『ハゲ・デブ殺人事件』 つかこうへい | たまらなく孤独で、熱い街

『ハゲ・デブ殺人事件』 つかこうへい

ハゲ・デブ殺人事件
ハゲ・デブ殺人事件 (角川文庫 (6174)) つか こうへい

(角川文庫)

初版:1985年8月10日 

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一時期、つかこうへいの文庫本をやたらと読んだな~。

小林信彦とともに、たくさん出してくれた角川文庫にはお世話になりました。

 

ハゲとデブは、本人にも周りにもわかりやすいコンプレックスですね。

明るくふるまうと「デブが無理してる」

暗く考えごとでもしようものなら「ハゲが卑屈になってる」

ですか。

ハゲとデブのネタが炸裂します。

 

が。

そればかりではなかった。

最初は「つか」の分身の「つか田」が無茶苦茶やってハメをはずすだけかと思ってましたが、後半に全学連のデモがでてきて、

「学生は卒業すれば就職が決まれば、反体制側から体制側にコロッと寝がえるが、機動隊はいつまでも機動隊」という名言が。

 

機動隊の男と、全学連の女の間に生まれた子。

母はデモのさ中に機動隊に殴られて死に、父もまたデモで頭に障害を負い、復帰は無理。

でも、父の頭の中はデモに復帰することばかり。

70年安保が無理なら、80年安保。

それも無理なら90年安保。

私を待っている全学連のやつ等がいるから。

それのみが父の生きるよすが。

だけど、全学連なんてもういない。

彼らは体制側に寝返って、当時のことなんて知らないふり。

絶望のなかで死んだ父が不憫でしょう。

息子のとるべき道は復讐しかなかったのか。

 

デモ盛んな頃、芝居をやっていてノンポリと蔑まれたつかこうへいの「思い」も込められているのか。

全学連、安保が風化する中、この本も風化していまうのは、あまりに惜しいですね。

 

ところで、

表紙の絵を探そうと、アマゾンのアフィリエイトで探したら、本はあったが絵はなし。

しかし、アメーバのアフィリエイトで検索したら、本自体が見つからないってどういうこと?