『天涯の砦』 小川一水 | たまらなく孤独で、熱い街

『天涯の砦』 小川一水

天涯の砦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) 天涯の砦
小川 一水
(ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
初版:2006年8月31日
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普通に息をしていけるということ。
感謝すらしないけど、宇宙137億年の歴史ではこれは恐らく画期的なことなんでしょうね。
地球上の陸の上にいる限りは。
同じところで長時間いても酸素が不足しないのは、空気が対流しているから?
空気が滞留していたら、寝るたびに死ぬ思いになりますね。
 
でも、そうでないところもある。
深海や高い山の上。
そして、山よりもさらに高いところ。
そう、大気圏外。
 
宇宙ステーション(軌道複合体)・望天。
観光地・ホテルでもある。
無重力を体験できるなんて、すてきですね。
望天は駒のように秒速35メートルで回転しているが、その回転をサポートしているのがボール・ベアリング。
ボール・ベアリングも万能ではないのですね。
望天の事故原因を思うと。
 
事故で吹き飛んだ望天。
だが、偶然に空気がある部屋に取り残され助かった人たちもいた。
地球への落下。
消費すればするだけ減り続ける酸素。
救援が来るのか来ないのかも判らない。
そして、なによりも各人がそれぞれの目的、思い、思想によって行動しているということ。
自分が助かるという確信もないのに、子供や他の人を助けに行く。
自分が二ノ瀬の立場だったら、そこまで出来るだろうか、と考えてしまう。
 
テクノロジーを過信せず、そして考え抜かれた救助のありさま。
作者の熱意が思いが伝わります。
そして、さらに上をめざすラスト。
小川さん、ならではですね。
 
それと、CNW(カーボンナノホイール)液体水素のエネルギーを上回った・・・・・・ことにより、宇宙開発が劇的に進んだ、といういかにもあり得そうな発想は素晴らしいですね。
本当にあり得るのかは分かりませんが、この小説にリアリティを与えている気がします。