○川田龍平君 維新の党の川田龍平です。
 総理は、四月の予算委員会で、日本の医療について、国際的には相対的に中位の医療費で世界最高レベルの健康寿命を達成しており、世界に冠たるこの国民皆保険制度をしっかりと次の世代に引き渡していきたいと答弁いただきました。本当にうれしく、これについてはお礼を申し上げます。
 しかし、総理はこの国民皆保険制度が今危機に瀕しているということを御存じでしょうか。もちろん知っていると思いますが、財政難による危機ではなく、混合診療の全面解禁によってお金のある人しか医療を受けられなくなるという公平性の危機です。
 総理は、患者申出療養は保険収載に向けた仕組みと答弁しましたが、法案には保険収載を目指すと明確には書かれておらず、皆保険に風穴を空けるきっかけにならないか、とても患者として不安です。患者申出療養は例外であって、必要な医療はこれからも保険診療で行われるとはっきり答弁いただきたいと思いますが、総理、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 我が国では、国民皆保険の理念の下、必要かつ適切な医療は基本的に保健給付の対象とすることとしています。その上で、患者申出療養については、今回の法案において、給付の対象とすべきか否か評価を行うものとして位置付け、将来的な保険収載を目指すものとしています。
 具体的には、保険収載に向けたロードマップの作成等を医療機関に求めることとし、また、保険収載に向けた状況等を把握するため、医療機関から国に対し少なくとも年に一回は患者申出療養の実施状況等を報告することとしています。さらに、ロードマップどおりに進んでいない場合は追加的に報告を求めるほか、必要に応じて患者申出療養から除外することも含めて対応することとしております。
 このような仕組みを通じ保険収載に必要な科学的根拠を集積し、安全性、有効性の確認を経た上で保険適用につなげることにより、広く国民が医療保険制度の中で先進的な医療を受けられるようにしていきたいと考えております。

○川田龍平君 総理は、国民皆保険制度において疾病リスクの少ない加入者の保険料を安くすることについて、賛成ですか、反対ですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 我が国の国民皆保険制度では、国民皆保険の中で相互扶助の理念の下、疾病リスクにかかわらず誰もが必要な医療を受けられることを原則としています。このため、疾病リスクにより保険料に差を設けることは結果としてリスクの高い方が保障を受けにくくなるおそれがあり、適当ではないと考えています。
 一方、少子高齢化の下、国民一人一人ができる限り長く健康に暮らせる社会をつくり、また、医療保険制度を持続可能なものとしていくため、予防や健康づくりを積極的に進めていくことは重要な課題と認識をしています。
 このため、今回の改革では、予防、健康づくりを幅広く進めていくこととしており、その中で個人のインセンティブを強化するため、保険者が加入者にヘルスケアポイントを付与するなど工夫を凝らした取組を更に進めていくこととしております。
 しかし、それは先ほど申し上げましたように、リスクの高い方が保障を受けにくくなるおそれがあるようなことになってはならないということは、もちろんこれは基本的な考え方であるということは繰り返し申し上げておきたいと思います。

○川田龍平君 しっかり理解していただけて、ありがとうございます。
 今回の法案では、予防、健康づくりの取組に応じて加入者に現金給付するとのことですが、これは実質的に保険料の値引きであり、民間保険商品と同じ発想です。
 生存権を保障した憲法二十五条に基づく社会保険の基本原則を破壊し、国民皆保険が民間保険化するとの批判をどう受け止めますでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 受診をしないということでポイントを与えるようなことはないというふうに我々は考えておりまして、むしろポジティブなインセンティブになるように考えるというのが私たちの考え方の基本だというふうに思います。

○川田龍平君 総理に聞きたいのは、生存権を保障した憲法二十五条に基づく社会保障の基本原則を破壊し、国民皆保険が民間保険化するとの批判をどう受け止めますか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほど私が申し上げましたのは、言わば自分でちゃんと健康管理をして生活習慣病にもならないように努力している人たちに対して、そういう努力を続けていくと何かいいことがあるなというインセンティブとして考えていくのは当然のことだろうと思いますが、言わばこの医療保険の基本設計として、そもそも病気、疾病にならない人の保険料が安くなっていく、あるいはまた、逆に疾病が繰り返される方については、民間保険がそうですが、保険料が高くなっていくという、そういう設計にはしていかないというのは、これは当然のことであろうと思います。

 

○川田龍平君 この臨床研究の実施に当たっては、次の質問ですが、国際水準の医療技術開発を推進と、総理の答弁に加え、塩崎大臣からは、患者申出療養は基本的に臨床研究として行われると先日の委員会で答弁があったわけですが、そうすると、患者申出療養は、定められた期間内にこの認定倫理審査委員会の審査を受けて行われ、また国際水準、つまりICH―GCPにのっとった臨床研究として行われるということで理解してよろしいかどうか、総理、お願いします。

○国務大臣(塩崎恭久君) やや細かなことも含まれておりますので私の方から答弁いたしますが、この患者申出療養は、実施計画の作成などをまず医療機関に求めるということが基本でありまして、基本的に疾病の治療方法の改善等を目的として計画的に行う臨床研究としてこれは実施されるものだと。この場合には、患者申出療養は、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針、この指針に沿った対応となるわけでございまして、倫理審査委員会による実施計画の審査や参加に当たってのインフォームド・コンセントなど、今お話のございましたICH―GCPに準拠した手続を行うということとなると考えております。

○川田龍平君 そのようにやっていただかなければ、この患者申出療養における安全性の確保というのはできません。このことについては午後も引き続き大臣と質疑させていただきたいと思いますが。
 次に、いわゆる群大病院、群馬大学病院の事件について、難度の高い医療技術の導入プロセスについて検討を進めると本会議で総理に答弁をいただきました。ヨーロッパでは、フランスのほかにも、厚労省が把握していないところで、オランダ、デンマーク、スウェーデンなどにも外科手技の研究に適用する法律があると聞いていますし、またインド、韓国、台湾にもそのような法律があるようです。
 検討に当たっては、厚労省がこれまで知っている限られた情報だけで判断をせず、国際的な動向も視野に入れた上で行っていただきたいと思いますが、総理、いかがでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 群馬大学の病院における腹腔鏡手術における死亡事故などで、大学附属病院等において重大な医療安全管理上の問題が発生したということを踏まえて、私ども、厚労省内に今タスクフォースをつくって、大きな病院に、大学病院を始めとするところに入って検査をしているわけでありますが、厚生労働省としては、この特定機能病院での難度の高い医療技術の導入プロセスなどについて今申し上げたタスクフォースにおいて検討を進めているわけでございまして、その際には、米国やそれからEU各国の規制状況とか国際的な動向をできる限り把握した上で検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

○川田龍平君 総理、群大病院事件、それからディオバン事件、さらには病気腎移植であるとか代理母の問題を考えると、薬の臨床試験は承認申請目的のものにも限らず薬機法で規制する、そのほかの人を対象とする研究は被験者保護法や生命倫理法といった法令で規制するという、こういった国際的にスタンダードであるという制度設計を目指すべきだと、日本もそうするべきだと考えますが、アジア諸国、それからアフリカの諸国においても、治験以外の薬の臨床試験も薬事法制下で実施をされています。
 このままでは、日本は医学研究の法制においてガラパゴス化してしまうおそれがあると考えていますが、総理の見解を伺います。総理、いかがでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) やや細かいものですからちょっと私の方から答えますが、御指摘のとおり、欧米においては医薬品それから医療機器において治験と臨床研究は同じ法律の中で規制をされておって、また、その他の人を対象とする研究については国によって法規制を行っている場合もあるというふうに理解をしております。
 我が国は、治験は、医薬品等を製造、販売しようとする企業がその有効性や安全性を証明するデータを集めるために行うものであるため、医薬品医療機器法において規制をされている一方で、臨床研究は医学的課題を解決するために人を対象に行う医学系研究でその内容も様々なものでございまして、学問の自由への配慮も求められることから、倫理指針による対応をしてまいったところでございます。
 法制度の在り方は、歴史や規制に対する考え方などを背景として、それぞれの国でそれぞれの形があるわけでございますが、それぞれの国における適切な判断が必要だというふうに思っておりまして、臨床研究の在り方について、我が国の臨床研究に対する信頼を回復、確保する観点は重要であることは、もう先生からの御指摘が重ねてありますが、そのとおりであって、法制化に向けて今、厚労省の中で検討をしているわけでございまして、その中で規制の枠組みについてしっかりと検討してまいりたいというふうに思います。

○川田龍平君 この九大、九州大学でかつて行われた人体実験について総理に本会議で質問したところ、九州大学の認定のとおりであったとすれば極めて遺憾と答弁されました。九州大学の当事者の証言も明確にした上で史実として認めているのですから、あったとすればではなく、政府としても認めるべきではないでしょうか。アメリカでは、一九四〇年代に特にグアテマラで行われた人体実験について、二〇一〇年に大統領が政府として謝罪し、国内の臨床試験を含む幅広い被験者保護法制の改革を現在行っていることを御存じでしょうか。
 総理はまた、この九州大学の件と現在の臨床研究は全く異なる次元のものと答弁もされましたが、一体どういうことなのか。そういったことを知っているかどうかも含めて説明をください。よろしくお願いします。

○国務大臣(塩崎恭久君) ややまたいろいろ詳細がございますので私の方から答えたいと思いますが、本事案については、この参議院の厚労委員会で私も五月十二日に答弁をいたしましたが、九州大学が事案発生から長期間たって資料としてまとめたものでございまして、九州大学の認識のとおりであれば極めて遺憾だというふうに思っております。
 米国では、グアテマラの事案については多くの倫理上の違反があったとされておりまして、また、厚生労働科学研究班の報告書において、臨床研究の被験者保護に関するルールの改定に向けた検討がなされているとの報告があると承知をしておりまして、御指摘の九州大学の事案、これについては、戦時中に行われたとされる事案であって、現在、倫理指針の下で実施される臨床研究とは比較できないものであることから異なる次元というふうに申し上げたところでございます。
 政府としては、今後とも、臨床研究の実施に当たっては、研究者等に対し、倫理指針の意義について十分な理解を求めることを通じて被験者保護を徹底してまいりたいというふうに思います。

○川田龍平君 時間的に最後になりますので総理に聞きたいんですけれども、先日、文科省の調査で、学用患者という会計費目を持っている国立大学病院がまだ十六もあることが分かりました。この第二次世界大戦の関東軍七三一部隊がマルタと呼んだ時代と変わらず、医学発展のための材料として学用患者として扱う風潮がこの国の医学界に依然としてまだあります。そして、その結果、日本は世界の周回遅れの臨床研究、研究倫理、さらには医の倫理の状況が放置され、研究と臨床の区別も自覚できずに様々な事件、事故を引き起こし続けていると私は考えています。
 この七十年目の節目、戦後七十年の節目に、是非この戦時中の医学界の犯罪について徹底した検証と反省をしていただきたいと思いますが、総理、これ最後の質問ですので、いかがでしょうか。総理、よろしくお願いします。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 質問通告が来ておりませんので……

○川田龍平君 いや、しています。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) いや、私のところには来ておりませんから、事前に私もつまびらかに承知をしておりません。
 その上で、今、九大における事象について大臣が答弁したわけでございますが、政府としては、今後とも、臨床研究の実施に当たっては、研究者等に対し倫理指針の意義について十分な理解を求めるなど、被験者保護を徹底していく考えでございます。

○川田龍平君 はい。
 総理は今回の質疑に関して、やっぱり是非、この患者申出療養もそうですし、機能性表示食品についても総理がやるということで始まっている制度ですけれども、これも大変不十分な検討のままこういった制度自体が進んでしまって、六月から発売される機能性表示食品についても安全性の確保が疑わしい商品が販売されかねない状況になっております。
 質問の時間がなくなってしまいましたのでまとめますが、本当にアメリカでもこういった事例によって健康被害、死亡事例も起きて、こういった成長率に寄与するという制度が結果として成長率も急激に落ち込んでいるという二十年前の事件があったわけです。そういった反省を踏まえた上でやっているならまだしも、こういった安全性やそしてしっかりとした有効性も審査されないままこういった制度だけが先走ってしまう、そのことを大変危機感を持っております。そして、日本の国民皆保険制度がこの患者申出療養によってないがしろに、この混合診療の全面解禁によって……

○川田龍平君 この国民皆保険制度がなくなるようなことに絶対にならないように、総理に患者としてしっかり訴えて、最後、終わらせていただきます。
 ありがとうございました。