会いたくないし話したくない、けど誰かといたい。
ただわかってほしい。
自分の意にそぐわないことを言われても笑って聞くし適当なことも言う。
ただわかってほしい。
ただただそのことだけが未だに頭を駆け巡る。
言葉は感覚を表現してくれるんだろ。
今自分の頭は間違いなく『正常』じゃない。
でも『本当』ではある。
益々わからなくなってきた。
とにかく、幕は降りた。
この先またイーブを演じるのかどうかはわからない。
あの恐怖は忘れないし、常日頃からつきまとっている。
今現在の自分がイーブを演じたらこうなった、それだけのことなのかもしれない。
でも自分にとっては凄く大きなことで、丸裸になってしまった。
多くの人に裸を見られた。
怖い。
しかもそれを肯定されることもあれば否定されることもある。
怖い。
とにかく今は、しんどい。
一切の爽快感を感じない。
あの恐怖を味合わなくていい安堵だけはある。
でも、この仕事をしている限りまたその恐怖に足を踏み入れることがあるだろう。
だからその時に嘘をつかない人間でいられるよう、
怖いものは怖いと感じ続けていこうと思います。
そして、一緒に生きた仲間達。
伊藤陽佑さん、
実年齢が近いイーブと刑事ということで、ガツガツぶつかることができました。
睨み合ってる時に生まれる緊張感、堪らなかった。
共に悩みました。
共に戦いました。
また一緒に、バチバチで戦いましょう。
伊達暁さん、
もっとお話ししてみたかった。
打ち上げの席で隣になれたのに、緊張してしまいあまり話せなかったことを悔やんでいます。
絶対にリベンジしなければ。
鈴木ハルニさん、
極度のあがり症の僕を、楽屋や袖中だけでなく、芝居中にも、いつも和ませてくれました。
かと思えば、凄く丁寧に芝居のことを教えてくれたり、奮い立たせてくれる言葉を頂いたり。
頼もしいお兄ちゃんでした。
稲葉友さん、
実は、友くんのイーブを観るかどうか、最後の最後まで悩んでいました。
全く別物と聞いてはいたけれど、戸惑いはありました。
ですが、稲葉×伊達チームの千秋楽を観て、
魂を共有しているんだ、と震えました。
素晴らしかった。
僕の千秋楽が終わった後、友くんの顔を見るなり駆け寄り抱き合いました。
それで全て伝わったし、伝えました。
稲葉友とWキャストで同じ役をやれて本当に良かった、ありがとうございました。
井上裕朗さん、
相馬イーブの1番の理解者は、井上ギィでした。
イーブなのか相馬圭祐なのかわからない僕を、いつも理解しようと、感じようとしてくださいました。
本当に色々なことを話したけど、もう最終的には言葉を必要としなくても分かり合えた気がしました。
とにかく、2人でよく泣きました。
独白を終えて袖に戻った時、井上ギィが抱き締めてくれなかったら、僕はこの公演を耐えることができなかったと思います。
恐怖というとんでもない怪物と戦う勇気をくれたのは、井上さんでした。
あの袖に戻ってから、カーテンコールに向かうまでの時間は、僕にとって宝物で、故郷のようでした。
本当にありがとうございました。
演出家の古川貴義さん、
言葉にならない感覚を、一緒に探してくださいました。
稽古を止めてまで、僕自身が何を言ってるかわからない感覚を、理解しようと話し合ってくださいました。
そして最善の演出を見つけてくれました。
その上で、委ねてくれました。
自由に、それでいてしっかりと伝えることの大切さを教えていただきました。
また、一緒にお仕事できることになったら、もっともっと成長した姿を見せたいと思います。
そして、プロデューサーの三宅優さん、
僕を、この恐怖の世界に突き落とした張本人です。
だからこそ、最大級の感謝をしています。
23年前に観て衝撃を受けた、
三宅さんにとって大切な作品。
その思いを痛いほど感じれたからこそ、キャスト、スタッフが全力でこの作品に臨むことができました。
素晴らしくも怖ろしい作品に出会わせていただき、ありがとうございました。
とにかく、これが公演を終えての今の自分です。
ただ、これが今の自分が伝えられる精一杯です。
本当はもっと沢山あるのかもしれない。
でも言葉にはできない。
皆様がわかってくれることを願っています。
キャスト、スタッフ、関係者の方々、
そして応援してくださるファンの方々には心より感謝しています。
ありがとうございました。
乱文乱筆をお読み頂き、ありがとうございました。