2014年11月7日付の大阪日日新聞に、週刊コラム「金井啓子のなにわ現代考 世界の現場からキャンパスへ」第220回分が掲載されました。 本紙のホームページにも掲載されています。


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http://www.nnn.co.jp/dainichi/rensai/gendaikou/141107/20141107032.html

 「やまぼうし農園」のことは本コラムで既に数回書いた。昨年度までの4年間に近畿大総合社会学部で客員教授を務めた女優の浜美枝さんの授業を受けた学生たちが、「近大農園」として立ち上げ福井県おおい町で主に活動している農業サークルである。その後、改名して現在に至っている。

 同町のコメ農家の一家に支えられながら主にコメ作りに取り組んできた彼らが、3度目の収穫期を迎えた。今年は初めてもち米に挑戦。シカに田んぼを荒らされたり、交代で大阪から草刈りに通ったり、苦労は多かったようだが、筆者にももち米ともち米粉を届けてくれた。さっそく中華おこわを作ったら、ホクホクとおいしいものができた。作った人の顔が分かるから、なおさらおいしく感じたのかもしれない。

 言うまでもなく、食べ物は命を保つために不可欠なものである。欠かすことのできないものを自分の手で作って確保する大切さを体感している彼らには、たくましさを感じる。もし筆者が近大生として浜さんの授業を受けた後にやまぼうし農園で活動していたら、どんなことを考えていたのだろうか、その後歩む道のりはどう変化していたのだろうなどと考えると、彼らをうらやましく感じたりもする。

 まもなく幹部が4年生から3年生に引き継がれるらしい。浜さんの授業を受ける機会がなかった現1年生も加わり、サークルは続いている。

 最近、今年収穫したもち米ともち米粉で作ったさまざまな料理を持ち寄って、試食会が開かれた。その中から特にメンバーの人気が高かったものを作って、収穫祭に出店するのだという。投票の結果、みたらしだんご、シフォンケーキ、スノーボールクッキーを作って売ることが決まった。筆者が試食会に出した中華おこわも作る可能性があるらしく、楽しみだ。

 その収穫祭、9日の日曜に若狭町の「かみなか農楽舎」で開かれる。大阪からでもそう遠くない。作り手が見える食べ物を求めて、足を運んでみてはいかがだろうか。

 (近畿大学総合社会学部准教授)