「みのもんたの朝ズバッ!」の大研究(2) モラルなき感情のコントロール | 西陣に住んでます

「みのもんたの朝ズバッ!」の大研究(2) モラルなき感情のコントロール

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TBSテレビの朝のニュースショウ「みのもんたの朝ズバッ!」の大研究の第2回目は、理由ではなく感情に訴えることによって視聴者の意思決定を導くという悪質なイモーショナルランゲージ(emotional language)の基本的手法について着目したいと思います。


[みのもんたの朝ズバッの大研究 総合案内]



まずは、イモーショナル・ランゲージの各種テクニックについて、今回も私の愛読書でもあるRobert J. Gula氏の名著"nonsense"の記述を基に示していきたいと思います。



恋の矢同情に訴える論証 appeal to pity
同情に訴える論証とは、理由に基づいて意思決定するように導くのではなく、聴き手の同情心を刺激して自論に導くもので、「かわいそうだから~して(しないで)あげよう」と考えさせる手法です。理由でなく同情心に訴えることは明らかな誤謬ですが、この論証に反論する人物は、多くの場合、ヒステリックな論者から不幸な市民の気持ちを踏みにじる極悪人のレッテルを貼られて不当に非難されることになります。罪がない社会的弱者を適正に援助することは重要ですが、そのことをもって、そのこととは本質的に無関係な事由の正否が評価されることはあってはならないことです。


恋の矢罪悪感に訴える論証 appeal to guilt
罪悪感に訴える論証とは、理由に基づいて意思決定するように導くのではなく、聴き手の罪悪感を刺激して自論に導くもので、「~する(しない)ことは罪深い。だから~する(しない)」と考えさせる手法です。多くの場合、一方的で過度に単純化された倫理観によって他人の感情のバランスを失わせるという民主党、共産党、社民党が多用する手法であり、しばしば論敵の人間性を不合理かつヒステリックに攻撃します。私達が罪を感じるべきしっかりした理由がない限り、この論証にはまったく価値がありません。巧妙な詐欺行為に近い手法と言えます。


恋の矢恐怖心に訴える論証 appeal to fear
恐怖心に訴える論証とは、理由に基づいて意思決定するように導くのではなく、聴き手の恐怖心を刺激して自論に導くもので、「~する(しない)と個人的に恐いから~しない(する)」と考えさせる手法です。聴き手の個人的不利益を不合理に示唆して、不利益が生じるリスクを回避させるものであり、暴力団の脅しはその典型です。


恋の矢希望に訴える論証 appeal to hope
希望に訴える論証とは、理由に基づいて意思決定するように導くのではなく、聴き手の希望を喚起して自論に導くもので、「~すれば(しなければ)、うまくいくかもしれない」と考えさせる手法です。期待値やリスクを十分に説明することなく、ギャンブルを煽るものと言えます。


恋の矢機嫌に訴える論証 appeal to flattery
機嫌に訴える論証とは、理由に基づいて意思決定するように導くのではなく、聴き手の機嫌をとって自論に導くもので、「あの人は感じが良い(悪い)から意見を支持する(しない)」と考えさせる手法です。


恋の矢ステイタスに訴える論証 appeal to status
ステイタスに訴える論証とは、理由に基づいて意思決定するように導くのではなく、論者の外見的なユニークさを見せつけて自論に導くもので、「あの人はルックスがいい(悪い)から意見を支持する(しない)」と考えさせる手法です。論者の所属・身なり(服装・宝飾品)・容姿によって聴き手の支持を得ようとする低次元なものです。


恋の矢情勢に訴える論証 appeal to the bandwagon
情勢に訴える論証とは、理由に基づいて意思決定するように導くのではなく、聴き手が所属するグループの大勢や時勢を基に自論に導くもので、「周りのみんなが支持している(いない)から~する(しない)」と考えさせる手法です。


恋の矢愛情に訴える論証 appeal to love
愛情に訴える論証とは、理由に基づいて意思決定するように導くのではなく、論者に対する愛情を喚起して自論に導くもので、「愛する人が支持している(いない)から~する(しない)」と考えさせる手法です。


恋の矢信用に訴える論証 appeal to trust
信用に訴える論証とは、理由に基づいて意思決定するように導くのではなく、論者に対する信用を喚起して自論に導くもので、「信頼している人が支持している(いない)から~する(しない)」と考えさせる手法です。鳩山首相の「トラスト・ミー」はこの論証方法のわかりやすい例です。まったく通じませんでしたけどね(笑)


恋の矢友情に訴える論証appeal to friendship
友情に訴える論証とは、理由に基づいて意思決定するように導くのではなく、論者に対する友情を喚起して自論に導くもので、「友達が支持している(いない)から~する(しない)」と考えさせる手法です。選挙の前になると、とある宗教法人に加入している知り合いからとある党に投票するようきまって電話がかかってくるのは、この論証方法のわかりやすい例です(笑)。


恋の矢プライドに訴える論証 appeal to pride or loyalty
プライドに訴える論証とは、理由に基づいて意思決定するように導くのではなく、聴き手の自尊心と忠誠心を刺激して自論に導くもので、「プライドがある人物ならば~する(しない)のが当然である」と考えさせる手法です。


恋の矢誠実に訴える論証 appeal to sincerity
誠実に訴える論証とは、理由に基づいて意思決定するように導くのではなく、論者の誠実さを見せつけることで自論に導くもので、「誠実な人が支持している(いない)から~する(しない)」と考えさせる手法です。


恋の矢大衆に訴える論証 argumentum ad populum
大衆に訴える論証とは、理由に基づいて意思決定するように導くのではなく、「世間の多くが支持している(いない)から~する(しない)」と考えさせる手法です。例えば、朝日新聞が非常に不明瞭な質問の世論調査を行って自社の主張に整合する世論調査結果を引き出した上でこれを報道して世間をミスリードしたと考えられる例が過去に多数報告されています。また、TBS関口宏のサンデーモーニングでは、制作者の意図に沿った街頭インタヴューばかりを多数放映する(世論調査結果と明らかに矛盾することが多い)と同時に極めて偏った思想のコメンテイターばかりを出演させ、世間の大方の意見があたかもそうであるかのようにして放送していると私は思っています。このような偏向報道の裏には、「みんながそう思っているんだったらそのことは正しい」とする大衆に訴える論証がベースとなっています。




以上、イモーショナル・ランゲージの各種テクニックを示しましたが、以降は「朝ズバッ」での会話のやり取りを見ながら具体的に各種テクニックの使用例を示していきたいと思います。なお、「朝ズバッ」では各社の新聞記事を参照してニュースを紹介する場合が多く、その場合にはタイトルに括弧をつけて示したいと思います。




メモ2013/04/11 汚染水すべて移送へ 地下貯水槽を断念

  (読売新聞)


みのもんた氏:あらためてね、福島の第一第二第三第四も含めまして、原発の問題が、あのエリアが、人の住めないところになるよってことをね、非常~に希薄に日本人はとらえてないかなって気がしてしょうがないんですけどね。金井さん、その辺もっとシビアにとらえないと・・・


金井辰樹氏:ホント僕もそう思います。しかもその状態が今回の汚染水のように他の地域に漏れていると、しかもそれに対するチェックが十分でなかったということは、本当に深刻な問題だと思いますね。2年以上たっているのにね。


北川正恭氏:これ風評被害だけでもね。だんだん住めなくなる一つの要素ですよね。


地下貯水槽から水が漏れたのは福島原発の敷地内であり、地盤内の浸透流はポテンシャルの高い方(山側)から低い方(海岸側)に流れるので、今後人が住む可能性がある原発の敷地外の陸部に流れるようなことは考えられません。後に漏洩量は総量で20リットルのみであったことが判明しましたが、ここで、仮に当初の推計値12万リットルが漏洩したとして浸透流の挙動を計算してみたいと思います。地盤の透水係数は大きく見積もって10^-3cm/s、動水勾配は最大で35/800であるので、ダルシーの法則から1年に移動する距離は最大でも約13mであり、800m先の海に流出するまでに最短でも約60年かかることになります。このような科学的事実の中で、科学的な専門知識をまったく持ちあわせているとは考えられない、みのもんた氏、金井辰樹氏、北川正恭氏の3人が、まさに風評被害を引き起こす報道をしています。同情に訴える論証・罪悪感に訴える論証・恐怖心に訴える論証を展開しているつもりなのでしょうけど、大前提すら成立しません。被災者にとって本当に有害な人達と言えます。



メモ2013/04/11 汚染水すべて移送へ 地下貯水槽を断念

  (読売新聞)


みのもんた氏:何だ今頃。(中略)小松さん、時すでに遅しって感じですよ。


小松成美氏:冒頭にみのさんがおっしゃった、今月この11日、2年1カ月が過ぎているわけですよね。それでもこういう状態が収まらない。あの広瀬社長が陳謝していらっしゃいましたけど、もう国でやらないと。で、安倍さんの行動力、指導力を持ってすれば、必ずできると思うんですね。今の政権でなら。なのでぜひ英知を集めて対応していただきたいと思います。


いつもそうなんですけど、この小松成美氏というコメンテイターは、そのコメント内容に必要となる知識をまったく持っていないばかりでなく、論理のかけらもないまったく無意味(futile, meaningless, irrelevant)なコメントをスキャットのように発し続けています。まさに典型的なB層と言えるかと思います。ここで、このようなコメントをするにあたっては、なぜ国でやらないといけないのか理由を述べるべきですし、「安倍首相の行動力、指導力を持ってすれば、必ずできると思う」ということの根拠を示すべきです。まさに、典型的な希望に訴える論証と言えるかと思います。



メモ2013/04/18 三宅島に続き宮城でも 石巻市などで震度5弱


ナレーター:火山活動との関係はないと言われる三宅島の群発地震。続いて起きた宮城県の地震。二つの地震には何か関連があるのでしょうか。不気味な連続地震は我々に一体何を警告しているのでしょうか。


みのもんた氏:この間の例の淡路島ね。まぁ三宅島でしょ。仙台の宮城の方でも。こういうのが日本列島の方でどっかんどっかんと起きているということは、なんかの前兆じゃないんですか?

専門家:たまたま今回時期が重なっただけで何かの前兆ってことはないと考えています。


みのもんた氏:だって先生、富士五湖だっけ、川口湖でしたっけ、水がどんどんどんどん無くなっているっていうんですけど。あれの影響も関係あるんじゃないんですか?原因分かってないんですか?わかってない?不安ですよね~。


東日本大震災以来、「想定外」という言葉を罪悪のシンボルとするような風潮があり、世の中に発生した自然現象を必要以上に関連付ける度を過ぎた報道が目立ちます。専門家の意見を軽視して、まるでノストラダムスの大予言のように視聴者に不安を与える様は、恐怖心に訴える論証の進化形と言えます。



メモ2013/04/19 三宅島海面変色で… 火山への影響は?


みのもんた氏:しかも今回宮城県沖だの、淡路島、そして三宅島でしょ。これは当然別々じゃないと考えた方がいいんでしょうか。


専門家:これは別々と考えた方がいいでしょう。

(中略)


みのもんた氏:小松左京さんが書いた小説だっけ。沈没日本。そういうこと考えられるんじゃないですか?

(中略)


井上アナウンサー:ちなみにこの3つの震源地を線で結んで三角形ができるんですけど、その中心部分に富士山があるようなことを言う人がいるんですが。

専門家:関係ないと思います。


アナウンサーまで病的な質問してますね(笑)



メモ2013/04/24 「尖閣」国有化後最多 中国船8隻が領海侵入


みのもんた氏:できますか、日本?(中国船を)排除?


逢坂ユリ氏:何としてもやっていただかないと、今後参院選も控えてますしね。あの韓国の新聞なんかをちょっと読んでますと、やっぱり今回の靖国のがあって中国はこういう動きをしたんだろうけれども、なぜこんなにたくさんの国会議員が168人も参拝したのかっていうと、やっぱり参院選が狙いじゃなかったのかっていうのが韓国の論説なんですけども。


逢坂ユリ氏という人は、たまに何を言っているのかまったく意味不明になります。なぜ、参院選が控えているから中国船を排除しなければならないのか全くわかりません。さらに、国会議員が168人も靖国神社に参拝したのも参院選が狙いで、そのために中国が領海を侵犯したと言う何だかわけのわからないことも付け加えています(笑)。罪悪感に訴える論証をしようとしたら、ミスっちゃったんでしょうかね(笑)。



メモ2013/04/26 軍創建記念日のきのう 10日ぶりに金正恩氏


吉川美代子氏:それにしても、この正恩って、この若さで、この若さで各国世界を相手に、これほどの大国を右往左往させるっていうのも反対に言うと、ちょっと実は凄いなって気もしないではないんですけども。


耳を疑いましたが、吉川美代子氏は、恐怖に訴える論証によって世界各国に大きな恐怖を与えていると同時に多くの罪のない人達を不幸にしている人物をテレビで絶賛しちゃいました。いちいち他人の言葉尻をとらえて不祥事と騒ぎ立てるTBSの方がこんなことを言うなんて、まさにダブルスタンダードで本当に信じられません。おそらく自民党の政治家が少しでもこんなことを言ったら、拉致被害者を巻き込んだ同情に訴える論証で大騒ぎするでしょうに・・・


(以下、(3)に続きます)