京都の気候変動を科学する
今日もめちゃくちゃ暑かったですね~(笑)!
この暑さは今がピークのようですが、
そんな猛暑の中、京都を囲む山々を観ると、
なぜか、「季節ハズレの紅葉」を観ることができます。
この紅葉、よく観ると、実際には紅葉ではなく、
ナラの木が枯れて葉が褐色に変わる「褐葉(かつよう)」なんです。
これは、今、全国的に問題となっているナラ枯れと呼ばれる現象です。
カシノナガキクイムシという虫が、ナラの木に穴をあけて菌を付け、
その影響によって木が水分を吸い上げることができなくなるため、
結果的に木が枯れてしまうという現象のようです。
↓枯れている木の下には粉が積もっています。
↓この虫が多分そのカシノナガキクイムシです。
この「ナラ枯れ」という現象は、新幹線に乗っていてもわかりますが、
今、全国で普通に観察される現象になってきているようです。
・・・で、この現象のファクターとして、しばしば関連付けられるのが
地球環境における諸悪の根源とされている地球温暖化現象です。
これは、本来は暖かい地域に生息するカシノナガキクイムシが
地球温暖化によって日本でも生息しやすくなったので
個体数が増えて猛威をふるうようになったとするものです。
但し、その因果関係は現在のところ、不明のようです。
さて・・・
こんなふうにして
事あるごとに環境破壊の原因とされている地球温暖化現象を含めて
京都の気候変動がどんな方向に向かっているのかについては
私も前々から気になっていたところです。
近年は、
「温暖化」「温暖化」と毎日のようにマスコミにすり込まれてますが、
(地デジのキャンペインみたいに・・・笑)
実際、例えば、京都が具体的にどれだけ温暖化しているかと言えば、
定量的に答えられる人はかなり少ないんじゃないかと思います。
その反面、
「24TWENTY-FOURを24時間で観る」[→過去記事]
なんて行為を働き、
電力エネルギーを一晩中使ったりしている私(笑)は、
温室効果ガスを大量に発生させるのに貢献し、
地球温暖化を推進してるのではと危惧しています(汗)。
そこで、
この機会に私が住んでいる京都の気候変動について
ちょっぴり科学的に分析してみたいと思い、
ブレインにアドヴァイスをもらいながらちょっくら分析してみました。
この記事では、その分析結果を紹介したいと思います。
京都の気温の変動
京都の気温変動を考える前に、まずは世界の気温変動の状況に
触れておきたいと思います。
これは、国際的専門家がつくる気候変動に関する政府間パネル(IPCC)
という組織の第4次評価報告書(AR4)に掲載されている図で、
まぁ信頼できるデータであることはマチガイないと思います。
これを見ると、平均気温の変化で顕著な温暖化が生じ始めるのは
今から100年以上前の1900年を過ぎたあたりからといえます。
ちなみに、
ワットが蒸気機関を発明したのが1780年頃、
エジソンが発電機を発明したのが1880年、
ライト兄弟が飛行に成功したのが1903年です。
世界全体では、だいたい100年で1℃少々の温度上昇が認められますが、
これは平均であって、場所によってその上昇度合は異なります。
そんな中で、気象庁発表のデータを使って
京都の平均気温の変化を調べてみたのが次の図です。
グラフ中の黒い線が年平均値の変動で、
赤い線と青い線がそれぞれ日最高気温と日最低気温の年平均の変動です。
このグラフをみると京都も確実に温暖化していることがわかります。
温度上昇は地球全体がそうであるように、
1900年過ぎくらいから顕著になっているみたいです。
それと、1日の最高気温と最低気温の差が縮まりつつあります。
で、100年のうちにどのくらい変化しているのかを
わかりやすく見たものが次の図です。
まず、変化傾向は1次関数的な(直線的な)伸びであることがわかり、
ここ100年に2.5℃くらい増えていることがわかります。
この伸びは、世界全体の2~3倍の値です。
ちなみに、世界全体の2~3倍というとかなり大きいように感じますが、
北半球の都市部では標準的な伸びといえます。
また、グラフ中にはトレンド(平均的傾向)を示す直線をプロットしています。
直線は、次の各データを使って最小二乗法により直線回帰して求めました。
紫色の線:現在から100年前までのデータ
赤色の線:現在から50年前のデータ
黄色の線:現在から25年前のデータ
各直線の傾きは、期間を通してだいたい同じくらいで、
最近急に伸び率が増えているわけではないことがわかります。
むしろ、黄色の直線はやや傾きが小さくなっています。
もっともバラツキが大きいので伸び率が減っているとまでは
言えないかと思います。
さて、
以下では、さらに詳しい時系列統計分析を行ってみたいと思います。
解析にあたっては、現在アカデミックな世界で多用されているという
オープンソースのフリーソフトウェアの[R言語] を使いました。
ここでは、年平均気温の変動に着目します。
まず、次の図は年平均気温の時系列変動を示したものです。
ここで、この時系列から温暖化によるトレンド成分を取り除いて
各年のバラツキを見てみたいと思います。
直線状(1次関数)のトレンド成分を取り除くには、
データ間の差分(前後のデータの差)をとればよいことが知られています。
具体的には次の図のようになります。
この時系列は、温暖化に関係しない「年によるバラツキ」を示すものです。
一般にこの時系列は、
周期的な変化(周期成分)と不規則な変化(ランダム成分)
を含んでいることになります。
このうち周期成分がどんなものであるかを知る方法としては、
自己相関分析があります。下の図はその自己相関分析結果です。
この図から言えることは、個々のデータは、
4年前のデータと同じような値(正の相関がある)になり、
1年前のデータや3年前のデータとは異なる値(負の相関がある)になり、
それ以外のデータにはあんまり関係しないということです。
私は、このうち4年前のデータと同じような値となる点については
エルニーニョがだいたい4年ごとに発生するという事実と
整合していると思います。
また、1年前のデータと異なる値になるという点については、
エルニーニョのすぐ後にラニーニャが発生するという事実と
整合していると思います。
この周期成分のうち、全体の時系列に対する影響が強い周期成分は、
スペクトル分析という分析によって確認することができます。
次の図はそのスペクトル分析の結果です。
図を見るとエルニーニョの発生周期に対応する
4年周期のピークがあることがわかります。
また4年周期の2倍の8年周期のピークも存在しているのも
興味深いところです。
ここで、京都の気温の時系列変化を
統計モデルでモデル化することにトライします。
統計モデルとしては、次式で定義されるARIMAモデルを用います。
このモデルは、自己回帰和分移動平均モデルと呼ばれるものです。
ウォール街の金融アナリストが株価の分析によく用いるもので、
いろいろな時系列変動をぼちぼち高い精度でモデル化できることが
知られています。
AICという指標を用いてモデルを選択して係数を算出したところ
次のような結果が得られました。
p=0, d=1, q=1 b1=-0.78
これが何を示しているかといいますと(笑)、
トレンド成分は1次関数で周期成分の影響は少なく、
ランダム成分の影響が大きいということです。
・・・というわけで、以上をまとめますと、
(1) 京都の気温は、0.025℃/年の速度で直線的に増加する傾向がある。
(2) 京都の気温変動には、4年周期で変化する成分が認められる。
(3) 各年の気温変動には、トレンド成分や周期成分の影響は少なく
ランダム成分の影響が大きく、その変動幅は3℃くらいある。
つまり平たく言えば、
「各年の気温は、温暖化や周期変動の影響を少しだけ受けているが、
その影響はかなり小さく、むしろ各年の不規則な要因に支配される」
ということです。
そして暑い日が続くという気温に関する異常気象には、
温暖化の影響はほとんどなく、
エルニーニョの発生が早まるなどの不規則な影響が強いといえます。
なお、近年では、
「猛暑日(日最高気温35℃以上)の日数が増加している」とか
「冬日(日最低気温0℃未満)の日数が減少している」とか
言われてそれが異常のごとく言われていますが、
これにはレトリックがあります。
「猛暑日」が増えて「冬日」が減っているのは
温暖化傾向があるんですから極めて当り前です。
昔の人が日最高気温35℃以上というしきい値で定義した「猛暑日」が
その分だけ増えるのは当然で別に驚くべきことではありません。
仮に「猛暑日」が日最高気温30℃以上というしきい値で定義されていれば
現在ではなく、過去に増加していたはずですし、
仮に「猛暑日」が日最高気温40℃以上というしきい値で定義されていれば
現在は「猛暑日」が増加していないことになります。
あくまでも人間が定義したしきい値で、
同じことを違う切り口で議論することはあまり意味がないと思います。
ちなみに猛暑と言われる今年の7月の気温も、
平均で見ればたいしたことなく、平年をわずかに上回るレベルです。
むしろ2000年代前半とか一昨年の2008年の方が全然へヴィーでした。
案外、苦しいことは忘れちゃうものということなのでしょう。
京都の降水量の変動
京都の降水量の変動に着目してみると、
100年にわたってわずかに減っている傾向にあります。
ARIMAモデルで分析すると、気温のモデルと同一の結論が得られます。
但し、7月の降水量を見ていると、なんと逆に増加しているのがわかります。
このことは、気象庁の出している次の結論と整合しています。
日降水量100mm 以上の日数が増えている。
異常少雨の出現数が増加している。
つまり、降水量については、
季節による降雨量のバラツキが増えているということです。
なお、今年の7月の降水量はかなりへヴィーでした。
降水量については今年は異常な年といってもいいかもしれません。
ただ、その異常のレベルも、天地がひっくりかえるような異常ではなく、
ごく普通に考えられる異常と言えます。
図を見れば、「異常」が起きるのが正常で
「異常」が起きないのは、むしろ異常であることがわかります(笑)。
問題はむしろ短時間におけるバラツキの増加(ゲリラ豪雨とか)
だと思います。
ゲリラ豪雨のメカニズムが科学的に明らかになって
早く効果的な対策が施されることを期待しています。
なお、「森林の保水能力を減少させたことが洪水が増えてることの原因」
と言うのは、科学的にほぼ否定されています。
例えばコチラ→[川辺川共同検証]
京都の相対湿度の変動
相対湿度も1900年過ぎくらいを境に単調減少しています。
ARIMAモデルで分析すると、
やはり気温や降水量と同一の結論が得られます。
気温が上がって、降水量が減って、湿度が下る傾向と言うのは、
砂漠化してるってことですね。
台風&竜巻発生数
これは京都のデータではなく、日本全国のデータですが、下図の通りです。
まず台風は、「発生数」「接近数」「上陸数」「強い台風の発生数」
のいずれにも増加している傾向は認められません。
また、温暖化で竜巻が増えているような印象報道がありますが、
全然増えていません。明らかなデマです(笑)。
詳しくはこちら→[気象庁:竜巻の年別の発生確認数]
・・・というわけで、あくまでも淡々と事実だけを書いてきました(笑)。
結論として、京都は確実に温暖化しています。
京都の雪とか、将来はますますレアになる可能性は高そうです。
それと、桜の開花時期が早まって紅葉の季節が遅くなるということは
当然、あり得ると思います。
ただし、それが顕在化するのは来年再来年の話ではなく、
比較的遠い将来の話です。
たとえ、来年、桜の開花時期が10日早まったとしても
それは地球温暖化の影響ではなく、気象のバラツキの影響です。
いずれにしても、多くのマスコミの皆さんが、
異常気象のたびに「地球温暖化による異常気象」と大合唱するのは、
ちょっとどうかなって思います。
例えば、気象に異常があるたびに、
サンデーモーニン○とか報道ステーショ○とかで
出演者のみなさんが深刻に眉間にしわをよせて
「最近、気象がおかしい」と発言しますが、よく考えれば笑っちゃいます。
これまで、100年以上も温暖化や低湿度化が続いているわけで
「最近、気象がおかしい」というのは明らかにおかしいです。
「最近も気象がおかしい」というのが正しいと思います。
もちろん100歳以上の人が「最近、気象がおかしい」というのは
リーズナブルだと思いますが・・・(笑)
そして、年平均の気象データのバラツキを考えれば、
「気象がおかしい」のが正常で
「気象がおかしくない」方がむしろ異常であることが
データを見ればわかると思います。
裏を返せば、出演者の皆さんが
「最近、気象がおかしい」と言い続けることができるのも
いつも異常であることの何よりの証拠です(笑)。
番組の視聴率を上げるためには、
いかにも正義の味方の出演者の皆さんが、
「人類のモラルハザードが原因」みたいな感じで世間を一喝して
番組を進行させる方が効果的なのでしょうけど、
ホントに温室効果ガスの発生を問題視するのであれば、
日本全体の電力消費に大きく貢献する「TV番組の放送」を
自粛すればいいことだと思います(笑)。
最後に、
地球温暖化とCO2などの温室効果ガスの増加との関連性については、
完全にはわかっていないようですが、関連してる可能性は高いようです。
また、いつか取り上げたいと思いますが、
地下貯留などの新技術なしに、日本国内で25%削減したら
日本企業は完全に海外企業との競争力をなくし、
とんでもない事態になると予測されています。
前総理は世界に約束しちゃいましたが・・・(汗)。
例えば、現在の日本の鉄鋼業界は
製造工程でCO2がめちゃくちゃ出るような製品を
他国が普通の製品を製造するよりもはるかに低いCO2発生レベルで
製造していて、これ以上もうどうにもならないといわれています。
ただ、こんな状況もアイデア次第で逆転できる可能性もあります。
もちろんそのブレイクスルーのポイントとなるのは
世界一を誇る日本の省エネ技術を世界に利用することだと思います。
ところで、今、[京の七夕]
というイベントの一環として
一条~御池まで堀川沿いでライトアップが行われています。
こんな夕涼みもいいですね。