『絃の聖域』(下) 栗本 薫
絃の聖域〈下〉
栗本 薫 (講談社文庫) 初版:1982年12月15日 (1980年8月に講談社より刊行) ※写真は角川文庫版 |
「あなたが格闘していたのは、芸、というその怪物だったのですね。あまりにもすばらしく、あまりにも神々しく、ひとのわざでありえぬまで神にちかく、それゆえに、それへ入る人々をみな狂わせてしまう――あなたは芸によって名誉をきわめたけれども、そのために失ったもののことを思えば、どうしても、芸というものを、ゆるすことができなかったのですね」
うーん。
凄い。
凄い物語だ。
「芸」というものの底なしの美しさ恐ろしさですね。
芸を極めるだけではダメなんですね。
それこそ悪魔に魅入られるくらいでないと。
それでも死んでしまえば「芸」も滅ぶ。
無に帰す。
儚い。
儚いが故の芸なのだろうか。
私のような凡人には「真犯人」の苦悩が分かるようでいて、実は少しも理解しえないのではなかろうかとへこむ。
まだ若かりし頃の栗本薫のミステリだが、すでにして頂点を極めてしまったか?