$肩こりママさんのブログ



〈Play meets Music〉サイトウ・キネン・フェスティバル松本+まつもと市民芸術館共同制作「兵士の物語」 


日程:2013年  上演時間は1時間15分
   08月22日(木)19:00
   08月24日(土)14:00/18:00
   08月26日(月)19:00
   08月27日(火)14:00

会場:まつもと市民芸術館  実験劇場

音楽監督:小澤征爾

芸術監督・演出:串田和美

出演:石丸幹二(語り手) 
   首藤康之(兵士)
   ゲイレン・ジョン ストン(プリンセス) 
   白井晃(悪魔)

演奏:白井圭(Violin)
 谷口拓史(Contrabass)
 吉田誠(Clarinet) 
福士マリ子(Bassoon)
 只友佑季(Trumpet)
 今村岳志(Trombone) 
前田啓太(Percussion)





サイトウ・キネン・フェスティバル再々演にして新演出
(出演は兵士 プリンセス 悪魔がキャスト替え
 楽士はヴァイオリニスト替わられた)

私の観劇日は2日目の24日マチネとソワレ

石丸幹二さんが関わっておられる事でSKFでは三度目の観劇

お馴染み感のある松本

今年は先月の『空中キャバレー』(いや~ 楽しかったなあ 今 思い出しても!!)でも松本を訪れているので
~夏といえば松本!~はすっかり定着

そしてお蕎麦も!(笑)→今年も美味しいお蕎麦に出会えてしあわせ~
このお話は後日~(笑)

松本駅に降り立ち街の入り口に立つと出迎えてくれる小澤さん
(今年はオペラも指揮されて 友人がこの観劇翌日に小澤さん指揮のオペラを観て感激していた
 せっかくだ 
 私も一度は小澤さんの指揮を拝見しなくちゃ!)

$肩こりママさんのブログ



そして出迎えれくれる劇場 まつもと市民藝術館のこの流線美と
$肩こりママさんのブログ



看板と
$肩こりママさんのブログ



劇場を取り囲む水は今回も美しかった
これでこそ この劇場!
$肩こりママさんのブログ



そしてお馴染みのこのエントランス
$肩こりママさんのブログ



誰にも優しい 長い動く歩道



何度訪れてもゆったりとしていて採光がとても素敵!
$肩こりママさんのブログ



この故郷へ帰ってきたような温かさと懐の深さと共存する 異空間へ誘われる感がたまらない



$肩こりママさんのブログ




そしてどのような演出でも普遍的なこの音楽
ストラヴィンスキーの独特の変拍子『兵士の物語』

Suite Histoire du soldat, Igor Stravinsky - Part 1/4




物語の主題やあらすじ等 そして初演&再演の演出等については過去に書き留めているので
【My過去blog】
サイトウ・キネン・フェスティバル松本2012 『兵士の物語』2012.8.5マチネ&ソワレ

今回は今までと違った点とその印象について書き留めておこう

今回の演出は上演会場である「まつもと市民芸術館」の芸術監督でもある串田和美さん
そう昨年までこの作品で「悪魔役」をされていた串田さん

演出が変わるとこうも印象が変わるものなのか

昨年迄のものを観ていないと作品そのものから受けるメッセージ迄違ってきそうだ

例えて言うなら
串田作品の『十二夜』と『空中キャバレー』の演出にある世界観か?

『兵士の物語」というよりも「串田作品」になった感
『兵士の物語』の寓意はどこかにいってしまったようだ…


開場後10分程経過するといわゆるロビーパフォーマンスが始まる

客席入口に設営された仮設ミニシアター
背景にはキャストボード
この芝居小屋における本日の出演者の扮装写真が掲載されている
(なんと 楽士達もそれはそれは愉快な紛争姿で!
 凄いなあ クラシックを演奏される楽士たちも出演者にしてしまうのはこれまでの演出でもだったけれど
 ここまでの扮装!!)

内藤栄一さんを始め4人(串田組=「TCアルプ」のメンバー)による小屋への呼び込みが始まる

仮面(これは10月にまつもと市民芸術館で上演予定の『スカパン』を意識?)を着けた内藤さんとオクタゴンさん(近藤準さん)が漫談よろしくこの作品や楽士や
ホワイエにも広告されている次回作品『スカパン』の紹介をしていく

楽士たちが奏でるメロディーは…

ん?
これって『空中キャバレー』のあの誘い&お見送りのメロディー?
いやいや あれはcobaさん作曲だったはず

今回の曲はコントラバス・谷口拓史さん作曲だとか
(時折ストラヴィンスキーのメロディが入るけど…)


総して 

私達観客はある芝居小屋(架空の大通りプールバールと説明してはった→パリのグラン・ブールバール?)で上演される芝居を観る

上演されるのは少々 古(いにしえ)の異国のお伽噺

一座人気の演目『兵士の物語』

このパフォーマンスによって私達は観客席に誘われる


というシチュエーション

そうして ようやく客席にいざなわれる

舞台はお伽話が上演されるような芝居小屋風プロセニアムアーチ
劇場in劇場といったことろか

楽士達が見える(笑)オーケストラピットがありそのオケピを囲むように銀橋がある

下手には「風」と表示された風音作製機(ウインドマシーン)が設置され
上手にはのちに「雷」音を出す鉄板(サンダーシート)が下がっている

このシチュエーション
R.シュトラウス作曲『アルプス交響曲』の嵐の場面!?と連想する

この舞台
主たる登場人物は「語り手」「兵士」「王女」「悪魔」の4人なのだけれど

今回の舞台には「影」である登場人物が居る
先程のロビパフォをされていた内藤さんをはじめとする4人

時に小川のせせらぎ
時に鳥の鳴き声
時に雷鳴
時に影
時に小川のゆらめきやきらめきを劇場に映し出し送り出す俳優さん達が居る

その影とは影絵のようでいて影絵ではない
バックでは違った動きをする別の人物が居る
それはあの世とこの世?
異次元をしめすものなのかもしれない

そうあのシーンと
兵士が悪魔に魂を売ってしまい3日間を過ごしたと思った3年間
あの時空を超える時の演出は良かったなあ

薄暗い照明の中 薄く白い布が揺らめく中
その背後で馬車は時空を超える
その背後で兵士は歩いている
悪魔に解き放たれて村に戻るのあの時だ
その歩く姿は揺らめき 歪み 時空を超えている感覚が伝わってくる
怖ろしい感覚だ
その後の人生を示唆しているともいえる

そして兵士と語り手が銀橋のセンターで背中合わせになり掛け合うシーン
「何だって持っている」

「何にも持っていない
 誰にでも与えられる幸せ
 誰もが持っている幸せ
 君が手放したしあわせ…」


あの場面も非常に良かった
言葉(主題の重み)が伝わってくる瞬間だった


さて
7人の素晴らしい(扮装した 笑)楽士と7人の演者によって繰り広げられるこの芝居

その中で石丸さん演じる「語り手」は「一座の弁士」といった役回り

そのいでたちは
白塗り化粧にお髭をたくわえて
シェフハットのようなかなり高さのあるクラウンハットを被り(あれは山高帽ではありません ね 高野虎一さんに叱られますね 笑)
ゴールドに近いベージュに黄土色を混ぜたような色合いの燕尾服
白手袋
白いシャツの襟を高くしてスカーフを巻いて

芝居(物語)は弁士(石丸さんの語り手)の口上で始まりを告げる

語り手は銀橋を上手に下手に
またたは銀橋の中央で椅子に腰かけ
少しのアクションを入れながら(時に役者と舞台で踊る事もある 笑)
一座の作品を語る

一座が演じている時にはも休憩している弁士を演じ続けているというふう
下手にセットされたテーブル&椅子に腰かけ
セットされたお茶を飲みながら
時に汗をぬぐったりお化粧直しをする

舞台はまさに芝居小屋の芝居といった様子

村の風景や人物を表すセットも
前記の音響も空間も手作り感を意図して演出され小屋感を醸し出している

(私的には内藤栄一さんが鳥の鳴き声を送り出している球が非常にツボ!
 彼がまとっているあの透明感ってどこから出てくるのだろう
 本当に素敵な雰囲気の方だなあと再確認!)



ラストは昨年&一昨年のあの劇場空間を使った息をのむような壮大さと恐ろしさは無い

紅く燃える夕暮に悪魔のしもべとしてがっくりと肩を落として引きずられるように歩く兵士が影絵として映し出されるといった趣向

この演出ならあの劇場でなくても全国どの劇場でも上演可能だろう


カーテンコールでは石丸さんにいざなわれるようにして演出家の串田さんも舞台上へ
そしてまた舞台上では上演前のあのメロディが奏でられ
串田ワールド(お祭り騒ぎ)のような雰囲気が再現される

このカーテンコールの祝祭感は 白井悪魔さんを筆頭に空間には乗りきり感が少なく
ちょっと無理があったかな…
(無くてもよかった盛り上げ感ともいえるかな)

今回の演出は…
この『兵士の物語』の主題を用いて言うなれば

~やりたい事はひとつ!
 あれもこれもをひとつの作品に取り入れようとすると
 物語の大切な主題が何も見えてこなくなる
 たくさんあるのは無いのと同じ~




かなり潤色感の強い『十二夜』でも充分 私の中ではありだった
『空中キャバレー』の世界観はいうまでもなく最高!!

しかしそのどちらも取り入れてしまった串田版『兵士の物語』は…
何でもかんでもありすぎで寓話感は少ない

全てを語りつくしてしまう事や 視覚的に全てを見せてしまうので
観客の対象年齢の下限は下がったかもしれない
お子様やお孫さんを連れての観劇にはよろしいか
もしくは串田作品を観ていない
もしくはこの作品を初めて観劇する方には大変わかりやすく面白いかも

今回 どう演出されるのかが非常に興味深く 作品全体を観ていて 石丸さんをあまり見ていなかったので…
多分 石丸さんをよ~く観察している観劇だったら
それはそれでポイントもあって面白かったのかな


この作品
どんなに演出が変わってもストラヴィンスキーの音楽は変わらない
一流の楽士達による演奏はそれは楽しく素晴らしい

そして今回の演出ではとにかくバレエが美しかった
病に伏す王女を助け出す事が出来たなら~のあの場面での首藤さん&ゲイレン・ジョンストンさんのバレエシーンは限りなく美しかった~
そしてその美しいバレエのシーンはあっという間だった
もっと もっと見ていたかったなあ

首藤さんはバレエ以外のシーンではごくありふれた雰囲気なのに
何故にああもバレエになると美しいのか
(TVにご出演「らららクラシック」等で拝見している時の
 台詞ではない普段のお喋りの雰囲気もとても素敵な印象 
 確かあの時は『牧神の午後』のご紹介されていたと記憶する)
 
 バレエ好きな友人は「首藤さんが喋る(台詞を言う)なんて~」
 と感動していた 笑 
 
 私はまさか あそこまでのバレエを見せて下さるとは思っておらず
 いやあ 思い出しても溜息が出る程に美しいシーンだったなあ)

バレエのシーンでは照明も明るく美しく演出されていて
あのバレエの空間と伝わるメッセージは素晴らしかった

美しいバレエを観られて
美しい生演奏を聴く事が出来て
わかりやすい舞台美術と役者さん達による効果音等を感じる事の出来る
舞台や作品の作り方や在り方 舞台というものの面白さや楽しさを知るという
老若男女(特にお子様への作品鑑賞導入には良い作品になった)向けの串田作品

そう捉えると 素晴らしい作品だったと思う

この作品も『空中キャバレー』に引き続き小さなお子様や孫を連れていくには良い作品だろう

私の感じている白井演出とは両極端な印象
白井演出がとても好きな私には
白井さんがこの演出をどう感じているかが非常に気になった
まあ 今回は役者さんとしてご出演だったので…
俳優としての白井さんは(う~ん あの 悪魔だったからかな…)TVでしか拝見した事がないのだけれど
ちょっと危ない感のあるボーダーラインの感情を表現されると素晴らしい俳優さんと捉えていたので…

白井さんは 是非 演出で堪能したいものだ
(私の中では『GOLD』と『イノック・アーデン』は傑作なので!!
 どちらも 特に『イノック・アーデン』は再演を熱望する!!!)

白井さんがこの作品を演出するならどのようなものになるのだろう
来年は白井版?
今年はその伏線?
いや それはないだろうな

この作品
演出を変えても変わらないのはストラヴィンスキーの音楽
7人の楽士達が生演奏するこの独特の変拍子の音楽だけは普遍的
それに今年は美しいバレエが加えられて素晴らしかった!

来年はどのような『兵士の物語』を観る事が出来るのか
松本の街と美しい水と蕎麦と共に(笑)
楽しみにしておこう