国際EAP協会の総会報告、最終日の様子をお伝えします。
その前に前夜のInternational Memberの夕食会から。
国際メンバーといっても、多くはカナダです。そして欧州、アジア、豪州、カリブ海諸国。
私のテーブルで一緒にお話した3名の方々は、2人がカナダ、1人はこういう機会じゃないと海外のメンバーと話す機会がないと積極的に参加したミネソタの方でした。40代~60代の女性ばかり。(お子さんやお孫さんの話になったので大体年齢がわかりました)
いずれも地方都市に住む普通の方々でしたが、彼女等が共通して話していたのが、若い世代(10代、20代前半)の様子です。自分で判断ができない、他者を尊敬しない、やる気があるのかどうか・・・これは日本で語られている若者像と全く同じです。「日本はこんなことないでしょう?」と聞かれ、「日本も同じですよ。最近は自ら「うつ」という人達が増えているんですよ」と答えると、「へ~っ」といった感じでした。
さて、9日最終日。朝1番に出たセッションは、ディスチミアへの対応の話。
米国にはメンタル不調の方々を預かったり、専門的に対応する施設が多くあります。そんな施設を運営する方(といってもしっかりPhDを持つ)から報告でした。
ディスチミアは自殺しないからあまり怖くない。ただ幸福感やQOLが非常に低い為、他の疾患と併発すると、例えばアルコール依存症との併発は通常の4倍以上治療に時間がかかること、まずディスチミアへの対応を進めること、との話をされていました。
そこで効果が高い方法として、スピリチュアルな気持を持たせるのも一つの方法だとか。これはキリストの存在を信じなさい、とかあなたの守護霊と信じなさい、いうのではありません。「神様はいつもあなたを見守ってくれているよ」といった程度の信心でも、将来に対して希望が持てるようになるといったことでした。
だから宗教とスピリチュアルとは違う概念とのこと。これは正月には初詣に行き、クリスマスもお祝いし、法事にはお坊さんを呼ぶ日本人には受け入れやすい話です。ただスピリチュアルの話が始まると多くの参加者が席を立ったのも事実です。日本語のスピリチュアルという言葉もかなり怪しい意味になっていますが(笑)。
その次のセッションは、FreeEAPの話。
数年前から無料でEAPを提供する会社が出てきていて、それがかなり大きくなりつつあるようです。
米国のEAPはかなり充実していて、そこそこの利用率(5~10%)もあり、企業のROIへの貢献もあると評価されています。しかし昨今の景気後退の状況では、コスト削減が企業では叫ばれ、EAPにかけるコスト、特に初期コストや基本契約分をどう削るか、といった状態になっているようです。その為、相場は社員1人あたり月額1.4~2ドル程度、場合によってはセントの単位にまで下がっているとのこと。ここ数年言われているカウンセリングのコモデティ化です。
そこで、出てきたのが本当に何が必要なのか、いらないものは全て省いてついでに価格まで「Free(無料)」にしたEAPです。会場からは、品質の問題が問われていましたが、「選択は市場がすること」と言い切る演者。さすが米国、市場経済です。改めてインターネットで調べてみると、実際には保険や他の高額なプログラムのおまけとして付けるビジネスモデルが伸びているようです。プロバイダー(EAP専門家)側も、小さなところはこれまでの有料EAPだけでなく、FreeEAP提供会社との契約もやるプロバイダーが出ているそうで、市場に根付きつつあるようです。
これを日本に置き換えるとどうか?
日本は実はFreeEAPに近いモデルに動いてきていると思います。
外部のEAP専門家(相談機関)の多くががスキルを高め、成熟する前に、情報の非対称性をうまく利用して企業契約を取ってきたのが実情です。結局それでは利用率も低迷し、休職・復職も職場に早期に戻してもまた再燃・再発させてしまう、といった悪循環に陥っています。
またわが国は産業保健体制の仕組みがあり、この仕組みをしっかりと作り上げる限りは、社内に一種のFreeEAPも作れる、またどうしても外部を使いたいなら、政府が作りつつある無料で本当に良質な相談機関がいくらでもある。(またその利用率がとても低くて、今は簡単に利用が可能)
その上精神科クリニックでは心理職のカウンセリングよりも自己負担の少ない金額で、経験の深い医師が対応してくれる。(たとえ3分診療といわれても、対応してきたクライアントの数と、薬を使える効果は偉大です)
また企業の安全配慮義務を厳しく謳うわが国の風土では、提供側の品質は非常に大きな問題です。
私が大学院で学んだのは、医療経済です。医療経済は市場至上主義とは簡単には相容れないものです。その為、米国以外では市場経済と一線を画した制度設計になっています。
このFreeEAPのコンセプトは、わが国なりのやり方を見出していくと、メンタルヘルス対策において、大きなパラダイムシフトを引き起こす予感がします。