韓国、勝敗・ランキングに執着「被害者意識」が生む妄念 | 勝又壽良の経済時評

韓国、勝敗・ランキングに執着「被害者意識」が生む妄念

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まだ「キム・ヨナ騒動」
中韓に共通の被害者意識

不思議な国民である。ソチ・オリンピックが終わっても、フィギュアスケート女子のキム・ヨナ選手が不公平な採点を受けた。そう思いこんで依然、納得しないのだ。ついには、国際スケート連盟(ISU)に調査を行うよう正式に要請することを決めたと報じられている。韓国人は、このように勝敗やランキングに対し異常なまでの執着を見せる。その精神構造はどうなっているのか。日本としては、これを真面目に理解しないと、今後の対韓国外交やビジネスにおいて足を掬われる危険がある。

韓国人は日本に対して大変な被害者意識を持っている。日本が韓国を併合したのは1910年である。それから35年間、日本の植民地支配下に置かれた。韓国にとってそれが、拭いがたい屈辱であった。そのように主張して現在に至っている。ことあるごとに、日本批判を繰り返しており、最近は中国と「反日」で一体化しており、ますますエスカレートしている。

韓国が親近感を持っている中国には、約1000年も支配され続けてきた。日本の統治時代の期間に比べれば、比較にならぬほどの超長期わたって、中国から搾取されていたのである。毎年、穀物と若い女性を「献上」していたのだ。こちらは不問にして、日本だけを責め立てている。この精神構造は余りにも偏っていると言うほかない。ベトナムも中国に支配されてきたが現在、「反中」を鮮明にしている。ベトナムは、中国支配下でいくたびか反乱を試み抵抗した歴史がある。片や、朝鮮は忠実な属国となり、政治・倫理面で完全に同化してきたのだ。その漢族と韓族は不思議なことに、共通した「被害者意識」を持っている。実は、漢族も苦難の歴史を背負っているのである。この点については、後半で取り上げる。

まだ「キム・ヨナ騒動」
まず、ソチ五輪での「キム・ヨナ騒動」のその後を見ておきたい。

韓国紙『朝鮮日報』(3月21日付け)は、次のように報じた。

① 「大韓体育会は、フィギュアスケート女子のキム・ヨナがソチ五輪で不公平な採点を受けたとして、国際スケート連盟(ISU)に対して調査を行うよう正式に要請することを決めた。大韓体育会はキム・ヨナ本人の同意を得た後、韓国スケート連盟と連名で正式な文書をISUに送付する。文書は審判団への徹底調査と公平性に疑惑が生じる採点の再発防止を要請する内容だという。ソチ五輪で、ミスのなかったキム・ヨナが、ジャンプにミスのあったソトニコワ(ロシア)に敗れたことで、韓国メディアやネットユーザーから判定の公平性を問う声があがっていた」。

スポーツの世界では、審判の判定に従うのがルールである。ところが、韓国では自らの判断基準が最高であるという前提に立っている。ここでも、「ミスのなかったキム・ヨナが、ジャンプにミスのあったソトニコワ(ロシア)に敗れた」のが納得できない。こう自説を主張している。フィギュアスケートは、華麗さ(表現力)も得点のポイントになっている。TVの解説者はそう伝えていた。「ミス」があったかどうかのほかに、ジャンプの高さ・力強さ・表現力など総合得点を競っている種目である。野球などのように、上げた「得点」で勝敗を決めるゲームではなさそうである。韓国は、このフィギュアスケートだけでなく、サッカーの試合についても「異議申し立て」をしているのだ。

『レコードチャイナ』(3月21日付け)は、次のように伝えた。

② 「3月18日に行われたアジアサッカー連盟(AFC)のアジア・チャンピオン・ズリーグ(ACL)グループG第3節、広州恒大(中国)対全北現代モータース(韓国)の試合で、全北現代のゴールが認められなかった。これについて、韓国メディアは『韓国サッカー協会はAFCに再発防止を訴える見通しだ』と伝えている」。

問題のシーンは、2対1で広州恒大がリードしていた57分に起こった。全北現代はFKからボールをつなぎ、最後は混戦からDF鄭仁煥が押し込んだが、その前にファウルがあったとしてゴールは認められなかった。スロー映像で見てもはっきりとわからない微妙な判定だった、と韓国側は主張している。こちらはまだ、キム・ヨナ選手の一件ほどの騒ぎにはなっていないが、韓国人の勝敗へのこだわりの強さを改めて印象づけている。

『朝鮮日報 中国語サイト』(2月24日付け)によると、米紙『ニューヨーク・タイムズ』はキム・ヨナ選手の銀メダルに憤慨する韓国人について、次のように分析している。

③ 「ソチ五輪フィギュア女子シングルの判定をめぐり、その再審査を求める署名活動に200万人あまりの署名が短時間で集まったことは極めて異例である。こうした現象は、韓国人特有の感情によるものである。韓国人にとって、国際競技は選手個人の問題ではなく、国家の問題になっている。韓国は西洋諸国や近隣の強国に虐げられた過去があるため、被害者意識が強い。だからこそ、これらの国と対戦する時、勝敗に強くこだわるのだ」。

短時間に200万人もの署名が集まったことは、韓国人がいかにゲームの勝敗にこだわっているかを証明している。これだけに止まらず、あらゆる種類の国家ランキングについても強いこだわりを持っている。私が韓国ウォッチをしている過程で気づくことは、「韓国何位、日本何位」といった式の記事が実に多いのだ。ある時は慨嘆し、ある時は勝ち誇った内容になっている。しかも、わずかでも日本を上回ると、大変な騒ぎである。「日本はもはや相手でない」。有頂天になるのだ。その点では、韓国と中国はきわめて似通ったパターンを示している。中国も「被害者意識」と「自信過剰」が同居しているのだ。

④ 「韓国はスポーツの勝敗だけでなく、あらゆる数字がもたらす結果に異常なほど執着する。毎年ノーベル賞受賞者が発表されるたびに、『なぜ韓国には受賞者がいないのか?』と嘆く国は珍しい。また、各国際機関が発表する国別ランキングに異常なほど興味を示すのも韓国だ。2002年のソルトレーク五輪において、ショートトラック男子1500メートルで韓国人選手が失格になった際の韓国側の猛抗議に比べれば、今回のキム・ヨナ騒動はまだおとなしいほうである。当時、デモ隊がソウルの米国大使館を取り囲み、警察が出動するほどだった。韓国の大手メディアや専門家は国民に対し、冷静で節度ある態度を呼び掛けて『過激な民族主義』を抑え込もうとしている」。

毎年、ノーベル賞授賞季節になると、韓国内では自国の特定学者の名前が出てくる。それが、いかにも受賞可能性があるかのように報道されている。読者にしてみれば、過大な期待を持つわけで、蓋を開けて残念がることの繰り返しだ。どう見ても韓国から、自然科学系のノーベル賞受賞者がすぐに出る可能性は小さい。中国と同じ儒教国家であり、科学技術発展の前提である論理学不毛の歴史を持つからだ。演繹法や帰納法といった論理学が否定されてきた歴史的背景がある。そうした、社会思想面での掘り下げが皆無である。自然科学不振の原因は想像以上に根深い。

自己省察に欠ける。勢い「被害者意識」だけが膨らんでしまうのだ。キム・ヨナ騒動は、ロシアの金メダリストへと飛び火している。「ソチ冬季五輪が閉幕したにもかかわらず、フィギュアスケート女子シングルで金メダルを取ったロシアのアデリナ・ソトニコワのフェイスブックには、何百件もの低俗な書き込みが相次いでいる。その半分以上は韓国人と思われるユーザーが書き込んだもの」(『朝鮮日報』2月25日付け)。この調子で、「日本批判」も繰り広げられているのだ。

米ニューヨークの韓人(韓国系住民)保護者協会が、アイビーリーグ(米国東部の名門私立大学8校)に属するペンシルベニア大学のキャンパスで、日本の旭日旗を思わせるデザインのステンドグラスを撤去するように反対運動を始めている。韓国人の「被害者意識」は米国まで飛び火している。

『朝鮮日報』(3月20日付け)は、次のように報じた。

⑤ 「ニューヨーク韓人保護者協会は、ペンシルベニア大学の芸術文化研究棟(ARCH)の学生食堂にあるステンドグラスに、旭日旗を思わせるデザインを見つけた。ただちに撤去するよう求める書簡を送ることを決めた。芸術文化研究棟は2年間にわたる改修工事を経てリニューアルされた建物で、問題のデザインは同棟の食堂にある15枚のステンドグラスの中の1枚から見つかったもの。窓の中央にはめ込まれた問題のステンドグラスは、赤い太陽から扇の骨のようなしま模様が延びており、旭日旗のデザインそのものだ。芸術文化研究棟は1928年に建てられたもので、問題のステンドグラスもそれと同じ時期に作られたものと推定されている」。

⑥ 「問題のステンドグラスは、韓人学生会によって大学側に対し正式に問題提起された。大学側は問題のステンドグラスが旭日旗と同じものだと認めたが、第2次大戦前に作られたものである。歴史性があることから、建物内に案内板を取り付けたり、パンフレットを建物内に用意したりして、経緯を説明する案を検討している。これに対し学生たちの間では賛否が分かれ、激論が繰り広げられている。一部の学生たちは、『昔からあったデザインが、後によくない形で使われたからといって、全て撤去することはできないのでないか』として、大学側の主張に理解を示している」。

⑦ 「多くの韓国系の学生たちは、『問題のデザインがナチスのシンボルだったとしても、同じことを言えるのか。日本は(芸術文化研究棟が建てられた)1928年より前から、旭日旗を掲げて多くの人々を殺傷した。建物ができたときからすでに戦犯旗だった』と反発している。ニューヨークの韓国系住民たちは、今回の事態を重く見て、大学側に決断を求めている。ニューヨーク韓人保護者協会は、『アイビーリーグの名門大学で、ナチスの象徴と変わらない旭日旗が、多くの学生たちの利用する建物のインテリアの一部となっていることは、決して看過できないことだ。子を持つ親として、ただちに撤去するよう求める書簡を、大学総長宛てに発送することを決めた』と説明した」。

韓国人留学生は、1928年に建造された建物にはめ込まれている「旭日旗のデザインのステンドグラス」撤去を大学当局に要求しているのだ。旭日旗は、戦犯旗であるという主張している。それは、ナチスのシンボルと同じだとしており、日本をナチスと同列に扱う議論を展開している。旭日旗を戦犯旗と言うならば、「日章旗」はどういう位置づけになるのか。日章旗は日本陸軍が戦闘時にはためかせていたが、旭日旗は日本海軍のシンボルであった。戦後は、海上自衛隊のシンボルとなって引き続き使われている。

米軍は戦後、旧日本軍に対する武装解除の際、密かに旧日本海軍の中堅人材を保護してきた事実がある。朝鮮戦争の際、海上封鎖を突破すべく協力したのが旧日本海軍の兵士であった。米国は、旭日旗の戦前の意味を承知の上で、戦後の海上自衛隊の使用を認めたはずである。旭日旗が、ナチスと同じ役割を果たした軍隊のシンボルと見たならば、絶対に了解を与えなかったに違いない。また、ナチス同然の手先であったならば、日本海軍の将兵を保護することもなかったであろう。

韓国人留学生やその保護者の言い分は、日本憎しという「反日」行動の言いがかりにすぎないのだ。1928年に建造された建物のステンドグラスは、それだけで歴史性を持っている。この点についての認識がなく、しかも米国の大学建物に対して撤去を要求するとは信じがたい行動である。ここまで、韓国人の「被害者意識」が強いとすれば、その原因がどこにあるのか。きわめて興味深いテーマである。

中韓に共通の被害者意識
韓国人の被害者意識が強いのは、既述の通り中国人にも共通している。習近平国家主席が叫ぶ「中華民族の再興」は、それなりの背景がある。過去1000年の歴史を見れば、明朝(1368~1644)の276年間を除いて、漢族(中国人)は一貫して他民族の支配を受けてきたという現実があるのだ。被害者意識を持って当然である。朝鮮の歴史でも同じである。朝鮮も長く中国の支配を受けてきた。その点で、漢族も韓族も同類相哀れむ仲間であった。だから、両者はきわめて似通った精神構造をしているのである。

中国には、「蛮夷(ばんい)操作」という言葉がある。漢族の周辺は野蛮な異民族であり、文化は低いものと認識してきた。この「蛮夷」は、遊牧民族であるため戦闘能力は漢族を上回る強敵であった。そこで、編み出されたのが「蛮夷操作」である。相手が戦闘能力で強いときは「下手」に出て融和姿勢に出る。次に、実力が五分五分になったら、「対等」に振る舞う。最後は、漢族が実力で相手より上になったら「屈服」させる、という三段階戦略である。中国は、これによって4000年を生き抜いて現在があるのだ。

上記の「蛮夷操作」をやや詳細に説明しておきたい。

(1) 自分たちよりも力を持った強い勢力に対して、最初は譲歩できるところはすべて譲歩する。無駄に抵抗することから生まれる被害を避け、できる限りの利益か、少なくともそこから得られる利益がある限り相手のご機嫌をとる。
(2) 強い勢力を持つ相手側の支配者には、賄賂を送って物的依存の罠に陥れる。これによって相手側の活気や長所などを弱体化させる。その一方で、漢族は力を蓄えて相手側と対等な位置につく。
(3) かつての相手側が十分に弱体化したところを見届けて、漢族は対等な関係を止め、相手に服従を強いて実権を掌握する。

一見、俗っぽいやり方であるが、これこそ漢族の生きる知恵であった。他民族から支配されながら、時間をかけて相手を籠絡して腑抜けにさせ、最後は勝利者になるというのだ。この戦略は、中国共産党になってから見事に米国に向けられてきた。ソ連と対決しているときは米国に接近する。ソ連が崩壊すると、米国の利用価値がなくなって「G2」などと称して、「米中対等」を演出している。この後は、米国の覇権に挑戦して世界覇権を握る。これが中国共産党の既成路線である。日本に対して強腰に出ている背景は、もはや日本から(1)の「できる限りの利益か、少なくともそこから得られる限り相手のご機嫌を取る」必要がなくなったと判断したからであろう。

韓国も、「蛮夷操作」を忠実に演じていると見て間違いない。中国と同じで(1)の段階で日本からは取れるものはかなり取った。これからは、日本が経済的に限界に達したと踏んで、(2)と(3)へ順次軌道を変えて進んで行く基本戦略を描いているはずだ。「弱い日本」と手を切って、「強い中国」と手を握る。「虎の威」を借りることが、韓国指導部の胸の内であろう。

この中韓の思惑は成功するだろうか。中国経済は「泥舟」である。私が、このブログで繰り返し主張し、実証分析でその証拠をお見せし続けている。今や「風前の灯火」と言っても過言でないほど、中国経済は苦しみもがいているのである。そんな中国とわざわざ手を組む、韓国の浅慮に驚くのだ。中韓はともに今後、人口動態変化(少子高齢化)という巨大な壁に阻まれることが決定的である。日本も同じ悩みを抱えるが、日本には「イノヴェーション」能力がある。中韓には、それが本質的に不足しているのだ。中韓はこの弱点を抱えながら、日本と真っ向勝負をしようとしている。愚かだと思う。物を言うのは、腕力でなくて智力(イノヴェーション能力)である。

(2014年4月1日)




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