年をとって記憶力が衰えてきたのは寂しいことだが、随分前に見た映画や読んだ本の内容を忘れてしまい、久々に見ると新鮮だったりするのは得した気分である。いや、そうでもないか。

至福のとき [DVD]
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この映画、久々に見ました。チャン・イーモウ監督の2002年の作品である。


kazzpの音楽&映画-幸福時光01
中国の大連に住むチャオは、結婚願望が強いが18回お見合いしてことごとく失敗している失業中で文無しの中年男だ。痩せた女性が好みだがそこは目をつぶって太った子連れ女に求愛する。空き地に捨てられたバスをカップルの休憩所に改造してチップをもらって生活しているが、彼女には大きな旅館の経営者だとウソをつく。


kazzpの音楽&映画-幸福時光02
彼女の家には実の子ではない盲目の少女ウーがいて、虐げられる日々を送っている。継母は彼女を住み込みのマッサージ師として雇うようチャオに頼み込み、体よくウーを追い払おうとする。


kazzpの音楽&映画-幸福時光03
チャオは自分が勤めていた会社の閉鎖された工場を借り、リストラされた仲間たちの手を借りてマッサージ室を作る。仲間が客のフリをして協力するが、みんな失業者のため金が続かず、しまいには偽物の札をチップとして渡すようにもなる。


kazzpの音楽&映画-幸福時光04
働ける喜びで初めて笑顔を見せるウー。だが、彼女はチャオや仲間たちの芝居を見抜いており、気付かぬフリをしていただけだった。チャオがTVを売って買い与えた質素なひまわり柄のワンピースを着たウーがなんとも可愛らしくなるあたりも巧い。


kazzpの音楽&映画-幸福時光05
金のない独り者の中年男の寂しさを出すにはいささか軽い印象の主演のチャオ・ベンシャンだが、映画自体もコメディタッチのため重苦しい雰囲気はなく、チャオとウーの境遇も、2人の親子のような関係も、周囲の心温まる言動も、明るく描かれる。


貧しいながらも心やさしい庶民の善意を描いた作品は、そもそも日本映画の得意とするところでもあったように思うが、世の中が精神の充足と物質的な充足を履き違えるようになって人の幸せの定義も変わりつつあるのだろう、こういう映画は本当に少なくなってしまった。それでも、こうした作品を求め、感動する人がたくさんいるというのは心強い限りである。