長く宝塚で振付をさせて頂いていると、退団者のいる公演を担当する事もしばしば。
今回の月組公演もそうである。
越乃組長、妃鳳、紗那、三人とも、私の振付作品に必ずと言っていい程にキャスティングされて来た、馴染みの深い連中である。
私は、退団者のいる振付場面を担当させて頂く場合、可能な限り『餞別パート』を作る様にしている。
勿論、演出家の許しを得ての話だ。
テーマやストーリーがはっきりしている場面を担当している場合は『餞別パート』を取り入れる事は難しいが、中詰めの場面の様に、ほぼ全員が歌い踊る場面では可能だ。
いつもは、振付稽古に入る前に、打ち合わせの段階で『餞別パート』を作る事を演出家に了承して貰う。
しかし今回は、稽古場に入るまで、三人の退団を知らなかった。
振付の構成は出来上がってしまっている。
『さて、どうしたものか?』
事前に三人の退団を知っていれば、『餞別パート』を構成に組み込めたのだが…。
私は取り敢えず、構成通り、予定通りに振付を進める事にしたのだが、稽古が進む内に、どうしても『餞別パート』を作りたくなってしまった。
『何とかならんかなぁ…』
完成している構成をブチ壊す事なく『後付け』で、三人が少しでも目立つパートを作れないもんか?
散々悩んだ挙げ句…
『これだな!』
…と、考えが纏まる。
早速その場で、演出の先生にご相談申し上げた。
先生は快く了承して下さり。
仕上がったナンバーに後付けで、ささやかな『餞別パート』を振付させて頂く。
振付し終わると、見守っていた月組生は皆、拍手。
暖かい場所だ。
長らく同じ釜の飯を喰って来た仲間達。
そんな仲間の退団を見送る連中の心中は如何ばかりであろうか?
いつも、そんな風に思う。
私は外部の人間ではあるが、こうした公演に立ち合う場合は極力、私なりの…
ささやかな『ありがとうの気持ち』を贈りたいなぁ…と思う。