信州読書会の宮澤さんが「高齢者の現状肯定によって生まれる政治風土」というタイトルで動画をアップしていて、「高齢者の現状肯定」というワードはまあ最近の政治的現状をよく表しているなぁと思ったのでアレコレ解説したいと思います。

 

 

この音声シリーズは、藤井聡さんが京都大学で主催したシンポジウム「グローバル資本主義を超えて」の内容を書籍化した『グローバリズムが世界を滅ぼす』のエマニュエル・トッドの箇所について解説している内容です。

 

で、まあこのシンポジウムの中でトッドはグローバリズムの進展が如何に格差を拡大させ、労働者の賃金の伸びを抑制し、若者世代に大変な打撃を与えることになったのか?という問題について語っているのですが、また同時にこのような人びとの生活に大変な打撃を与えるグローバリズムという政治システムに対して特に高齢者が肯定的な(少なくとも否定的ではない)評価与えてきたことがグローバリズムを後押しする原動力となったこと(あるいは、少なくともその動きに積極的に抵抗はしなかったこと)について解説しています。

 

ちなみに、日本では平成28年には高齢者人口は3461万人、総人口に占める割合は27.3%と共に過去最高となっており、これらの世代の選挙の投票率の高さを考えると非常に大きな政治勢力となっていることが理解できます(60歳以上だと2015年時点で33.1%)。

 

で、まあこの世代というのは極めて強烈な現状維持志向を持っているワケです。まあ、高齢化して保守化ある意味では当然の傾向ではありますが、また当時にこれらの世代は日本で言うなら戦後の焼け野原の時代を経験した世代であって、本当にまともな家も車も綺麗なトイレもないような本当に貧しい時代を経験した世代であって、これらの世代からすればいくら若者の貧困化とかワーキングやら雇用の非正規化やらブラック化やら言われたところで、「我々は、もっと貧しい焼け野原の時代を経験したのであります!!今の若者は恵まれすぎて精神が軟弱なのであります!!」の一言で全て済まされてしまうワケなのですね。

 

おまけに厄介なのが、それほどモノ不足の貧しい時代を経験しながら一方で、資本主義の黄金時代を経験した世代でもあって結構資産を蓄えていて、しかもしっかりと安定した年金システムによって守られてもいる。

 

要は最も安全圏から人生の先輩として教訓を垂れるのがやりやすい世代なのです。まあ、おそらく消費税増税に賛成した多くもこの世代が含まれるのではないでしょうか?要は、公共事業のような将来や将来世代のためのインフラ投資を控えて、社会保障にお金を回していく。萱野稔人氏は、現在の「公共事業を減らして社会保障を充実させろ!!」と叫ぶ高齢者に関して、「若い時には公共事業によって質の高い雇用や高い賃金の恩恵を享受し、歳を取ってからも手厚い社会保障によって守られている世代だ」と指摘していますが、まあこの世代というのは確かに貧しい時代を経験してはいるのですが、一方で諸々の好条件によって大変な利益を得てきた世代でもあります。

 

で、まあこれらの条件を考慮して、以前行われた「現在の社会に全体として満足か?」というアンケート調査の結果とサンプルを見てみると面白くて・・・

 

【若者注目!】「現在の社会に全体として満足:65.9%」調査の回答者の半数は60代以上であることが判明!

 

ネット上では、「こんなに満足している率が高いのか?!」と疑問の声が上がったのですが、まあ確かに回答者が高齢者中心であればそれほどおかしな結果ではないのかもしれない。それから、このアンケートのサンプルの偏りも、人口に占める高齢者の割合と、高齢者の方がアンケートにちゃんと回答する率が高いということも考慮に入れると必ずしも恣意的な手法を用いたとも言いにくい。

 

まあ、「世論調査にご協力ください!!」と言われてしっかりと律儀に対応するのは仕事もしないで年金生活をしている高齢者の方がずっと率は高いでしょうから・・・。

 

しかし、記事にも書いてあるように、おそらくこれと同種の偏りが選挙にもあるだろうと、土日出勤の社会人の多くはわざわざ事前投票を使ってまで投票しないでしょうからね・・・休日は疲れて寝てしまう人も多いでしょうし、何しろコレだけ自民党一強状況になれば選挙なんて行っても無駄という気持ちにもなります。一方で、高齢者は投票に行くのは当然の義務だと思っているし、なにより暇だから投票に行く。かくして、高齢者の票の割合は相対的に大きくなっていく。

 

一応、若い層では安倍政権を支持しない割合も高いようですが・・・

 

【18歳・19歳世論調査】安倍内閣「支持する38%:支持しない43%」憲法「変える必要ない57%:必要ある33%」

 

まあ、何しろ数が足りないし、社会の中枢で影響力を及ぼすほどの権力もない。一応このブログは自分と同じくらいの世代、つまり20代後半~30代前半くらいの読者を念頭に文章を書いているのですが、まあこのくらいの世代というのは特に政治においては何の影響力もないような存在なんですね(笑)

 

シールズの運動なんかも「何故、彼らは大きな政治的影響力を及ぼすことが出来なかったのか?」ということが議論になることもありましたが、もしかしたら最大の理由は単純に高齢化で彼らのような主張に共鳴する若者の数が絶対数として少なかったというだけの話かもしれないw

 

まあ、もう何年も政治ブログを続けてて本当にウンザリしますけどね・・・なんというか、これだけインターネットなどの様々なツールが充実して多様な方法で情報発信や政治参加が可能にな時代にありながら、一方で自分の言動や活動が一切政治や社会に影響を与えているという感覚がない。何か、ほとんど離れの小島で大声で叫んでいるような虚しさだけがそこに残るワケです。

 

もちろん、現実的に考えてこんなマイナーなイチ個人ブログが何かしらの政治的、社会的影響力を大いに発揮するなどということが現実的にあり得ないということは理解しているのですが、それにしても「もしかした、こうやって声を上げることが何か少しでも影響があるのかもしれない」という期待感すらもたらさないw

 

そんなワケで、結局「社会運動への積極的な参加」なんかよりも「少人数のグループで楽しくダンス」とか「政治的な意見の発信」よりも「自分の個人的な作品発表としてのダンス動画のアップロード」とかそっちに関心が移っていく。

 

このブログが、あまり扇動的な内容であったり、積極的な社会運動や政治参加を呼び掛ける内容よりも、どちらかというと単なる状況分析や、個人的な考察やら読書感想文的な内容が多くなっているのもひとえにはこのような無力感と徒労感が一つ大きな要因となっている気がします( ̄▽ ̄;)

 

私のブログは基本的に政治的な現状分析において、思想的側面を重視することが多いのですが、このような世代論的な観点から現在の政治状況について考えるとまた違った見方が出来て面白いのかな?と思って今回は色々と書いてみました。

 

 

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