3月2日 ゼロスポーツの破綻が語るもの | KCR総研代表 金田一洋次郎の証券アナリスト日記

3月2日 ゼロスポーツの破綻が語るもの

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「ゼロスポーツの破綻が語るもの」


EVベンチャーのゼロスポーツが3月1日破産を申請した。


同社は、日本郵政グループの郵便事業会社から郵便集
配用の改造電気自動車1030台を受注して2011年度に納
入する予定だった話題のベンチャー企業だった。


報道によれば郵便事業会社から集配に使用するEV
1030台を約35億円で受注した。だが、このうち
今年1~2月に納期を迎えた30台が間に合わず、
郵便事業会社が1月に契約解除を通知。


2月には約7億円の違約金を請求された上に、銀行から
返済を迫られ資金繰りが悪化したという。


同社の業績は、10年8月期の売上高は5億円で、
税引き後利益は3億円の赤字だったというが、なぜ
日本ではこうしたベンチャー企業が育たないのか
本当に疑問に思う。


また、赤字でもなぜ早期上場ができなかったのか。
現在のIPO沈静化の動きも不運といえば不運であろうが
同社の事業は米国であれば1000億円クラスの資金を
集めることができたのではないかと率直に感じる。


当社は、企業の競争力を計る「定性分析レポート」を
作成し、当該企業の競争力レーティングを発表して
いるが、業界の競争条件の中に「強い報復活動」とい
うチェック項目がある。


これは、業界参入への新規参入障壁を計るもので、
「業界参入に対し強い報復が予想されるか否か」を
見るものである。


報復活動とは、既存業界においてシェアを有している
企業から新規参入業者に対して何らかの形でダメージを
与えて当該企業の参入を阻むというものである。


同社が所属する電気自動車業界は既に大手が参入をして
きており、三菱自動車をはじめとするi-miveなどと凌ぎ
を削って今回の破たんの原因となった大量受注をしたと
聞く。


同社のコンセプトは元々多品種少量生産のファブレス経営
ということであり、こうした企業が大量生産を受注する
ということは、全く別の観点からの仕入れルートの確保、
資金需要が必要になることはいうまでもない。


その点受注活動が先行し、大手企業と凌ぎを削った場合、
その製造に関し、パーツの確保などで報復をするという
ことは当然想定されることなのである。


現在、EV市場はかなり未成熟であるが、大手自動車メーカー
は次々と参入を果たすも早い普及を望んではいない。


これは、昨年大手シンクタンクNRIの予測が2020年度の世
界4市場(日・中・欧・米)でEV車の普及が155万台程度と
発表していることからも明らかである。


これは、約10年後にEV車の普及が5%にも満たないとの予測
であり、地球環境などから考えると著しく低く遅い普及と
の予測となっている。


大手企業は、低燃費ガソリン車→ハイブリッド車→
EV車の順序で普及を画策しており、こうした観点から
ゼロスポーツの事業は、決して望ましいものではないの
である。


聞けば創業者の中島徳至(なかしまとくし)社長は、数々の
ベンチャー賞も受賞し、話題の人物で大学の講義などを
通じて若手の育成にも熱心だったという。


しかし、経営者としては失敗の烙印を押されてしまった。
岐阜市内で記者会見した同氏は「道半ばで無念の思いでい
っぱい」と語ったらしいがその胸中はいかばかりのもので
あったであろうか。


同社が岐阜のベンチャー企業ではなく日本以外の創業で
あったら企業は全く違った歩みをみせたかもしれない。