今回は、今話題になっている大阪都構想と絡めて『アフターモダニティ』の解説をしていこうかと思います。

 『アフターモダニティ』は中江兆民や小林秀雄など、古い思想家を取り上げて解説する本なので、ともすると、「なんか今の時代とは対して関係のない、昔の思想かのマニアックな解説とかをやってるんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、全くそんなことはありません。

例えば、藤井聡さんはハンナ アーレントやオルテガなどの大衆社会論、全体主義といった概念や思想を取り入れて現代の社会状況や政治状況について解説していますが、この『アフターモダニティ』も少し注意して読むなら、現代においても通用する様々な有益な洞察が得られると思います。

 例えば、この本のフランスから帰ってきた中江兆民の解説ではこうあります。

 こうした混乱の中でイタリアに連戦連勝し彗星のごとく現れた人物、それが、ナポレオン・ボナパルトだと兆民は気がつく。ボナパルトは国外からの圧力をはねのけ、救世主の役割を演じ喝采を獲得、フランス議会を破壊し、自らが君臨する道を選んだ。-フランス革命について調べ続ける中で、ここまできて兆民は愕然とした。そして思った、これほどの皮肉があるのだろうかと。
 議会制を破壊したボナパルトは、人びとの自由を奪った存在である。にも関わらずボナパルトは賞賛されているではないか。ここには、人間が自らの自由を求めながら、結果的に自殺する姿がありありとみて取れる。自由を求めて自由を殺すという不可思議な矛盾が露呈している。兆民はそう思った。だから本来、フランス人はボナパルトを殺戮すべきだったじはずだ。だが、実際の群集はどうしたか。彼らは嬉々として、自らの自由をボナパルトに渡してしまったのだ(中略)
改めて兆民は思った人はときに個人的自由を投げだしてまで、英雄を待望する傾向がある。英雄=独裁者のもとに跪くだけではない、自らの手で独裁者を生み出すことに積極的に加担しさえするのだ。


 人間は時に、自らの自由と権利を奪い取る抑圧者を熱狂的に受け入れて支持する時があります。例えば、現在の大阪都構想、藤井聡さんは都構想問題に関する講演会の中で「大阪都構想とはつまり、大阪と大阪市民の自治を喪失させることだ!!」と述べています。

 自治とは、文字通り自ら治める権利と自由のことですが、これを放棄するのが大阪都構想の本質であり、逆の面から見れば、大阪市の持っている自由と権限を奪い取ることが大阪都構想の本質ということになります。

 本来であれば、自分たちから自由と権利を奪い取ろうとする抑圧者が現れれば多くの人々はそれに対抗すると考えるでしょう。しかし、現実には人々は時にそのような抑圧者を熱狂でもって受け入れ支持します。現実に、大阪市では市民の約半数が都構想を支持し、それ以上の数の人々が橋下徹を政治家として支持しています。

 これはまさに兆民が「愕然と」し「これほどの皮肉があるのだろうかと」思ったフランスの状況と全く同じであるといえるでしょう。本来「殺戮すべきだった」ナポレオンに自由を渡してしまったフランス人の愚行と、規模は違えど、全く同じことを大阪市民はしているワケです。

 次回は、なぜこんな事態に陥ってしまったのかということについて簡単に解説します。



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