実は有向線分の向きを決めるのはそれほど厄介ではない。有向線分ABがあれば、A,Bという順列を向きと定めればよい。しかし次になると困るのである。


「ベクトルaに対して、長さが等しく向きが逆のベクトルを-aと書く。」

ここでの「向き」は有向線分の向きだと考えてもよいわけで、まだ困っていない。

「ベクトルaに対して、長さが2倍で向きが同じベクトルを2aと書く。」

このあたりから少しずつ困ってくる。「長さが違っても向きが同じ」というのは、数学的に言って「向き」が何らかの同値類であることを示唆している。その上で

「二つのベクトルa,bが同じ向き、または逆の向きのばあいに、これらは平行であるという。」

ということになると、「向きが同じ」が「平行」の定義であることが要求されている。気持ち的は「向きが同じ」ことの定義を「平行」で行いたいのだ。なにしろユークリッド幾何では平行は公理化されている概念だから。


こんなことで悩むのがすごくバカらしいということは百も承知なのだが、スッキリしないことこの上ない。


(実は同じような理由で「偏角」という概念もキライなのだ!!)