なんで肘スリ? | Always with bike

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レーシングライダー渡辺一樹とバイクの記録



最近流行っているというか、マルケスに始まり多くのライダーが肘をする事が多くなっています。
去年は自分もそれまでに比べても肘をする事が増えて来ています。
ただ肘をする事自体に大きな意味や効果がある訳ではなさそうと言う事は以前ブログでも書きましたが、
このところ小排気量クラスでも(特に世界戦で)見かける事が増えているように思います。






なぜそんなにみんな肘をすり始めたのか?


なにか理由があるんだろうと漠然と考えていましたが、ふと去年の自分のライディングスタイルを変えたと言うところから『あぁもしかして?』と思った事があったので書いてみます。







まずは去年の自分がそれまでのスタイルからどうライディングスタイルを変えたのか?というところから。



去年の前半戦は、今まで通りと言ってしまうとアレなんですが…笑


自分は上半身・下半身ともにあまり左右に大きく動かすタイプではありません。
常にバイクのセンターから加重し、あくまで人間が中央からバイクを動かすイメージのライディングを維持していました。


それが昨年の後半、正確にはSUGO辺りから大きく方向性を変えていきました。

ただ、それはなにか「こういうライディングスタイルにしよう」という明確なイメージがあった訳ではなく、それまでのスタイルに限界を感じ「何か変えなければ」という焦りに近い思いから浮かび上がった苦肉の策という感じ。

後半戦に進むにつれて徐々に形になってきたそれは、気がつけば大きく上半身をイン側に落とすいわゆる「今時のスタイル」に近づいて行くものでした。

今も現在進行形で変化している自分のスタイルではありますが、
その中で思うのは今のこのスタイルが「たまたま」出来上がったものではなくて、そうせざるおえなくなったものなのではないか?という事。

「速く走るために必要なこと」を探して
、一つ一つ計算式を解いていったら「なんだみんなやってるヤツじゃん」と言う感じ。

肘をする事も、決してそれを目的として擦っている訳ではなく、一つ一つ改善を繰り返して行くうちにたどり付いた結果でしかないのかもしれません。




もちろんいつものごとく、ここでの話は推測の話でしかありません。
自分の頭の中で出来上がった「もしかして??」という可能性の話なので、これを鵜呑みにして自分の乗り方を変えるのは少し論点を踏み違えているかもしれません。

バイクの乗り方は人それぞれ感じている事も違えば、同じ事柄でも受け止め方でいくらでもバリエーションが生まれてしまいます。

結果的に同じ所にたどり着いていてもそこまでの道のりは人それぞれ違うもの。
道のりが違えばたどり着いた場所が同じでも見え方は全く別のものです。






さて本題の、「なんで肘スリ?」という話ですが

日々進化をし続けているレース専用タイヤ。

溝のないスリックタイヤは強烈なグリップを発揮し、またそのコントロール性が上がっているという話は以前もブログで触れた事がありましたが、
フロントタイヤが滑った時に今までなら「気がつけば転んでいた」というものから「あ。滑った」と気付ける一瞬があるというのはライダーの感覚的にすごく大きな差があります。

フロントタイヤの出来る仕事量が100だとして今までなら99を維持するのがライダーの仕事(もちろん限界を突き詰めるのが仕事ですが)だったのに対して、過渡特性の緩やかなタイヤであればもう一歩踏み込んで100を使い切るのがライダーの仕事になってきている。というようなイメージでしょうか。

100を超えた仕事を一時的に与えても一瞬は踏ん張ってくれるのであれば、その領域に踏み込む事に躊躇する事が減ってくるのは想像できますよね?


そうなればより積極的にフロントタイヤを使って行くようになるのが自然ななりゆきです。




そして再び昨年の話に戻りますが。

SUGOでライディングスタイルを変える上でマシンにある変更を加えてもらいました。
それは自分がワガママを言って取り付けてもらったもの。

それがこれ⬇




いわゆるストッパーとして多くのライダーが使っている物です。

実はストッパー自体は開幕戦の時点から付けてもらってはいました。
開幕戦の時に付けてもらってた物がこれ⬇




よくよくみないとその違いは分からないかもしれませんが、後半戦からの物の方は少しサイズが大きめになっています。



それはなぜかと言えば半強制的に「ライダーの着座位置を前にするため。」

色々と考えた末に「これが一番シンプルで大きくスタイルを変える方法だ」と思い、メカさんにお願いして作ってもらったもの。


結果この改良が「積極的にフロントタイヤを使う」事にもつながるわけですが・・・。



「前に乗る」というのは、前寄りに乗るという事ですが
そうすると当たり前ではありますが後ろは軽くなります。

後ろが軽くなるというのはパッと考えた時に「加速で滑りやすいんじゃないか」とか「ブレーキングでリアが浮きやすいんじゃないか」と思う方も多いと思います。



ここで簡単な足し算引き算を使って話をすると、

例えば進入でも立ち上がりでも前に乗る事でマイナスになったとしても、
前に乗る事でより短い時間で旋回を終わらせる事が出来たなら?

より長い時間をブレーキングや立ち上がりに使う事が出来ますよね?

となればブレーキングや立ち上がりでのマイナスをカバーしプラスにする事が出来るかも。


もちろん実際にはそんなに簡単な話ではありません。
ブレーキングでは出来るだけ後ろに乗って短い時間で減速を終えたいし、立ち上がりでは出来る限りトラクションをかけて速く加速したい。

「例えば」の話です笑



(前に乗る事がすべてのバイクで万能ではありませんが
この考え方はパワーのあるJSBのようなバイクでサーキットを走る場合、フロントが浮くのを抑えやすいというのもあります。)





そしてこの「前に乗る」という事が実は肘を擦る一つの要因なのではないかと思っています。






上の写真を見比べると分かりやすいかと思いますが、後ろに乗っている時(開幕戦時の写真)に比べて後半戦の写真は上半身が大きくイン側に落ちているのもありますが肘が大きく曲がっています。

そして前に乗る事によって腕のスペースが減り、自然と肘は膝よりも外側(イン側)へ開きます。
となると肘は地面に近づいて行きます。




結果こうなります。⬇




とはいきません笑






散々色々トライした結果ヒジを擦ってしまってるというのが自然な考え方ですが、
その色んなトライ、要因がある中で大きく3つ「これが理由なんじゃ?」と思っています。⬇




1. タイヤのグリップが上がりバンク角が深くなっている。(これが一番大きな要因)

2. 深くなったバンクでもグリップを100引き出すのに足りず、(もしくはこれ以上バンクを深くしないために)左右への体重移動が多くなっている。

3. サーキットを1周する中で直線部分(バイクを起こしている時間)を少しでも長くするために前に乗る。






3.に関しては「??」な人も居るかもしれないですが、
以前から自分はサーキットを速く走るためにはライダーの仕事量を出来る限り減らすのが一番いい方法だと考えています。

それはどのバイクでも同じで。
「小排気量でパワーがないからコーナーも速く走らなきゃ行けないんじゃないの?」
と思う人も居ると思いますが、それなら
「小排気量でパワーがないからこそ立ち上がりを重視しなければいけないのでは?」
と考え方を変えてみると良いかもしれません。


一番ライダーの仕事が少なくてタイムが縮まるのは直線です。
その直線を速く走る事が出来れば思いのほかタイムは縮まります。













・・・着地点を見失ったのでPart2へ持ち越そうかと思います笑(まとめられないです笑)






次は「じゃあなんで前に乗るねん?」という事を書きたいなー。
と思っているだけかもしれません。笑




更新は・・・いつになるやら?





でわ~^^