不妊治療成功への鍵
いくつかの鍵がありますが
最大の鍵はと言えば
それは早期受診になります。
つまり少しでも早い治療が
成功への最大の鍵です。
これに尽きます。
しかしこれはわかっていても色々な理由で
出来ていないのが現状です。
どうして早く治療を開始しないのでしょうか？
晩婚化もその一因ではあると思いますが、
皆さんに妊娠、出産、不妊に関する正しい
情報が伝わっていないからだと思っています。
残念ながらこの件に関しては学校では教えてくれません。
しかも誤解を招く情報が時々出てしまいます。
例えば、芸能人等の高齢出産のニュースを聞くと
自分もその年齢での妊娠が可能だと思ってしまう。
しかしこのような高齢での妊娠は本当に珍しい
ケースのため、一般的には当てはまりません。
また、我々産婦人科医がもっと対外的に
啓蒙活動をしなければいけないのにも拘らず
ほとんどできていないのが現状です。
国や自治体も積極的には活動していません。
結婚後最初のうちは仕事が忙しく
とても妊娠などできない状況で、
仕事が一段落してそろそろという時に
妊娠を試みるもなかなか妊娠しないので、
３０代後半になり初めて病院を訪れる。
色々調べていくうちに夫婦共に問題があり
「なぜもっと早く来なかったのか」と
自責の念にとらわれる。
そういう方がかなり多いと思います。
誰もがこういう流れを望んでいたわけでは無く
結果としてそうなっただけだと思います。
しかしこれからは、この流れを変えていかなければ
いけないと思います。
国はこの流れを変えるべくここ何年か努力をしています。
その一つとして「特定不妊治療助成金制度」です。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/kosodate/josei/funin/top/index.html
これは体外受精か顕微授精を受けられたご夫婦に
助成金が支給される制度です。
治療１回につき１５万円を上限額として、１年度
（４月１日から翌年３月３１日まで）当たり２回を限度に、
通算５年度（期間が連続している必要なし）まで
申請することができます。
これはとても有効な方法であると思います。
特に若い世代にとって非常に助かる事です。
ただこれは根本的な解決にはなっていません。
あくまで対処療法的な対応であり
後手後手の対応となっています。
つまりこういう補助を出す以前の対策が必要です。
若い年齢層に来院させるシステム作りを
国にしてほしいと思います。
言うのは容易いですがシステムを作るのは
ものすごく困難だと思います。
システム作りの一つの案として
例えば「体外受精を条件付きで保険適応」にする。
これはどうでしょうか？
もちろん１年間の回数に制限をつけます。
それと保険適応に年齢制限を設けることで
若い年齢層の早期の来院意欲を高めます。
例えば、外国を見てみると国により体外受精を
保険適応にしている所があります。
イスラエルは体外受精の料金が無料。
全額国が負担。
そのため金銭的に余裕がない
若いカップルでも治療ができ
その結果妊娠率が飛躍的に上がっています。
（2011 Feb Fertility and Sterility）
ドイツでは40歳以下に限り
年間3回までは半額保険適応。
フランスでは体外受精は4回まで
保険が利き無料です。
（ただし43歳までで年齢制限があります。）
ある程度の年齢までに体外受精を受けないと
保険が効かなくなる、
等ある種の期限や目安が出来ると、
来院時期が早まる事が期待できます。
年齢制限をつける事に反対意見が多いと思います。
もちろん私もそれ自体には反対ですが
年齢制限をつけない場合、
治療を先送りにしてしまう事もあると思います。
あくまで早期受診を促すというためには
年齢制限が有効になると思います。
これが国にできる有効な事の一つなのかなと思います。
もう一つ、啓蒙活動という点での「宣伝」についてですが
最近ACから子宮がんのCMが盛んに流れていますが
ぜひACが不妊の啓蒙のCMも流して欲しいと思います。
少し新聞や週刊誌に不妊に関する記事が載っただけでも
反響は少なからずあります。
ACのCMなら効果がとても大きいと思います。
人間努力してできる事とできない事があります。
妊娠とは「数多くの奇跡」を乗り越えて
やっと成功するまさしく「ミラクル」そのものです。
いくら不妊治療や体外受精があるとはいえ
人の手の及ばない領域が沢山あります。
人生において色々な大切な事があるとは思いますが
今しかできない事をぜひ優先して頂きたいと思います。
それにより、もっと多くのカップルに
より簡単に、よりストレスが無く、より早く
子供ができるようになるのではないかと思います。