『壺中の天国』 倉知淳 | たまらなく孤独で、熱い街

『壺中の天国』 倉知淳

壷中の天国 (角川文庫) 壷中の天国
倉知 淳
(角川文庫)
初版:2003年5月25日 
Amazonで詳しく見る by G-Tools
 
倉知淳といえば、かなり以前に『過ぎ行く風はみどり色』を読んだが、超絶トリック(別名「そんなアホな」トリック)に愕然としたような印象が^^
記憶が定かでないので、気のせいかもしれません。

ただ、猫丸先輩ものや、他の本は読む気が起きなかったのですが、なぜ本棚にこの本があるのだ。

 

「家庭諧謔探偵小説」という副題がついてます。

巻頭で「江口陽子に電波攻撃を受けています」という宮尾静江の告発(?)文。

はあ?と思いましたね。

騒音などではなくて、「電波を打ち込まれている」と言うのですから。

と思ってると、一転、主人公でもある牧村知子の日常。

北関東辺りにあると思われる稲岡市在住。

家族は父と10歳になる娘。

月末は朝市に。

日中はクリーニング屋に配達のパートに、などなど。

 

で、最初の殺人事件が知子と同じ稲岡市で起こる。

被害者の女子高生が突然被害に遭うまでの平穏な様子が書かれる。

そして、「宇宙からの意思により行動しているのを妨害した若い女を殺した」という怪文書。

誰かがフィギュアを作成する様子。

 

同じ市内と言っても、見知らぬ他人なので知子にとっては「対岸の火事」。

だが、第2、第3、第4の殺人が起こる。

過食症で太った若い女。

新聞への投稿マニアの45歳の主婦。

ややボケ気味の82歳の老人。

同じように、殺されるまでの様子が書かれ、犯人からと思われる怪文書も。

被害者に共通点は見当たらない。

無差別連続殺人?

サイコ・キラー?

 

犯人の手掛かりはまるでなし。

作者はなにを企んでいるのか?

と思わずにいられない。

 

だが目の前にヒントはあったのだ!

作者にしてやられたのだ。

 

予想外の結末ではあったが、納得できた。

倉知淳の他の作品も読んでみようと思う。