ご近所の方が見舞いに来られ(私は引っ込んだままで失礼したが)、紙袋を女房に渡して帰った。文明堂と書いてあって中身の想像がついたので、カステラがそんなに好きではない私はうっちゃっておいたが、あとで開封してみると、日本橋文明堂の「吟匠」という桐箱に入った高級カステラで、あまりの美味しさに「カステラには関心がない」というのは今日で封印することにした。ちなみに、お見舞いにいただくお菓子類のせいで、5日で2キロ太ってしまった。どうしてくれよう。


さて、今日は日本映画を取り上げたい。先日は、舞台で絶賛され、作者の今井雅之のライフワークだとされる「WINDS OF GOD」(1995年版のほう)を観たが、舞台演出を手掛けた奈良橋陽子監督が、好評だった舞台版に比較的に忠実に映画化したと言われながらも、私には退屈でつまらない1本であった。「じゃあ何を取り上げようか」と思っていたタイミングで、「しゃべれども しゃべれども」(2007年)を観たので、今日はそちらを紹介したい。


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主人公の今昔亭三つ葉(国分太一)は、今昔亭小三文(伊東四朗)を師匠に持つ二つ目の落語家である。私は熱狂的な落語ファンではないが、今の落語界では人気・実力ともに十指に入るであろう柳亭市馬師匠を二つ目時代から応援し、公式サイトも運営させていただいている。そういう点からすれば、寄席に出かけずTVで「笑点」を見る程度の人よりは、噺家やネタについては知っているほうであり、寄席でチラシをもらってこの映画にも興味があったのだが、これまで見る機会がなかったのである。しかし、いざ見てみると、主人公が落語家というだけで、映画自体は落語好きかどうかを問われるような内容でもなかったように思う。むしろ1人の青年の生き方や彼を中心とした人間模様などを描いた普通のドラマとして誰にでも楽しめる映画であり、私自身も大変面白く観ることができた。


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主人公はまだ力不足の二つ目で、自分自身が落語家として行き詰まりを感じているという立場にありながら、ひょんなことから話し方教室を主宰するようになり、小学生、若い女性、選手出身のプロ野球解説者という、それぞれに事情を抱えた3人の生徒を指導する中で彼自身も成長していく。


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客席からしか見る機会のない鈴本(深川でした。ご指摘により訂正いたします)もこんなアングルから見せてくれ、落語に興味がある人ならばより楽しめる。


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この映画が高く評価されていることに不満を持つ人も少なくないようだし、役者としての国分太一に対する評価も二分されるようである。だが、助監督として豊富なキャリアを持つ平山監督の力まない演出はとてもいいと思うし、映画の持つほんわりした温かいムードと国分太一のキャラもとてもマッチしているように思う。特に一門会で彼が披露した「火焔太鼓」はなかなか見応えがあり、ちょっぴりワクワク、ゾクゾクさせられた。そりゃあ、彼は素人でプロの落語家ではないのは重々承知している。が、今の二つ目、いや真打ちも含めて、このくらい緊迫感のある高座ができる噺家がどれほどいるか、という見方をすれば、国分の好演は満点をつけてもいいのではないかと私は感じた。


私はこの映画、とても好きだなぁ。