芸能界の礼儀 | 鬼ですけど…それが何か?

鬼ですけど…それが何か?

振付師KAZUMI-BOYのブログ




人それぞれ、異なった家庭に産まれ、異なった環境で育つのだから、意見が合う合わない、理解し合える、し合えない、と言うのは仕方のない事なのだろう。


しかし人は皆、必要最小限の社会性や協調性、そしてモラルを学ぶ事が義務づけられている。


身に付くか?付かないか?は別の話…



それこそ『人それぞれ』なのかも知れないが…。



電車やバスの中、携帯電話で大声で通話している初老の男性…。


運転手に注意を促されると…


「向こうから掛けて来た電話なんだから、しょうがないだろ!」


…と逆ギレをする。


『車内での携帯電話に寄る通話は、他のお客様のご迷惑になりますのでご遠慮願います。』


…と言うアナウンスを聞いていないのか?


それとも…


『掛かって来た電話に寄る通話はOKだ!』


…と言う理解の仕方なのだろうか?



大人が集まる、夜の飲食店の中で、騒ぎ回る子供。


親が注意をしないのを見かねて、店員が代わりに、その子供を諭すと…


「感じの悪い店だ!」


…と逆ギレし、悪態をついて出て行く三十代とおぼしき両親。





ルールやマナー、そしてモラルは、国々に寄っても異なる。


他人の子供を『可愛い』と言ってはいけない国。


もてなされた食事は、残すのがマナーだと言う国。


マリファナが合法な国。


理由を聞けば、それぞれに『なるほどね』と思える。


だから、地球規模で共通のルールやマナーやモラルを定める事は難しいだろう。


ルール、マナー、モラルは行く先々で変化する…


…ならば…


郷に入っては郷に従うのがベストだろう。



私は、この日本に産まれ育った人間であるから、日本のマナー、モラルが好きであるし、尊重している。



そして、日本の芸の世界にも『独特』とも言えるモラルが存在する。


テレビの世界、舞台の世界、映画の世界、日本古来の伝統芸能の世界…。


それぞれの世界に『独特のルール、マナー』が存在するのである。



共通して言えるのは…


『目上の者や師を敬う』


…と言う事が、一般常識よりも更に色濃い…と言う部分ではなかろうか?




自分よりも先の道を行く先輩や兄弟子。


自分の芸を育ててくれる師匠や演出家、監督。




また、一歩外に出れば、日頃直接的に関わりが無くとも、目上であれば敬う。


そうした礼儀に非常に厳しい世界である。


例え、自分より歳若くとも、自分がその人に教えを乞うているならば、その人は『師』であるから、敬って当然。



直向きに芸を磨くと言う事は、そうした厳しい礼儀をきちんと身に付ける事から始まる。


それが当たり前の世界。


これが理解出来ない者には『教えを乞う』資格は無いのである。


それが当たり前の世界なのだ。





私の『師匠』は日本人ではない。


だから、前述した様な日本の芸能界独特の厳しい礼儀の中で育っていないし、縦社会の中に身を置いた事もない。


しかしながら…


礼儀やモラル、マナーは、学べるものであり、育てる事が出来るものであると知った。



24歳でデビューして以来、私は今も尚、こうした礼儀やモラルを各界で学び続けている。芸能界で、宝塚で、また、別の世界で。




私は、ダンスだけではなく、こうした、芸能界の厳しい礼儀やマナーを日頃のクラスでも教えて行かなければならないと考えている。


『鬼』と呼ばれてしまう理由の一つだろう。



私が教えた生徒達が、いつの日にか、芸能の世界に生きると決めた時、必要最小限の礼儀をわきまえて居られる様に。




謙虚さ、尊敬の念を持たない者に…


謙虚さ、尊敬の念が理解出来ない者に…


私は、私の芸は教えたくない。





何度教えても、これが理解出来なければ、日本の芸能の世界には向いていない。


ダンスを学ぶ以前の由々しき問題だからである。



私などが言うのも烏滸がましいが、『これが当たり前の世界だ』と認識した時、自分の芸は広がりを見せる。



そう思うからである。