『ベルゴンゾリ旋盤』 かんべむさし | たまらなく孤独で、熱い街

『ベルゴンゾリ旋盤』 かんべむさし

ベルゴンゾリ旋盤
ベルゴンゾリ旋盤 かんべ むさし
(徳間書店)
初版:1981年11月30日 
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かんべむさしは、たしか山田正紀や田中光二と同じ頃にSFマガジンにデビューしたのではなかったか。
あとの2名が正統派とするならば、かんべはギャグに走ったのか?
ていうか、笑わせるのが好きだったんだろうな。
でも、ギャグを続けるのは苦しい。
同じようなネタを繰り返しても飽きられるし、なにより本人が納得しないだろう。
いつのまにか、かんべむさしの本を読まなくなったのは、かんべが先を行ってしまったのか、読むのが苦痛になったのか。
読まなくなったしばらくあとに、光文社から文庫書下ろしで何冊かでていた時もあり、2~3冊ほど読んでみたこともあった。
サラリーマンものだった。
それはいい、出版社の要請もあるだろうし、SFでは売れないだろうし。
ただ、主人公はどれも同じような性格や考え方の人ばかり。
これにはガッカリ。
どういうのかというと、「上司にゴマをするくせに、飲み屋では会社のグチや上司の悪口を言う奴」とは付き合いたくないタイプ。
それもアリだけど、その考えは作者がサラリーマン時代に実際に思ったことではないか?
と思えちゃうと、なんだか読んでると作者の顔ばかりがちらついてうんざりしましたね。
フィクションを読んでいるのか、作者の「思い」を聞かされてるのか。
で、完全に読まなくなったのだが、ある日(4日前です^^)、ふと『ベルゴンゾリ旋盤』を思い出した。
かつて、どんなんだか読みたくて仕方なかったのではないか。
今は便利ですね。
アマゾンで古い本も手に入れることができます。
検索したら、ありました。
しかも1円(笑)。
他にも読んでなくて1円のが4冊あったので、いっしょに購入しました。
 
短編集です。
表題作はまさしくシュールで、理解できないまでも引き込まれます。
あとは、小松左京の『くだんのはは』ばりのホラーもあれば、スラップスティックや人情話しも。
まあ、初期の大傑作『背で泣いてる』みたいなのを期待してはいけないんでしょうが、久しぶりにかんべむさしに触れることができて、満足でしたね。
もう、このような本は復刊もされないので、人の目に触れることが難しいのは残念ですね。