第三十九章
「 兎丸無念 」
元・海賊の棟梁、兎丸・・・。
清盛とともに「おもしろい世をつくろう」と
手を組んだ若き日々・・・。
その思いも、少しずつ少しずつずれてゆく・・・。
「 ちょっと、やりすぎと ちゃうか 」
禿（かむろ）を放ち、
平家の悪口を言うやつは、かったぱしから捕え、
「平家にあらずんば、人にあらず」
という言葉を知らしめた、平時忠の京での政策・・・。
あんなふうに、子どもたちを使っては、
あの子たちのためにならない、と主張する兎丸・・・。
それ以上に、「自分の国づくりが大事」と、清盛・・・。
「おまえのやっとることは、盗賊とおんなじや！」
相容れぬ意見の食い違い・・・。
確執・・・。
「おれたちのやっとることは、民のためやなかったんか・・・」
「のし上がりたいためだけのヤツに俺はついてきたんか・・・」
落胆が隠せない・・・。
そして、
皮肉にも、かばった禿に囲まれてしまう兎丸・・・。
そして、無残にも・・・。
兎丸、死す・・・。
もっと、もっと、いっしょにやりたかった・・・。
気づくのが遅かった・・・。
「禿を始末せい・・・！」
もう少し早く気づいていれば・・・。
「兎丸の、ここざしこそが、新しき泊の礎じゃ・・・」
それに気づくのが、遅すぎた清盛の涙・・・。
そして、兎丸の亡骸は、泊の、まことの礎となる・・・。
あの笑顔は、もう戻らない・・・。
いつも笑顔で清盛を支えてきた、一番の相棒であったはずなのに・・・。
これで、よかったのか・・・清盛！
そこまでする「国づくり」とは、なんぞや・・・清盛！
「わかるまい。お前にも、兎丸にも誰にも・・・」
それを盛国にまで言ってよかったのか・・・清盛！
ひとりになってゆく・・・清盛！
それが、「修羅の道」という人生なのか・・・。
それでも、ゆくのか・・・清盛。
一方、牛若と弁慶が再会し、
源氏は、動き出す・・・。
どこかしら、
平家のなかからも、
不穏な思いが錯綜してきている・・・。
清盛、いよいよこれまでなのか・・・。
それにしても、
兎丸、あまりにも無念・・・。
この笑顔は、もう戻らない・・・。
