『公共考査機構』 かんべ むさし
公共考査機構 | |
かんべ むさし (徳間文庫) 初版:1985年7月15日 (1979年7月に徳間書店より刊行) |
再読。
公共放送の人気番組「あなたの意見私の意見」。
ここでは色んな人が自分の思っていることを3分間で述べ、それに対して全国数万人のモニターがそれに対して賛成か反対か電話回線を通じて一票を投じろる。
今ではクイズ番組やアンケートなどで広く使われている方法ですね。
これだけなら何ということもないのだが、番組の狙いは物言わぬ大衆を手なずけ、物言う「うるさ方」を社会的に抹殺すること。
いつの間にやら番組で「大衆と違うことを言う人」は「危ない人」「社会不適合者」となり、番組のなかでは勤務先や住所までテロップで流れるので、勤務先ではイメージダウンを恐れて解雇しようとするし、近隣住民や親戚は付き合いを避けるようになる。
近隣からは村八分、会社はクビ。クビにならなくても会社内では同じように村八分。
これではいたたまれませんね。
ほとんどの家庭では妻子も逃げ出すでしょう。
少し変わった思想の持ち主だとしても、TVで意見を述べただけで周りはその人の全人格を否定し犯罪者のような扱い。
まさに公開処刑。
もちろん自分から進んでTVに出る人なんか極少数でしょうから、ちゃんと「獲物」を捕らえる仕組みもあります。
自薦他薦制度。
推薦した人が番組に出れば報奨金を払う制度。
これではタレコミの嵐ですね。
あいつは嫌いだからと、ちょっとしたことを大げさに吹聴して推薦。
「あなたがこんなことを言っているのをちょっと耳にしたが、番組で話したらどうですか。推薦するよ」と脅迫する人もでてくるでしょう。
他人の前では気軽に冗談も言えませんね。
いつも自分の行動や言動に気をつけていなければならない。
こんな状態の行き着く先はまさに全体主義国家。