今日の午後は都内の某店のジャムセッションに行ってきた。まあ、とにかくハイレベルで、C・コリアの「Bud Powell」だとかコルトレーンの「India」だとかやったりしてて、ピアニストの中では私が一番ポンコツな感じでした。まあ、実に勉強になりました。

 

ところで、ジャズを演奏するアマチュアがよく使う、黒本と呼ばれる楽譜があるが、「Lady Bird」と「Lazy Bird」という曲が並んでいて、曲名だけ言われても、「えっ、タッド・ダメロンのほうだっけ、コルトレーンの曲のほうだっけ?」と一瞬分からなくなることがある。年齢とともに曲名と音楽の関連付けが怪しくなってきたような気がする。

 

というわけで(どういうわけだか)、久しぶりにケン・ローチ監督作品を取り上げたい。1994年の「レディバード・レディバード」である。子供たちを社会福祉局に取り上げられた母親マギー(クリシー・ロック)の悲劇を実話に基づき描いたドラマだ。
 

 

マギーはカラオケバーでパラグアイ出身で亡命中の男ジョージ(ウラジミール・ヴェガ)と知り合う。彼女はすべて父親の違う4人の子供を社会福祉局に取られたいきさつを打ち明ける。

 

一番新しい夫(レイ・ウィンストン)は大酒飲みでマギーに暴力で金を要求する。これに耐えられず隠れて住んでいたマギーだが、

 

飲み歩いて留守にしていたときの火事がきっかけで長男が大やけどを負い、養育能力なしと判断される。

 

マギーはだらしなく、また、極度の短気ですぐ感情を爆発させて人をののしるシーンが常に映し出され、社会福祉局に子供たちを奪われるのも自業自得かな、と思わせる。実話ベースといえ、観る側に「安易に主人公に同情はさせない」と言わんばかりの演出は、なおさら映画を暗く重苦しいものにしている。

 

ジョージとの間に生まれた赤ん坊すら社会福祉局は取り上げるんである。何かにつけて攻撃的で人を寄せ付けないマギーのすべてを受け入れ、無償の愛を捧げ続けるジョージは、観る側にとって「世の中、こういう形で男女の関係が成り立つのか」と驚き以外の何物でもないくらいの存在だが、その彼に対してさえ、マギーは感情をむき出しにし、怒りを爆発させるんである。

 

あらゆる人間に牙をむくマギーだが、暴力を振るわれても、家を追われても、不器用でも子供への愛情は一途だ。母親としても妻としても問題ありの主人公が抱える様々な問題を、ローチ監督は見せ続ける。この問題をどう考えるかは観る側に委ねられている。本作はベルリン国際映画賞銀熊賞を受賞、マギーを演じたクリシー・ロックも主演女優賞に輝いた。