『あすなろの詩』 鯨統一郎 | たまらなく孤独で、熱い街

『あすなろの詩』 鯨統一郎

あすなろの詩 (角川文庫) あすなろの詩
鯨 統一郎
(角川文庫)
初版:2003年10月25日 
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なんか、タイトルと表紙だけ見ると昔のフォークソングかアングラがテーマかと錯覚してしまいます。
内容は、新本格の初期というか、綾辻行人の初期の作品を読んでいるような感覚でした。
 
星城大学に入学した甲斐京四郎は、そこで知り合った玉岡千春(男です)、天間留美子と共にかつて星城大学にあった文芸部「星城文学」を復活させ、同人誌「あすなろの詩」も復刊させようとしていた。
他に集まったのは、京四郎とクラスが同じ大牟田敦生、「プレアデス文学賞」に佳作入選した経歴を持つ虎尾剛志(彼だけ2回生)、詩が好きな奥中かおり。
大牟田とかおり以外は作家を目指している。
8月1日をターゲットに、「あすなろの詩」を復刊させようとする6人の努力と友情と恋。
ん?
くさいですか?
実にくさいんです^^
全体の2/3ほどが、「あすなろの詩」の完成までに充てられて、まさしく青春してるな~って感じでうらやましい限り^^
京四郎がかおりに告白するとこなんざ、初々しくて「このやろー、がんばれ!」と思わずエールを送りたくなりますな^^
 
それと、かおりが京四郎が好きなミステリをなんとなく見ようと、書店のミステリコーナーで著者別にアイウエオ順に並べられた「ク」の棚でパラパラと本を読むところ。
思わず「ク」から始まるミステリ作家って誰がいたっけ~、と考えてしまった^^
 
しかし!
「あすなろの詩」の完成記念に大牟田の父が所有する北海道の別荘(当然、人里離れた山奥です)に、5人が(京四郎は夏風邪で同行せず)着いたその日の夜。
天候が急変し暴風雨吹きすさぶ中、惨劇の幕が切って落とされた・・・・・・。
 
 
これは新本格ミステリに対するオマージュでしょうか。
いまどき、衒いもなくこんなストレートな新本格を書けるなんて。

パラドックス学園 開かれた密室 』では「欧米か!・・・・じゃなくて、おめーは色物作家か!」と怒った私ですが、今回は逆にまともすぎるほどまともで面食らってしまいます^^

つかみ所のない人ですね~^^