韓国、「在日銀行支店」相次ぎ日本撤退「経済関係」希薄に | 勝又壽良の経済時評

韓国、「在日銀行支店」相次ぎ日本撤退「経済関係」希薄に



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韓国ビジネスの墓場
ロボット産業の聖地

韓国の「反日」は、日韓経済関係を疎遠にした。韓国の在日銀行・証券・保険の支店が、営業不振で日本撤退を決めている。朴大統領の対日強硬姿勢は、ビジネスで大損を招いている。韓国は大統領の意向が、国内政治とメディアの報道姿勢に強く影響する国である。朴大統領が「反日」を唱えれば、政治家もメディアも一斉に「右へ倣え」である。その意味で、韓国の大統領制は、独裁国家と似たような影響力を与えている。朴大統領の「反日」は、日韓経済関係に重大な影響を与えた。

韓国の代表的な企業といえば、サムスン電子と現代自動車である。韓国経済の屋台骨を支えているが、日本での販売はゼロ同然の厳しさに直面している。韓国製品は、日本が「墓場」だ。サムスンのスマホでは、スマホ本体から「サムスン」ブランドを消して販売するほど。日本の消費者が、「サムスン」のブランド名を見て、それだけで「手に取る」ことさえしないからだ。日本人が徹底的な韓国嫌いになった理由は、朴大統領の「反日発言」にある。

現代自動車もサムスン同様の「被害」にあっている。15年初から5月末まで現代・起亜自動車の日本での販売台数は驚くなかれ、たったの「12台」である。昨年は、通年で73台にすぎなかった。乗用車はゼロでも、大型バスなど商用車が売れた。現代自の関係者は次のように諦めの弁を語っている。

「14年、世界で販売台数が800万台を超える現代・起亜自動車は、ドイツでも約8万5000台を売り上げたが、日本市場では歯が立たない。現代自関係者は、『日本の国産車に対するプライドで日本市場は固く閉ざされている上、最近の円安も重なり、輸出の余地は見つからない』と話した」(『朝鮮日報』6月20日付)。韓国製品は、今や日本市場が「難攻不落」になっている。

日本市場にどうしても食い込めないのは、サムスンや現代自動車ばかりではない。韓国の金融機関も事情は同じである。こうした共通の背景を考えると、日本にとっては韓国の存在が必要不可欠でないことだ。具体的には、日韓貿易関係の低調に現れている。日本の経済構造にとって韓国は、必須の存在でなく選択肢の一つに過ぎないのだ。

次のデータは、韓国の輸出先別の比率(2015年1~9月現在)である。資料は『朝鮮日報』11月15日付)

(1)中国    25.5%
(2)米国    13.9%
(3)香港     5.5%
(4)ベトナム   5.3%
(5)日本     4.9%

韓国では、日本への輸出先が5位に落ちている。それ以前は3位以内にあった。円安=ウォン高という背景もあるが、日本の消費者が「メード・イン・コリア」に興味を持たなくなっていることも理由だ。率直に言って、しょっちゅう日本の悪口雑言を言っている韓国製品を使いたくない。そういう心情と見られる。

韓国ビジネスの墓場
『韓国経済新聞』(11月10日付)は、「韓国の銀行・証券・保険会社、日本から事実上撤収」と題して、次のように伝えた。

①「日本に進出した韓国の金融会社が日本から手を引いている。外国の金融会社が営業するのが難しい閉鎖的な市場の特性の上に、人口減少で市場も縮小するだろうとの見通しのためだ。日本の金融業界によれば、大宇(デウ)証券東京支店は、支店免許を返却するための手続きを始めている。現在5人の支店職員も年末までに1~2人に減らす予定だ。2012年に事務所から支店に変えて3年ぶりだ。今年1月にはサムスン証券が支店を事務所に切り替えた。今年の年末には日本で営業する韓国系の証券会社が現地法人のリーディング証券ジャパンだけが残る。残りの5社は全て事務所だ。2008年のグローバル金融危機の時も大信(テシン)・現代(ヒョンデ)・韓火(ハンファ)など8つの証券会社が日本で支店・事務所を運営していたが、それよりさらに縮小された」。

この記事は、韓国の金融関連会社が日本を撤退するという事実を報じている。その背景説明では完全に間違えている。韓国の金融会社が日本へ進出した理由は、「ジャパン・マネー」を韓国に引き入れる目的であったであろう。それが、当初の見込み通りの実績が上げられなかった。この場合、「外国の金融会社が営業するのが難しい閉鎖的な市場の特性の上に、人口減少で市場も縮小するだろう」と、日本に進出魅力がなくなったような言い方である。そうではなかろう。韓国経済の成長期待が低下して、「ジャパン・マネー」が韓国金融市場を見向きもしなくなった。それが真相のはずだ。

韓国経済は、人口動態的に見れば「合計特殊出生率」が、日本以下に低下している。人口高齢化のスピードは、日本をはるかに上回る。産業構造は、重厚長大産業ばかりであり、新産業の発展見通しが立たない。こうして、韓国の成長率は、3%を割り込んでいる。はっきり言えば、韓国経済の魅力は、日本以下である。そうしたところへ、「ジャパン・マネー」が流れるはずはない。韓国の在日銀行・保険・証券の支店閉鎖理由は、日本にあるのでなく韓国経済自体にあるのだ。

②「韓国の証券会社が支店をなくすのは年金基金、保険会社など日本の機関投資家を攻略してみたが、特別な成果を出せなかったからだ。日本の株式・債権市場の好況でも韓国系証券会社にとっては『絵に描いた餅』にすぎない。金融監督院東京事務所の関係者は、『数年間尽力しても結果がなく、今後良くなるだろうという希望もないばかりか、日本の資本市場からさらに学ぶこともないという考えで離れている』と話した。

韓国が、日本の機関投資家を動かして、「ジャパン・マネー」を取り入れるためには、韓国企業の「コーポレート・ガバナンス」が機能することだ。その点、日本は「アベノミクス」の一環として、「コーポレート・ガバナンス」を改革ポイントに上げている。具体的には、自己資本利益率(ROE)12%以上への引き上げである。株主を重視する政策が始まった。こうなると、日本での投資妙味が高まるので、あえて韓国企業へ投資する必要性がなくなる。

「日本の資本市場からさらに学ぶこともない」から、在日日本支店を閉鎖するとは「言いがかり」であろう。韓国の「コーポレート・ガバナンス」は、日本よりもかなり遅れている。韓国は、財閥制度を堅持しているからだ。少数株主で企業を支配しているので、大衆投資家を大事に扱わないという弊害を伴っている。こうした韓国企業へ、「ジャパン・マネー」が流れるとは思えない。

③「日本での事業を縮小するのは証券会社だけではない。サムスン生命とサムスン火災の東京事務所は、現『形だけ事務所』だ。今年6月から常駐している駐在員は1人もおらず、電話を受ける現地職員だけを置いている。業務がある時は本社の日本担当社員が東京を行き来して処理する。国内の保険会社の中では現代海上だけが日本支社を運営しており、教保(キョボ)生命・コリアンリ・韓火生命なども事務所だけを置いている』。

韓国の生損保会社が、日本に支店を開く理由は何か。一つは日本株への投資であろう。資産運用の一環として、日本の証券市場を常時、ウオッチすることは重要である。営業面では、日本で損害保険をかける荷主を募集する。こういう純然たるビジネス展開であろう。だが、既述の通り日韓の貿易総額は減少している。新たな荷主集めは困難に違いない。となれば、生損保会社が、日本撤退を決めるのは当然の話である。

④「銀行もやはり現地法人である新韓銀行系列のSBJ銀行を除き、2013年にKB国民銀行東京支店などが担保価値を水増しする手法で不正融資事件後に事実上の開店休業状態だ。韓国系銀行の日本店舗の全体資産は6月末現在で77億6000万ドルと、昨年末より10.4%減少した。昨年も15.8%減った。国民銀行の東京・大阪支店とウリィ銀行東京支店は不正融資事件に関与してそれぞれ4カ月と1カ月の営業停止処分まで受けた。韓国系銀行の中で唯一成長しているSBJ銀行のチン・オクトン社長は、『3年間とどまって離れる“流れ者駐在員”では日本市場の攻略に成功できない』として、『現地(注:日本)の金融会社と競争するには着実に資本を拡充し、人にも投資しなければならない』と話した」。

韓国の銀行が、日本へ進出するのは在日韓国人の預金を集めることであろう。韓国系企業に融資する上では、日本の銀行との競争が不可避である。日本の銀行は潤沢な資金を持ち、新たな貸出先開拓に目の色を変えている。そこへ韓国系銀行が割って入ることは至難な技に違いない。「日本の金融会社と競争するには着実に資本を拡充し、人にも投資しなければならない」と指摘しているのは当然のことだ。韓国の銀行と日本の銀行では、資金量が圧倒的に違っている。金融逼迫期であれば、韓国系銀行にも勝機はあるが、現在のような超金融緩和期では無理である。

韓国へ日本の資金が流れるには、韓国経済が魅力を増すことである。現状は、寿命のつきかかっている重厚長大産業が中心である。新産業が育たないのだ。かつては、日本企業が破竹の勢いで成長していたから、韓国へ技術移転することにあまり抵抗もなかった。だが、1980年代後半からの「円高=ウォン安」で、日本企業は追われる立場に変わった。技術移転で慎重になった。韓国企業は、技術的に行き詰まっていた。その後も続く『円高=ウォン安』で、韓国企業は何とか「ボロ」も出さずにきた。それも、3年前からの「円安=ウォン高」で、韓国企業の輸出競争力が限界にぶつかった。これが、経営破綻企業続出の背景である。

韓国では、「ゾンビ企業」が実に多い。営業利益で借入金利息も払えない企業が増加している。韓国政府は、この状態を放置してきた。政府の政策金融で、無理やり「延命」させてきたケースが圧倒的である。こうした韓国産業の脆弱性を理解するならば、日本が韓国へ資金を流すはずもない。韓国経済に非があるにも関わらず、韓国金融機関の日本撤退の理由を日本に押しつけている。「日本の金融市場が閉鎖的うえに、人口減少で市場も縮小するとの見通し」というのだ。韓国には、先端産業が存在しない。それが韓国経済の魅力を削いでいる。

ロボット産業の聖地
世界で「ロボット産業」への関心が高まっている。技術革新が進み、普及が加速する局面に入ってきたためだ。医療や介護、農業、防衛・軍事、金融など応用範囲は極めて広く、「ロボット」というテーマの魅力は潜在的な成長性の大きさを示す。米メリルリンチは今月上旬、「ロボット・レボリューション」と題したリポートを発行した。その概要は、次の記事で紹介する。このリポートによると、「ロボットや人工知能の導入により、多くの産業で生産性が30%上昇する」「知識労働者にしかできないと思われている仕事も自動化される」「米雇用の47%が自動化される可能性がある」などと激変する未来図を描いてみせた。この「人類の夢」実現において、韓国は日本に大きく遅れている。

『ブルームバーグ』(11月7日付)は、次のように伝えている。

⑤「“知能機械”の世界市場は2020年までに現在の3倍を超え、1530億ドル(約18兆6200億円)に拡大すると、バンク・オブ・アメリカ(BOA)メリルリンチが見通しを示した。ベイジア・マ氏(ロンドン在勤)率いるBOAのストラテジストらは、11月3日付のリポートで、『労働力や機動性、安全性や便利さ、さらに娯楽を提供するという面でロボットと人工知能は日常生活で不可欠となりつつある』と指摘。『人口動態やエネルギー効率、生産性、都市化、さらに賃金のインフレといった観点から、長期的に持続した成長が示唆される』と分析した」。

世界の人口動態は高齢化に向かっている。発展途上国もいずれ人口減に向かう。日本は世界最初の人口減社会に足を踏み入れた。それ故に、ロボット産業発展の基盤を持ち、世界最先端の位置にある。国連の世界知的所有権機関(WIPO)が、11月11日発表した報告書によると、1995年以降のロボット工学分野に関する特許申請数で、上位10社のうち8社を日本企業が占めた。他の2社は韓国のサムスンとドイツのボッシュである。こうして、「ロボット王国」日本の高い競争力を浮き彫りにした。これは、ロボットを生産現場へ導入するユーザーが特許を取得したもの。日本企業が、生産性向上で抜群の成果を上げていることの証である。肝心のロボット・メーカーは、後のパラグラフで取り上げている。

⑥「BOAの予測によれば、製造業工程のうち、人間に代わってロボットが行う作業の比率は現在の10%から25年までに45%へ上昇する。中国の牽引(けんいん)で、14年の世界ロボット販売は前年比29%増の107億ドルと、3年連続で過去最高を更新した。ソフトウエアや周辺機器、システムエンジニアリングを含むロボットシステム市場全体の売り上げは現在、320億ドルと推計されている」。

人間に代わってロボットが行う作業は、現在の10%が10年後までには45%まで上昇するという。こうなると、人件費アップはロボット導入による労働生産性向上で吸収できるはずだ。韓国はサムスンだけが目立つだけ。BOAによると、韓国には世界的に有望なロボット・メーカーが存在しない。日本は世界的なロボット・メーカーとロボット・ユーザーが揃っている点で、極めて有利な立場にある。

⑦「BOAが注目する企業は以下の通りだ。
▽ヘルスケア分野=米インテュイティブ・サージカル(米国)
▽工業オートメーション分野=ABB(スイス)、ファナック、三菱電機、安川電機、ナブテスコ、オムロン(いずれも日本)、ロックウェル・オートメーション(米国)、深セン市匯川技術(中国)、ABBインド(インド)」。

上記の中に、韓国の会社は一社もない。韓国はこの面で不利なのだ。工業オートメーション分野9社のうち、日本メーカーは6社も入っていない。まさに、日本の独壇場である。日本以外のメーカーは、ロボットの普及型であろう。日本が、ロボットという「未来の夢を」先取りする産業で、圧倒的な強さを表している。これでは、「ジャパン・マネー」が韓国へ流れるはずもない。むしろ、日本へ「コリア・マネー」を吸い寄せる可能性が大である。韓国は、日本と外交的に対立するデメリットがますます増えそうである。


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(2015年11月24日)