生水の郷と書いて「しょうずのさと」と読みます。
40歳の誕生日を迎えたこの日に出かけたのは自然と人間が共生するところ。
19歳で島根から関西にでて都会の暮らしを始めて21年、実に人生の半分を都会で暮らしています。
いつもの暮らしを40歳を機に見つめなおしてみる、そんな場所としてここへやってきました。
ここ滋賀県高島市新旭町の針江地区は集落のあちこちに比良山の伏流水が湧き出していて、
集落内には水路がはりめぐらされ、きれいな水がそこここに流れています。
"かばた"というのはこの水路を各家の敷地内に引き込んだもの。
170戸あまりある針江地区の実に100戸あまりに"かばた"があるのだそうです。("かばた"⇒"川端"と書きます。)
いや、実はこの水路、引き込んでいるというよりも家々も水源のひとつなのですよ。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/a1/fc/10065701603.jpg?caw=800)
NHKのドキュメンタリー番組で針江の暮らしが紹介されるやあちこちから観光客が押し寄せたそうです。
個人のお宅の敷地内に勝手に入り込む、生活道路に平気で車を停めるなど、いろいろ問題が起こったそうです。
でも、ここは観光地でもなんでもない普通の集落、暮らしの場なのです。
そこで、針江の集落内を案内するボランティアの方々が活躍されます。
ボランティアの方々の案内があれば、"かばた"のある暮らしを垣間見ることができます。
ちなみに↓右がボランティアのガイドさん、左のチビが妻。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/15/d2/10065701961.jpg?caw=800)
冒頭の写真は梅花藻という水草、梅の花に似たを咲かせるところからこの名がついたといいます。
もちろんきれいな水でしか育ちません。滋賀県内ではほかに米原市の醒ヶ井が有名ですね。
さて集落の中心部にある針江公民館からガイドさんの案内で散策に出かけましょ。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/1b/22/10065703049.jpg?caw=800)
針江の真ん中を流れる針江大川、のんびりした田舎の風景に心癒されます。
針江の水路はこの川の水を引いてきたもの.......と思いがちですが....
ホラ、こんな道端にも。
底のほうで砂がゆらゆらと舞い上がっている様子から水が湧き出しているのが分かります。
実は川底や家々、そして水路のあちこちから湧き出す伏流水が集まって流れているものなのです。
つまり家々や道端なんかも水源なんですな。
これが針絵大川、川の中でゆらゆらしているのが梅花藻です。
ちょうど今の時期、5月の下旬から6月にかけて小さな五弁の花を咲かせます。
醒ヶ井の梅花藻が咲くとローカルニュースでも放送されますが、実物ははじめて見ました。
花の可憐さもさることながら、緑の鮮やかさがとても印象的ですな。
残念なのはちょうど上流で行われている田植えの時期と重なって水がにごっていること。
田植えの終わる6月になれば澄み切ったきれいな流れが戻ってくるのだそうです。
そして、これが"かばた"です。
家々の多くは離れが水路とつながっていて、地面にささっている管からこんこんと水が湧き出しています。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/5e/21/10065703050.jpg?caw=800)
ご覧のとおりここは家々の台所代わり。
地元で採れた野菜を洗ったり、夏にはスイカを冷やしたりといろいろな利用の仕方があります。
水温は年間を通じて12~14℃に自然に保たれていて、ちょっとひんやりした感じが心地いい。
水の湧き出る「元池」は飲み水や炊事に使います。
元池から流れ出す「坪池」は野菜洗いに、食器を洗うのは「端池」と使い方にも古くからのルールがあります。
食器についたご飯粒などは鯉が食べてくれます。
とはいえ、水路を通じて各家の"かばた"は繋がっておりますので、隣近所迷惑にならないよう排水には細心
の注意をはらわなくてはなりません。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/19/42/10065703480.jpg?caw=800)
自分の家さえよければ...という家など皆無、集落全体が気持ちよく"かばた"を使えるよう気をつけています。
川上の家は川下の家がきれいに使えるよう、川下の家は川上を信頼して水を使う.........
我々都市の住民が忘れてしまったことが、ここには当たり前のごとく息づいているんですな。
ご了解をいただいて"かばた"に湧き出す水をすくって飲んでみるととても柔らかな優しい味がしました。
創業100年余りという地元のお豆腐屋さん、上原豆腐店さん。
こんなふうに"かばた"が利用されています。これも生活の知恵ですな。
手作りの上に、きれいな湧き水に浸されたお豆腐、お土産に買って帰りましたよ。
水が美味しいのだから当然お豆腐も美味いです。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/8f/1d/10065710175.jpg?caw=800)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/8a/f5/10065705155.jpg?caw=800)
水路にはそこらじゅうに鯉が放されていて......ビワコオオナマズが放されてる"かばた"も!
そして道行く人はみなさん気さくに声をかけてくださいます。
ここに住む方々はまさに水と自然と共生されているんだなぁとおもいます。
そしてここでの暮らしを誇りに思っていらっしゃいます。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/99/85/10065709610.jpg?caw=800)
都会の生活に疲れたとき、ぜひ針江の暮らしを垣間見てくださいませ。
ただしここは観光地ではありません。生活の場をほんの少しだけ垣間見させていただくのです。
お出かけの際は必ずボランティアの方にご案内していただいてください。
おねがいします。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/5e/a1/10065706316.jpg?caw=800)
ボクも日々の暮らしに疲れたらまたおじゃましてみようと思います。
■滋賀県高島市新旭町針江地区
JR湖西線新旭駅から車で5分(新旭駅前「じばさん会館」にレンタサイクルあり)
★案内ボランティアのお申し込み
針江生水の郷委員会 tel.090-3168-8400(なるべく前日までに予約してください。)
案内料金は1人1000円、景観や"かばた"の保全に使われるそうです。
★食事つきのエコツアーや1日1組限定で"かばた"のある暮らしを体験できる施設もあります。