『落下する夕方』人を本気で愛したら、嫌いになることはできません。

もしできたとしてもそれはものすごく困難なことです。

すべての瞬間・すべての場面・すべての場所に刻まれている思い出たち。


江國さんの小説の主人公はいつも優しく、せつなく、暖かいのです。


今回はそんな主人公を圧倒する登場人物がいました。

存在していたのかどうなのか分からない華子です。

まるでとりつかれてしまったかのような存在感。でも求められることを恐れ、逃げるという存在。それがまた圧倒的な存在感を与えています。


内容は、ありきたりの三角関係にはない、奥深さや難解さ、暖かさがあります。

展開も結末も一応に切なくさびしいです。でもこのさびしさも切なさも人を悲しくさせるのではありません。

とても暖かくさせてくれました。

人の暖かさやふれあい、そんなことを感じさせる一冊でした。


江國さんいい感じ!


・読んだ日:'98/04/12。


『落下する夕方』 『落下する夕方』 - 江國 香織
出版社 : 角川書店
出版日 : 1996/10/30
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