海よりもまだ深く | カツヤハダオカ映画ブログ
海よりもまだ深く 2016年 日本
 ★★★★★★★★☆☆ 8点
 歩いても歩いてものその後?

スタッフキャスト
 監督/原案/脚本/編集:是枝裕和
 音楽/主題歌:ハナレグミ
 衣装:黒澤和子、撮影:山崎裕
 出演:阿部寛、真木よう子、小林聡美、リリー・フランキー
   池松壮亮、吉澤太陽、高橋和也、橋爪功
   樹木希林

感想
 是枝監督作品は誰も知らない、歩いても歩いても、
 奇跡そして父になる海街diaryを観てます。
 歩いても歩いてものその後のように
 見えてしかたがなかったです。

 というのも今作と非常に共通点が多い。

 主演が共に阿部寛でその母が共に樹木希林、
 阿部寛の義弟を演じるのも共に高橋和也。
 そして共に阿部寛が演じる役名は良多。

 良多という役名は今までにも歩いても歩いても、
 そして父になる、ゴーイングマイホームで使われていて、
 自分と同心円上の人物にその役名を使っているとの事。
 つまり是枝監督自信が感じたことが反映されている。

 良多という名前は高校の後輩の名前からとっているとのこと。

 それだけでなく
 笑えるホームドラマから急に家族の怖い話
 になるのも共通しているし、
 樹木希林が蝶を見て亡くなった自分の大切な人だと
 思うのも両作品に共通してある。 

 また歩いても歩いてものタイトルは
 いしだあゆみの「ブルーライトヨコハマ」の
 歌詞からとっているのですが、
 今作の海よりもまだ深くというタイトルは
 テレサ・テンの「別れの予感」の歌詞からとっている。
 歌の歌詞からタイトルをとっているのも共通。 

 歩いても歩いてもで印象的に使われるこのショットと

 本作のこのショットがかぶる。

 宝くじが当たったらまた3人で暮らせるかな?
 という息子の切ない顔と、
 台風の夜に阿部寛に外に誘われて
「うん。」と言う表情の嬉しいんだな!という顔が良い。
 是枝監督流石の子役演出で素晴らしかった。

 子役に台本を与えずにその場で口伝えする演出方は、
 名作映画クレイマー、クレイマーで
 子役に台本を与えなかった手法からきているようです。
 クレイマー、クレイマーと聞くと、
 是枝監督の歩いても歩いてもは
 クレイマー、クレイマーの影響があるなと感じる。
 それは両作とも前半と後半に同じシーンがあり、
 同じシーンなんだけど違って見えるという
 映画の教科書的な手法が使われている。

 歩いても歩いてもでは、印象的な階段のシーン、
 クレイマー、クレイマーではフレンチトーストを作るシーンや
 エレベーターのシーン。
 伊集院光のTSUTAYAにいってこれ借りようで
 クレイマー、クレイマーを紹介するぐらいでもあるので、
 是枝監督の原点とも言える映画なのかもしれません。

 樹木希林劇場全開!
 樹木希林の暴れっぷりが凄い!
 ここ最近樹木希林は常に100点で凄い!

 基本は樹木希林が笑わせてくれるんだけど、
 台風でみんなが樹木希林の団地に泊まる事になったシーンで、
 樹木希林が真木よう子に
 樹木希林「あなたたちもうダメなの?」
 真木よう子「黙ってうなずく。」

 という家族の怖いシーンが凄く良かった。

 阿部寛のダメっぷりが凄い、酷い!
 高校生からお金をゆすったらダメでしょ!
 不倫してる女性にお金を払ってくれたら、
 不倫をなかったことにするよとインチキしたらダメでしょ!
 母を心配させないためにお小遣をあげておきながら、
 母からお金を盗もうとしたらダメでしょ!
 ギャンブルやって息子に養育費払えないってダメでしょ!
 妹からお金借りたらダメでしょ!
 息子にミズノの靴(高い靴)を買ってやると言いながら、
 その靴にわざと傷をつけて安くしてもらったらダメでしょ!
 自分の母親と息子が家にいる中、
 流石に元奥さんを触ろうとしたらダメでしょ!
 と阿部寛どんだけダメなんだよ!というダメっぷり!

 小林聡美の正論なんだけど五月蝿そうな感じは
 小林聡美に合ってて良い!
 吉田大八監督の新たな傑作紙の月でも
 そういう役でしたよね。

 是枝監督は著書の歩くような速さでの中で、
「僕自身も団地を離れて20年がたち、
 帰郷する場所を失ってからすでに5年になる。
 故郷と呼ばれる場所はこの世に存在しないという寂しさ。
 自分の子供にとって今住んでいるマンションがやがて、
 故郷と呼べる場所になりえるのかという不安。
 いつかそんな感情も映画の中で描いてみたい思っている。」

 と語っているので、まさに本作がその映画だと思う。

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 なりたかった大人になれなかった人へ。
 
 夢見た未来とちがう今を生きる、元家族の物語。