日本経済新聞より転載


 「放置自転車の解消に貢献したい」。森ビルは東京・銀座の複合再開発で400台の駐輪場を整備する。J・フロントリテイリングなどと松坂屋銀座店跡地に開発する銀座最大級の商業施設が2016年11月に開業する。湾岸部などから自転車で買い物に来る消費者の利便性を高める狙いだ。


乗降客が増えた勝どき駅は改良工事が進む(東京都中央区)
 地価の高い都心で大型駐輪場を設ける動きが広がっている。三菱地所も大手町で16年4月に完成するビルに700台分を用意する。

 放置自転車の問題は深刻だ。東京都によると、東京駅の放置自転車数は都内の駅で5番目(13年度)に多い。背景の一つが、湾岸マンションなど都心居住の増加だ。中央区の人口は13万人を超え、ほぼ半世紀ぶりの高水準。都営地下鉄大江戸線の勝どき駅では乗降客が増え、改良工事が進む。

 五輪開催もあり今後は交通インフラ整備が進む。幹線道路の環状2号(環2)新橋―豊洲間は16年に開通する。中央区は道路に専用レーンを設け連結型のバスを走らせるバス高速輸送システムを検討している。都の新交通「ゆりかもめ」の延伸計画もある。

 だが環2以外はまだ計画段階であり、不動産会社自らが対策に動き始めた。三菱地所は3月に完成した晴海の大型物件で、住民専用のバスを5月から運行する。湾岸から銀座、日本橋を巡る。利便性を向上し物件の魅力を高める。

 湾岸ブームの裏側で、急速な人口増加に耐えられないインフラが悲鳴を上げている。湾岸物件の購入者は30~40代の子育て世代が中心。小中学校の需要も高まるが、数十年先の人口構成を考えると学校新設には慎重にならざるを得ない。住みやすい街づくりへ官民挙げた取り組みが欠かせなくなってきた。

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※4月5日朝刊より