kawanobu日記/アイスランド噴火により「日傘効果」はあるのか:ピナツボ山、地球工学、天明の大飢饉、明治維新 画像1

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 14日に爆発したアイスランドのエイヤフィヤトラヨークトル氷河の下の火山の噴煙は、ヨーロッパ中に広がり、一時、主要ハブ空港が閉鎖され、航空網が大混乱を来した。1昨日あたりから一部、運行を再開しつつあり、22日までには通常運行に戻る予定というが、人と物の輸送に大きな支障が生じている。
 氷河の下に隠れていたので、名前は付いていないようだ。未知の火山によって世界中の人と物の流れが大混乱させられていることは、地球という存在の大きさを痛感させられる。奢っていても人は、地球の前にはやはり無力な存在である(写真は、噴煙を上げる火山とヨーロッパを覆うように流れる火山灰の帯)。

EU官僚の保身主義では
 今にして思えば皮肉な惨事だったが、航空機事故で殉職したポーランドのカチンスキ大統領の18日の国葬にオバマ大統領など各国首脳が出席できなかったし、ドイツのメルケル首相も、一時、ポルトガルで足止めをくった。ドバイに出来た世界一の超高層ビル「ブルジュ・ハリファ」(828メートル)の高級ホテルの開業も延期された。イタリアから参加予定だった、ホテルをデザインした著名なデザイナーのジョルジオ・アルマーニ氏が出席できなかったからである。
 アフリカからヨーロッパへの花卉や農産物も大量に腐った。
 氷河の下の火山は今も噴煙を上げているので、このままでは夏のバカンスシーズンを迎える観光産業が大被害を受け、EUの成長率は1~2%も押し下げられる恐れもあったという。金融危機に次ぐこの災厄は、どうやら回避されそうだ。しかし航空会社には、多大な損失を与えた。
 それにしてもEU当局の保身主義も、呆れたものである。各航空会社は、試験機を飛ばして、一定の高度では影響のないことを確かめているのに、全面閉鎖とは。このあたり、豚インフルエンザで空騒ぎした体質とも、どこかでつながるのではないか。ギリシャ国債問題から、EUの対応は限界を感じさせられているが、かつてのEUを理想化する論議は、ブリュッセルのEU官僚の保身主義であちこちでボロが出ている
 今回の爆発で吹き上げられた火山灰総量は、14日の発生から3日間の累計で0.14立方キロでしかない。これが91年のフィリピンのピナツボ山の大噴火では5~10立方キロにも達した。それからすれば、もっと早めに試験飛行をして、安全を確認した上で航空網の再開を促すべきだったのではないか。

エアロゾルが生む「日傘効果」
 ただ、火山灰総量は少ないが、成層圏にまで吹き上げられたであろう噴煙の中に含まれる二酸化硫黄の影響の方が心配である。二酸化硫黄は、成層圏でエアロゾルを生成し、これが地球にすっぽり日傘を被せた効果を生むからだ。実際に、ピナツボ山の爆発では全地球的に1℃近く気温低下したとされる。逆にこの「日傘効果」を利用して、地球温暖化を防ごうという地球工学という構想もあるほどだ。
 さらに同じアイスランドで1783年に爆発した「ラキ噴火」では、北半球の平均気温が2℃低下したとされる。これは、遠い日本にも影響をもたらし、江戸時代の「天明の大飢饉」の原因の1つになった可能性がある。この飢饉は、江戸時代中期の1782年(天明2年)から1788年(天明8年)にかけて発生した大飢饉で、日本の近世史上では最大の飢饉と言われる。

明治維新に影響を与えた?
 この大飢饉は、東日本の稲作が壊滅的大被害を受けたことによって起こった。
 ただ江戸時代の名君と尊敬される米沢藩の上杉鷹山は、かねてから倹約に努めていたので、藩主自らが粥をすすって、この大飢饉を乗り切った。しかしその覚悟のなかった東国諸藩は、多数の餓死者を出した。この影響で当時の日本人口は、100万人近い減少を来した。
 余談ながらこの時、西日本の諸藩への影響は軽微だった。中でも、かねてから新田開発に努め、実質100万石規模に藩勢を拡大させていた長州藩と、琉球の砂糖生産の独占で巨利を得ていた薩摩藩は、諸藩を圧倒する力を蓄えた。それが明治維新につながったのだとすれば、日本史はアイスランドの火山噴火が影響を与えたことになる
 それはさておき、今後、噴火が小康状態になれば、全世界的「冷夏」は回避できるが、さらに拡大していくと、前記過去日記で書いたような地球工学的作用で、また「涼しい夏」になるかもしれない。
 それを、注視しておく必要がある。

昨年の今日の日記:「アメリカ国立公園の旅、番外編:2つの空港での長い列にヘトヘト」http://ameblo.jp/kawai-n1/entry-10246317212.html