『壺中の天国』 倉知淳
壷中の天国
倉知 淳 |
- 倉知淳といえば、かなり以前に『過ぎ行く風はみどり色』を読んだが、超絶トリック(別名「そんなアホな」トリック)に愕然としたような印象が^^
- 記憶が定かでないので、気のせいかもしれません。
ただ、猫丸先輩ものや、他の本は読む気が起きなかったのですが、なぜ本棚にこの本があるのだ。
「家庭諧謔探偵小説」という副題がついてます。
巻頭で「江口陽子に電波攻撃を受けています」という宮尾静江の告発(?)文。
はあ?と思いましたね。
騒音などではなくて、「電波を打ち込まれている」と言うのですから。
と思ってると、一転、主人公でもある牧村知子の日常。
北関東辺りにあると思われる稲岡市在住。
家族は父と10歳になる娘。
月末は朝市に。
日中はクリーニング屋に配達のパートに、などなど。
で、最初の殺人事件が知子と同じ稲岡市で起こる。
被害者の女子高生が突然被害に遭うまでの平穏な様子が書かれる。
そして、「宇宙からの意思により行動しているのを妨害した若い女を殺した」という怪文書。
誰かがフィギュアを作成する様子。
同じ市内と言っても、見知らぬ他人なので知子にとっては「対岸の火事」。
だが、第2、第3、第4の殺人が起こる。
過食症で太った若い女。
新聞への投稿マニアの45歳の主婦。
ややボケ気味の82歳の老人。
同じように、殺されるまでの様子が書かれ、犯人からと思われる怪文書も。
被害者に共通点は見当たらない。
無差別連続殺人?
サイコ・キラー?
犯人の手掛かりはまるでなし。
作者はなにを企んでいるのか?
と思わずにいられない。
だが目の前にヒントはあったのだ!
作者にしてやられたのだ。
予想外の結末ではあったが、納得できた。
倉知淳の他の作品も読んでみようと思う。