『疾走!千マイル急行』(上) 小川一水 | たまらなく孤独で、熱い街

『疾走!千マイル急行』(上) 小川一水

疾走!千マイル急行〈上〉 小川 一水
疾走!千マイル急行〈上〉
(ソノラマ文庫)
初版:2005年7月31日
 
 
 
 
国際寝台列車〈千マイル急行(TME)〉。
走る超一流ホテルであり、乗務員もTMEにかかわる事に誇りと喜びを持っている、それはそれは豪華な列車である。
おそらく、〈オリエント急行〉よりも〈幻夜〉よりも。
 
そのTMEが都市国家エイヴァリーから、東方の采陽(サイヨー)へ向かう。
向学のため、4人の少年少女が150人の乗客と共に乗る。
TME所有会社社長の息子、テオドア・ファルスタット。
下町育ちの、ローライン・リンドベル。
鉄道オタクの、アルバート・V・ガリバール。
どこか斜に構えている、キッツ・クインザー。
 
しかし、TMEには重要な使命があった!
交戦になりそうな都市国家ルテニアからエイヴァリーを救って貰うよう、采陽(サイヨー)に依頼に行くのだ。
だが、それも空しくTME出発後、エイヴァリーは先制攻撃を受けて壊滅状態になったらしい。
頼みの綱はTMEのみ。
TMEに積んである、重要な“もの”を奪うために襲い掛かる敵。
襲われるであろうことを考え、装甲車も連結したTME。
逃げる、反撃する、裏をかく、TME。
ここら辺りはかなりハラハラすると同時に、通過したさまざまな都市国家が異国情緒をくすぐり、まるで一緒にTMEに乗り込んでいるようです。
そして、いろいろとTMEに関わっていく4人の少年少女。
 
列車に乗るときにテオドア・ファルスタットは父に「真の友達を作れ」と言われる。
この旅を通じて、テオドアに真の友はできるのか?
そして、TMEの、エイヴァリーの、少年少女の、乗務員の運命は?
 
ようやく命からがらエイヴァリーの人々の唯一の「希望の地」、采陽(サイヨー)にたどり着いたTMEだったが、そこでさらに過酷な選択を迫られる。
ラストの一行は「2,303マイルを走った千マイル急行は、ここで止まるはずだった」とある。
満身創痍のTMEはさらに走らなければならないのか?
そしてそれに乗っているエイヴァリーの人々もまたボロボロになりながら、運命に立ち向かうのか?
最後の一人になるまで、この世からエイヴァリー人が消えるまで闘うというのか?
エイヴァリー人の思いは著者の思い。
迷っても悩んでも、先へ前へ進む。
 
さあ、下巻へ突入だ!
しばし、待たれい!
待てない人は書店に!
(余りの面白さに、ちと興奮しすぎたか・・・・・)