2015-02-18 04:05:25

中韓、日本製造業を見直す「TPP累積原産地規則」に呆然

テーマ:ブログ
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FTAに酔いすぎた反動
日韓産業構造の類似性

最近の中国官製メディアは、日本の製造業が「国内回帰」し始めているニュースを頻りと取り上げている。『新華社』と『人民日報』が、あたかも示し合わせたようにこの問題を流しているのだ。よほどの危機感を覚えているのであろう。従来は、中国市場を離れる日本企業は、成長の果実に預かれない。こう高飛車な態度で臨んでいた。それが今、すっかり事態の急変に慌て始めている。おかしいほどである。

『新華社』は2月3日、日本経済をめぐる内外の環境が変化するとともに、日本企業の「経営モデル」にも変化が起きていると伝えた。海外に生産拠点を持ち、海外で生産を行っていた日本企業が、生産拠点を続々と国内に移転させていると報じたのだ。「続々」という表現には、やや誇張した面も感じられる。ただ、これまでの「草木もなびく」といった「中国進出」と、明らかに状況は変わった。「日本企業よ、中国から離れないでおくれ」。そういった、中国側からの引き留めの印象が強い記事である。

前記の通り、日本企業が「経営モデル」の変化を引き起こしている背景は何か。TPP(環太平洋経済連携協定)合意が目前に来ている事情を見逃せない。実は、TPPでは「累積原産地規則」が存在する。TPP加盟国が工業製品の関税を原則無税にする場合、部品や素材の原産国が、TPP加盟国であることを前提にしている。中国や韓国など、TPP未加盟国での部品・素材では、「累積原産地規則」のメリットが受けられないのだ。詳細は、後で取り上げたい。

日本がTPPに加盟する動機は、工業製品の輸出を増やすことにある。雇用吸収力が大きく、付加価値の高い工業製品輸出を増やすのだ。このほか、海外からの投資増を招く。人材の交流を増やして労働力不足を緩和する。知的財産権保護を図って、日本発の知財権を普及拡大させる。むろん、安価な農産品輸入も目的である。逆に、日本の農産物輸出を図るという目標もある。

TPPには、こういった一連の目的が込められており、日本経済の「黎明期」になろうとしている。中韓は現在、TPPの「累積原産地規則」に注目し始めたのだ。

FTAに酔いすぎた反動
『朝鮮日報』(2月8日付け)は、コラム「『世界経済領土』73%の虛像」で次のように伝えた。

① 「今年のダボス会議は世界約40カ国の首脳、約300人の閣僚、約1500人の企業関係者が4日間にわたり話し合った。これまで韓国政府が命懸けで推進してきた2国間FTA(自由貿易協定)には全く関心が注がれなかった。関心の的になっていたのは多国間FTAである。その代表は、米国と日本が主導する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)だ。韓国政府はこれまでTPPに参加しなくても特に問題はないとの見解を持っていた。『世界経済領土(注・GDP)の73%を確保しているから、輸出市場はいくらでも開かれている』という考えからだ」。

② 「ダボス会議で、韓国政府の見方と全く違う話を聞いた。TPPが発効すれば韓国にとっては致命的になるというものである。それは、『累積原産地規則』があるからだ。工業製品の生産に使用される部品・素材はTPPの12カ国で生産された物品のみ国産(域内産)と認められるようになる。このため、TPP参加国は『累積原産地規則』を活用しようと、韓国製部品や素材ではなく、日本などTPP加盟国の製品を使うしかない構造になるのだ」。

昨年11月、韓国は中国と徹夜交渉で「中韓FTA」の合議にこぎ着けた。その時の高揚した新聞報道は、韓国の結んだすべてのFTAを合計すると、「世界経済領土の73%」が韓国輸出の優先的市場になっているとした。日本よりもはるかに有利な立場である。自信に満ちた報道ぶりであった。私もこのブログで取り上げて、「中韓のFTAなど大したことではない」と批判した。あれから3ヶ月余で、逆に「敗北宣言」である。TPPの「累積原産地規則」によって、韓国がTPPから差別的な扱いを受けることに気づいたのだ。気の毒やらおかしいやら、複雑な気持ちにさせられている。

「原産地規則」とは、ある産品がどの国や地域で作られたかを判断するための規則である。複数国間の関税撤廃などを目的とするFTAでは極めて重要な規則となる。FTAの本質が「差別」にあるからだ。TPPのように12ヶ国が参加する大がかりな貿易協定では、原産地規則は多国間に及ぶので「累積原産地規則」と形を変える。

「累積原産地規則」とは、仮にTPPで付加価値の基準が50%とされた場合、加盟国全ての付加価値を合計したものが50%以上であれば、TPP域内産であるとして、無税での輸入を認めようというものだ。現在の国際貿易の特徴は、素材や部品の貿易が最終製品の貿易よりも活発になっていることだ。複数国にわたる部品の「サプライ・チェ-ン」が形成されているように、一つの部品が多数国の製造によって賄われるのが普通である。最終製品に仕上がる前に、多数の国での部品製造が前提になる以上、TPP加盟国間での部品製造は「累積原産地規則」によって優遇(無税)される。韓国は、この「累積原産地規則」から漏れるので不利になる。記事では、こう言っているのだ。

日韓産業構造の類似性
③ 「問題は、自動車・繊維・電子・鉄鋼など日本と重なる韓国の主力商品のほとんどが、こうした危機に直面するようになることだ。これを乗り越えるには、遅まきながら今からでもTPPに参加するか、あるいはこれら12カ国に工場を建て、累積原産地規則を避けるかしかない。前者は日本が歓迎しないため容易でなく、後者は国内工場の海外移転とそれに伴う国内雇用の減少が懸念される」。

韓国にとって「累積原産地規則」が深刻なのは、日韓の輸出主力製品がことごとく競合していることだ。日本は、部品や素材の生産では世界一の競争力を持っている。世界各国へ進出しているから、「累積原産地規則」のメリットを存分に享受できる体制だ。韓国はTPPに未加入である。この差には天地の違いがある。

対策は、二つしかない。TPP加盟12ヶ国に工場をつくる。あるいはTPPに加入することである。後者の場合、「反日」で疎遠になっている日本へ、逆に頭を下げざるを得ない。日本が良い返事をしなければ、TPP加入問題は「注に浮く」。韓国は、ハタと困っているはずだ。改めて、近隣国との関係を良好にしておかないと、いざというとき頼み事を聞いてはもらえないのだ。慰安婦問題かTPP加入か。韓国は難しい問題の選択を迫られている。こんな不毛な選択をしないでも済むように、1965年の日韓基本条約の精神に戻れば良いだけのことだろう。

④ 「さらに懸念されるのは、米国と欧州が過去最大規模のFTAとなる『環大西洋貿易投資協定』(TTIP)を推進するに当たり、カナダと日本を含ませようとしていることだ。これにも『累積原産地規則』が適用されるのは明白だ。韓国はTPPから外れ、TTIPにも入り込めなければ、貿易で成り立っている韓国は輸出先をさらに失うことになるだろう。『世界経済領土の73%』を一場の春夢(はかない夢)に終わらせないためにも対策が急がれる」。

目下、米国と欧州が協議中のTTIP(「環大西洋貿易投資協定」)へ、カナダと日本を加えようという話が出ている、という。TTIPは、2013年7月に始まった交渉である。次に述べるような特色がある。他のFTAは相手国との間の貿易を拡大する手段として関税引き下げに主眼を置いている。

これに対し、TTIPは主に非関税障壁の撤廃や軽減に目を向け、その次に関税の撤廃に努力するもの。現実の米欧両経済圏の関税は、既に低いのが実態である。そこで、米欧間の貿易・投資から非関税障壁を撤廃することで、2027年までに1300万人の新規雇用を創出する目標達成が可能と考えている。先進国を網羅した経済圏へ、日本とカナダを加えることで、文字通り「先進国経済圏」の設立を図ろうというものだ。

この「先進国経済圏」へあえて、日本を加えようという狙いはどこにあるのか。すでに、日本とEUは安全保障面で密接な関係を築き始めている。日本は、英国とフランスについて外務・防衛トップの「2プラス2」会議を定期化している。欧州と日本の関係は従来、地理的な関係もあり希薄であった。それが、中国の軍事的台頭を契機にして、両者は接近している。経済面でも強い関係をつくり、地球的な規模で中国の軍事的な台頭へ備える。そういう意味合いが込められている。

将来、日本はNATO(北大西洋条約機構)に加盟して、安全保障の完璧を期すべきである。これは私の持論だが、安全保障では幾重にも網を張っておかないと、「中国リスク」から逃れられないであろう。相手は秦の始皇帝以来の「軍事国家」である。「中華民族の夢」を追い求めている国家だ。注意に注意をすることである。

韓国は、日本がTTIPに加盟するようなことになれば、「一大事」と恐れている。世界中で、「累積原産地規則」が生かして行けば、日本製品は抜群の競争力を持つ。日本企業は現在、「日本産業の空洞化」と騒がれたほど、世界各国へ進出している。海外で稼いだ利益を日本国内に戻すペースが加速している。

海外子会社からの配当金として、2014年に日本国内へ還流した金額は、昨年11月分までで過去最高額になっている。通年では、初めての4兆円台が見えてきた。日本企業がTTIPへ参加すれば、これまでの日本企業の海外進出が、すべてメリットになって戻ってくる。碁ではないが、過去の布石が断然光り輝く時代になってくるのだ。

『中央日報』(2月6日付け)は、次のように報じた。

⑤ 「韓国の産業通商資源部の関係者は2月5日、『TPP交渉参加国が妥結を宣言すれば、韓国政府は協定内容を検討した後、参加宣言をする計画』と明らかにした。この関係者は、『交渉国間の市場開放レベルなど協定の内容が分からない状態で参加の立場を明らかにするのは戦略的によくない』とし。『交渉妥結の結果を見て、TPP参加が国益になるかどうか検討した後、公式の参加宣言をするだろう』と付け加えた」。

韓国がTPPについて、かなり慌てている様子が分かる。中国の動向を気にしすぎて、早期の参加表明の機会を逸した。韓国にとって、中国はかつての宗主国になる。その精神的な従属感が、意思決定の時期を誤らせたのであろう。その点で、ベトナムは早々とTPP参加を決めていた。中国が、旧宗主国である点で韓国と同じである。だが、中越戦争(1979年)での被害意識が韓国とは違う決定をさせた。中国から可能な限り離れようという戦略だ。

韓国は、TPPに関する本質的な理解が足りなかったことも影響している。FTAが、十分にTPPの代行可能と判断した誤りである。中国の反対もあって、この間違った見方に足を掬われた。TPP発効後の参加表明では、日本との交渉が第一関門となろう。TPP参加予定国では、日米に次ぐ経済規模の国家であるが、利害関係がもっとも重なり合うのは日本である。韓国は、慰安婦問題など歴史認識で、日本を批判し続けてきた。それだけに、TPPは別問題として、スムースな交渉が始まるのだろうか。韓国にとっては、気の重い交渉になろう。

⑥ 「TPPは来月暫定妥結する可能性が高い。TPP交渉に参加中の12カ国代表は現在、遅くとも3月末まで合意草案をまとめることを目標に交渉している。TPP交渉を主導する日本と米国がまず合意案を出して妥結宣言すれば、残りの国が追認する形で総合妥結する見込みだ。韓国は、日本と米国が開放条件などにどのレベルで合意するかに注目している。無理な市場開放を要求されるなど不利な条件でなければ、交渉妥結直後に参加宣言があるとみられる」。

韓国は、米国とのFTAも締結している。ただ、未履行の項目が存在している。米国からは、TPP参加交渉より、まずこの未履行事項の完全実施を求められている。ともかく、12ヶ国のTPP交渉妥結の直後、韓国が参加意思を表明するという。一日も早く、日本との差を縮めたい。そういう切迫した感じが現れている。韓国がTPPに加盟実現の暁は、中国とのFTAはどのような位置づけにさせるのか。中韓経済関係の将来を占うものである。中国は、未だ韓国とのFTAの批准を済ませていないのだ。TPP交渉の動きを見ながら、韓国を牽制する。中国のことだから、そういう「嫌がらせ」は十分にあり得る。

(2015年2月18日)



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