「今日、ホームレスになった 増田明利」(新風舎)という本を読んでみた。

副題が「13のサラリーマン転落人生」であるが、現代社会の問題を実話体験を通して考えさせられる本である。


ハッキリ言って「この本で紹介された人達はKより優秀であった」のだろうと思う。

しかし、結果論として負け組みになってしまった。

人生には落とし穴があちらこちらで待ち構えているのだと言うことを身につまされる本である。


先日、あずまひでお氏の「失踪日記」を読んだ時にも感じたのだが、どうも現在の日本人には欠けている物がある。

それは「見たくない現実は見ようとしない」という事だろうと思う。

日本社会全体が「現実逃避」をしようとしているのだろうとKは思う。


久々に本屋に行ってみると「株をやれば大儲けできる」と言うような本 (株をすれば必ず勝てる的な印象を受ける本)

「中国・朝鮮には馬鹿にされるな、日本の力を見せてやれ!」的な本 (戦えば勝つのは日本というような印象の本)

「誰にでも、すぐに身に付く的、解説本」 

というような、未来に恐れるものなどない(あなたの未来はバラ色)というような本ばかりが並んでいる。


人生のリスクの警鐘を打ち鳴らしているような本は、ほとんどないと言えるだろう。

しかし、現実には「ワーキング・プア」と呼ばれる人たちは確実に増加している。

ニート・フリーターと呼ばれる人だって、本人の意思だけではなく増加しているのだろう。


考え方が「甘い」というか「甘い考え方を歓迎する国民」が増加しているのだろうと思う。

「明治時代の人と今の人は考え方が違う」という意見を先日ラジオで聞いた。

今の人には「明治時代のような厳しさを教育に取り入れるべきだ」という意見だった。


交通事故で人が死んでも「すぐに隠されてしまう。」

多くの人が「死と云う、人間であるならいずれ向かい合う事になる現実を学ぶ機会もなく生きてきている。」

痛みや、苦労という「嫌なもの」から保護され、無菌室の中で育っているようなものである。


社会全体が「リスクの説明義務」は避けて通ろうとする。

その部分は「法律を作って、規制をしようとする」

多くの企業に「個人情報保護」が義務付けられている。

しかし、多くの国民は「そんな法律は意識もしない」

多分だが、井戸端会議と呼ばれる集会では「個人情報保護法違反のための会議」ともいえる状況だろう。


できるだけ法規制は避け、道徳とかマナー教育として「節度」は保つべきだろうが、今は何でも法規制である。


その中で、セーフティネットは確実に崩壊に向かっている。

「今日、ホームレスになった」に登場する人たちは「どちらかといえば勝ち組に近かった人が多い」

それが、めぐり合わせ、判断ミス、運、などでアッサリと破滅していった。

共通するのは「世間は冷たい、職場も、職場の仲間もいざとなったら冷たい」という事だろう。

この辺は、社会としてセーフティネットで保護する必要があるだろう。


最大の問題は、多くの人がこのような問題があることから、目を逸らし、向かい合おうとしないと云うことだろう。

「人は自分の見たいものを真実と思う」というが、希望と夢だけで生きていけると思ったら大間違いである。

現実を直視し、貧富の差がある事も、醜い現実もある事も、受け止める必要があるのだろうと思う。