1955年の大映作品、「幸福を配達する娘」を取り上げたい。先日ご紹介した「娘の縁談」と同じ年に同じ木村恵吾監督が撮った作品である。あちらは新聞、こちらは雑誌の連載の映画化、さらに、出演者もかなりダブっているのが面白い。


kazzpの音楽&映画-幸福を配達する娘01
主人公の桑野蕗子を演じる“あやや”こと、若尾文子。桑野家の三女である。物語は四男三女の桑野家とそれぞれの家族、そして蕗子の職場を舞台に展開する。


kazzpの音楽&映画-幸福を配達する娘02
北海道へ嫁いでいる桑野家の長姉の夫の同僚が東京へ転勤することになり、桑野家に1カ月だけ下宿する。この下宿人の三上に扮するのが菅原謙二である。


kazzpの音楽&映画-幸福を配達する娘04
蕗子と三上を夫婦にしようと画策する桑野家の長女に清川玉枝。ここまでは先日紹介した「娘の縁談」と同じ配役で、しかも似通った役柄設定だ。


kazzpの音楽&映画-幸福を配達する娘03
蕗子に思いを寄せる会社の同僚に当時26歳の故・高松秀郎。ずいぶん爽やかだなあ。私の世代ではやっぱり柔道一直線のイメージが強すぎるのかも。母親には「娘の縁談」では若尾の祖母役を演じた北林谷栄、父親に菅井一郎、そのほか、千秋実、船越英二、目黒幸子、井上大介、矢島ひろ子など。


kazzpの音楽&映画-幸福を配達する娘05
「娘の縁談」と同じ結婚や恋愛をテーマにしてはいるものの、むしろ家族のきずなや当時の人間らしい生活が淡々としたストーリーの中にうまく描かれ、好感が持てる。ボウルを手に勝手口を飛び出して豆腐屋さんから豆腐や納豆を買い、ご飯は卓袱台で食べ、遅く帰宅したものはお膳の上に覆われた布をとって冷めた食事を食べる。モノクロ画面に映し出される日常のちょっとした生活のあれこれが、昭和を感じさせる。


1955年というと私もまだ生まれていなかったが、でも、自分の小さなころを思い出し、「昭和は遠くなりにけり」を感じながら見た。