『マインド・イーター』 水見 稜
マインド・イーター[完全版]
後書:水見 稜 解説:飛 浩隆、日下 三蔵 (創元SF文庫) 初版:2011年11月25日 (1984年10月にハヤカワ文庫JAより刊行) |
「野生の夢」
「サック・フル・オブ・ドリームス」
「夢の浅瀬」
「おまえのしるし」
「緑の記憶」
「憎悪の谷」
「リトル・ジニー」
「迷宮」
--------------------------------
読む前にどんな内容かと漠然と想像したがハズレ。
1編目を読んで『幻魔大戦』風かなと思ったがハズレ。
「マインド・イーター」がなんであるかを浮き彫りにさせるさまざまな断片のような気も。
盲人が象を撫でるかのような、絶対に理解いえない存在へのアプローチ。
このような短編集を読んだ覚えがあるぞ、と思ったら山田正紀の『神獣聖戦』ではないか。
ところが読み進めるとそうでもない。
「マインド・イーター」はメタファーなのか鏡なのか。
「マインド・イーター」を介して人間を描いているのか。
たとえ作者の狙いがそうだとしても、書き込みが足らないというか一貫性がないというか。
一つ一つは良作なだけに残念。
まあ、私の理解力や想像力が不足しているのは間違いないところですが。
またSFにひとつ置いてきぼりを食ったような寂しさも感じる。
これらは作者が20代半ばで書かれたんだねえ。
今ならどう「マインド・イーター」と折り合いをつけるのか興味深い。
ところで「SFマインド・イーター」というのを思いついた。
奴らは「SFマインド」が欠落しているがためにそれを求めそれを食らい、魂を食われた「SFマインダー」はフランス書院やハーレクインに走る。
残されたSF者は地下に潜り反撃を試みるが如何せん多勢に無勢。
嗚呼、SFは風前の灯と成り果てたかに思えたが・・・。
そこへ彼がやってくる。
彼が、SF大将が56億7千万年の彼方からやってくる。
「SFマインド・イーター」の凍てついた魂をも溶かし、奴らの中にもあった「SFマインド」を活性化させるのだ。
こうしてSFはかつてない隆盛を迎える。
だが、そのすぐ先に再び「浸透と拡散」が待ち受けていようとは・・・。