『グランド・ミステリー』 奥泉 光 | たまらなく孤独で、熱い街

『グランド・ミステリー』 奥泉 光

グランド・ミステリー (KADOKAWA新文芸)

グランド・ミステリー
奥泉 光

(角川書店)

初版:1998年3月25日

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お盆休みには普段読めそうもない本を読もうと、この本を指名。

しかし、あれやこれやで読書時間が取れず。

なんとか読み終えましたが・・・。

帯をみると、「小説のあらゆる可能性と魅力を極限まで追求した、世紀の大作」だって。

裏をみると、「純文学界のエース、奥泉光の豪腕が炸裂する20世紀最後の大作」。

うーむ。

 

真珠湾攻撃から物語は始まる。

そのさなかの殺人事件(あるいは自殺?)。

7年前の「夕鶴事件」。

すでに起きた現実(第1の書物)。

それを踏まえながら繰り返す現実(第2の書物)。

それを体験しているのは「穴蔵」を経験した4人。

「第1の書物」で起きたことを避けようとする人。

訳がわからず翻弄される人。

有効に利用しようとする人。

 

だが、彼らも歴史という巨大な波に翻弄されてしまう。

結局、作者は何を言おうとしたのか?

神の不在?

大いなる歴史のうねり?

それに逆らおうとする人々?

 

ストーリーは骨太で面白いです。

「第1の書物」と「第2の書物」が混在してます。

だけど残り数ページになっても着地点が見えない。

そしてエピローグ。

作者は1600枚もの作品を自ら否定するのか。

太平洋戦争で死んだ兵隊を庶民を、歴史の彼方に葬り去るのか。

いやいや、新たなる希望であると思いたい。

 

部分部分では、あるいは繰り返される海軍の醜さ(古参兵の新兵いじめ等)は迫力充分であった。

だが、少なくとも広げた大風呂敷に見合うだけの着地であって欲しかった。