ということで畏れ多くもBirgit Prinzのことを書こうとしている。まさかこんなことになるとは思わなかった。
僕の都合ではそろそろ引退試合があって、それに付随していろんな記事が出てくるから、それを翻訳すればいいだろうと思っていたんだ。
で、女性同士のリーダーの話って知らないんだよね。例えば女番長とかお局さんとか
男性のリーダーの話はサッカーではいくらでもあるが、最近一番凄かったのは、2006年ドイツワールドカップでのフランスのジダンだった。
だってあの死に損ないのロートルと、ジダンと相性の悪いアンリ、そして悪童リベリーを連れて、バランドールロナウジーニョのブラジル、クリスチアーノ・ロナウドのポルトガルを破って決勝進出したんだもんね。
そのときにジダンが言ったといわれる言葉が
「死ぬときはみんな一緒だ」
痺れる言葉だね、まるでジャン・ギャバン(知ってる?)のやる悪役の言うセリフみたい。その後の決勝戦ではご覧のとおり頭突きくらわせて退場だったけど、仲間たちはこう言ったらしい。
「恨む気なんざねえよ、オレらあいつがいなきゃここまでこれなかったんだから」
まあこれがオヤブンってヤツだよね。
じゃあPrinzは
ていうかわからないんだよね。
ただ、今回のドイツワールドカップで、プリンツが謎のスタメン辞退を決心したときの言葉は湯浅 健二さんのブログに出てくる。
以下『湯浅 健二のサッカーホームページ』からの引用
ところで、ビルギット・プリンツ。昨日の記者会見で、素晴らしいコメントをしていた。私だけではなく、ドイツ人ジャーナリスト、ドイツの友人たちも、かなり心を動かされたということです。
その骨子は、こんな感じでした・・
・・彼女にとって、追求するのは自分自身が、常に最高のパフォーマンスを発揮すること・・それを成し遂げられれば、必ずチームのためになっているはず・・そのことは、自分のプレイヤーとしての歴史が証明している(彼女のプライドの絶対的バックボーン!)・・
・・ただ今回のワールドカップでは、イメージするプレーが出来ていない・・このままでは、チームに迷惑を掛けてしまうのは目に見えている・・いまの状況では、自分がプレーしな方がチームのためになると思った・・その状態を受け容れるのは簡単ではなかった・・ただ、チームの全員が、私に対して、ものすごく気を遣ってくれた・・心から感謝している・・
・・これからは、わたしの経験をチームの若手に伝えていくことで、チームを心理・精神的に支えていきたいと思う・・ドイツは世界一のチームだから、彼らが優勝することを信じて疑わない・・
彼女は、一部で報道されたような引退宣言はしていません。逆に、そんなニュアンスの報道をするメディアに対して、意気軒昂に、皮肉を込めたコメントまでしていた。
ビルギット・プリンツ・・。日本戦では、ポップと同様に、ベンチスタートでも、何らかの決定的な時間帯に出場し、まさに決定的な仕事をしてしまうかもしれない。
ー以上、まるでヴォータンからワルキューレの能力を突然とりあげられたブリュンヒルデみたいだ
本当にPrinzは自分の全力プレーができなくって出場を止めたのだろうか
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Neid監督が言うのは「Prinzは何もかも達成されてモチベーションがなくなっていた」と。
Prinzのプレースタイルは、アグレッシブで、不屈の魂とフィジカルで、道を切り開いていくサッカーだった。
それは機関車のようで、戦車のようで、ドイツの文学で言うならベルト・ブレヒトの『肝っ玉おっ母あ』
![グッド!](https://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/187.gif)
愚直であろうとも、子供のためだけを考えて頑固にタフに馬車を曳いて生きていくその姿はPrinzと重なる。
そしてそれよりも印象的だったのは、DFB-TVのPrinz「引退」特集 で最後のあたりに出てきた姿。表彰式で肩をすぼめてはにかむ、試合でのPrinzからは全く違った姿だった(しかもメガネっ子)。
今、Frankfurtに残ってるGarefrakesさんやBartusiakさんも、フットボールの試合のことは冷静に正確に語るけど、自分のことになるとびっくりするほどシャイだ、これがドイツFrauなんだろうか、と思う。そしてその典型がPrinzじゃないんだろうか、だからみんなから慕われたのかもしれない。
日本の熊谷選手も今期が始まる前にPrinzと練習をしていた。Prinzは今期始まるまではクラブまで引退する気はなかったんだろう、と思ったりもする。
言うまでもないことだけど、サッカー選手たちはプレーだけでなく、その生き様を通して(それは決してかっこいいことだけじゃないかもしれないけど)多くのことを僕たちに与えてくれているんだ、Prinzにはまだ「ありがとう」と言わなくて済むのかもしれない。
今日のエンディングはドイツならこれ!というご存知ワーグナーの『ニーベルングの指輪』第一夜『ワルキューレ』の最終場面、ブリュンヒルデの眠り。
神々の王ヴォータンは自分に逆らったワルキューレ最愛の娘、ブリュンヒルデの力を奪い、眠りにつかせ、勇者だけが近づけるよう炎で周りを囲む。この場面の見どころは、どこからどんなふうに火が出てくるのかだったりする。
果たしてPrinzの眠りを覚ます勇者は現れるのだろうか
(そういえばDietrichマネージャーのファーストネームはSiegfriedなんだけどね)
今週の予定
DFB-Pokal女子 12月3日(土)~4日(日)
1.FFC Frankfurt-1.FFC Tubine Potsdam 12月4日(日)現地13:00 日本21:00~ DFBLive
永里 熊谷戦第2ラウンド
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