2007年に日本に行ったアンドレアス・エドルンドが修士になりました。
イェテボリ大学には音楽家に修士、博士のタイトルを与える制度があります。
優秀な音楽家には学者にない知識があるのだから、それを審査できる形にして、タイトルを与えようという考えです。
今までは音大の教師だった人が多かったのですが、最近は元学生が受かるようになりました。
最終試験は実技と口頭尋問。
実技が街中の教会でありました。
北欧からコンニチワ-アンドレアス・5
ハーガ教会。
ゴチック風の建物で、そんなに大きくないけど、独特な雰囲気があります。

北欧からコンニチワ-アンドレアス・4
私たちは時間を間違って、30分早く着いてしまいました。
音楽家たちはくつろいでパンをかじっている。
お昼を食べてこなかった私。お腹すいたなあ、と思ってたら、アンドレアスの奥さんが「食べる?」

北欧からコンニチワ-アンドレアス・3
ドイツ風のおいしいパンです。
アンドレアスが自分で焼いたそうです。
余裕満々。

さて、アンドレアスの論文のテーマは"改善された"ペルゴレーシのスタバート・マテル、というので、かの有名な「悲しみの聖母(1736年)」を50年後に"改善した"ゲオルグ・ヨセフ・フォーゲルの仕事を、現代、古楽を実践する音楽家の目から見ると・・・という考察です。
この学位は音楽家に与えられるものですから、実際に演奏している自分が出発点となることが条件です。
それで今日は先ず教会のオルガンを使って、フォーゲルの"改善された"作品を披露しました。

北欧からコンニチワ-アンドレアス・2
これがブロンボーの製作したオルガン。コールトーンといって、a=465Hz、今のラの音(a=440Hz)より半音高い。その上調律はミーン・トーン(中全音率)。
共演した音楽家たちはバロック楽器でチェロとコントラバスは半音低く、バイオリンとビオラは全音低い。
一番困るのはオルガンです。ミーントンだとヘ短調は音がゆがみすぎる。

それで実践したのが、
オルガンはD-moll
チェロ、コントラバスはE-moll
バイオリン、ビオラはF-moll
で合わせたのだそうです。

これは何もアンドレアスが考え付いたのではなく、バッハのBWV1083も楽譜が同じ調で書いてあるんだそうです。
オルガンという音程が決まってしまっていて、作ってから何百年も後まで使う楽器だと、昔の人も今の人も色々工夫しているのですね。
器楽もよかったけど、特にソプラノとカウンターテナーの2重唱が素晴らしかった。

北欧からコンニチワ-アンドレアス・1
コンサートの後仲間とダベるアンドレアス。左、ピンクの帽子は奥さんのギー。
この後、音大に戻って公開口頭尋問。
討論相手はバロック・バイオリン奏者でかなり手厳しかったです。
アンドレアスは今、博士課程に進まないかと、お声がかかっているらしいです。