【メロキュンプレゼンツ!! 《ハッピー♡プレゼント!!》】への参加作品です。〔おまけ〕 《やっぱりあれじゃあ、メロでもキュンでもないよね~~・・・ と、言うことで〔おまけ〕です。 §Danger Gift~取り扱いの際には細心の注意を~ 前編 §Danger Gift~取り扱いの際には細心の注意を~ 後編 のその後です。 我が家ではこれが精一杯のメロキュンです。 よろしかったらお納めくださいませ! ユンまんまでした。》 §スノー・ドーム 「敦賀さん!綺麗ですね!?」 粉雪が舞い散る景色に、キョーコは愛らしく満面の笑みを浮かべ蓮を見つめた。 「・・・・そうだね?」 その笑顔に理性を総動員させて、笑顔を返し頷いてはいるものの・・・蓮はそろそろ限界だった。 誕生日にもらったプレゼントで悶々とした後、キョーコ自身というビックプレゼントをバレンタインにもらった蓮はこの上ない幸せの中にいるはずだった。 いいことも重なって、春から始まるドラマに二人とも起用されて今日はその撮影で人気の高いゲレンデに来ていた まだ交際を始めたばかりということもあり、周囲には知られていないので二人だけの(社はスルー)秘密というものも楽しめていた。 さっきまでは・・・。 「・・・最上さん、もう少し・・・」 「はい?」 身動きを取ろうとすると、振り返ったキョーコと鼻先が触れ合うほど近い距離になってしまった。 「っ!・・ごめん」 「!!い、いえっ」 それでも二人は離れられないでいた。 なぜなら・・・・ かまくらの中で雪に埋もれてしまっていたのだ。 今日は移動日ということもあり、声をかけて追ってくる女性スタッフや女性共演者から逃れるため蓮はキョーコと共にゲレンデから少し裏手に行った所で仲良く遊んでいた。 もちろん社には居場所も伝えてあるし、どれくらいの時間に戻るのかということも伝えているため遭難ではないのだが・・・。 素人作りしたかまくらは以外に上手くできたかのように見え、二人は入って会話に夢中になっていた。 しかし、天気が良すぎたのか突然片側が一気に崩れたのだ。 生き埋めというわけではなく、少しばかり空間を残して崩れたのだが入り口が半分以上埋まったため少し休憩してから外に出ようと相談していたのだ。 かまくらを作っていたスコップは外にあるため、ある程度入り口をほじ開ければキョーコぐらいならすり抜けられてそのスコップで蓮を助け出せばいいだけだ。 二人よりそって風も入ってこないスノードームの中はほんのり暖かく、音も遮断されていてまさしく二人だけの世界だった。 できればここで少しだけでも恋人らしく進展してみたいと思いながらも、蓮は迷っていた。 このロケにくる前々日、キョーコが蓮の部屋に夕食を作りに来た時に食後まったりとした雰囲気にそっとキョーコの傍に寄ったのだが。 小さな悲鳴のような声を上げ、目を見開きガチガチに固まってしまったことを思い出し踏み出せずにいた。 キョーコから告白してくれたとはいえ、恋愛の経験値は雲泥の差。 自分が知っているペースに合わせれば、キョーコが逃げ出してしまいそうな気がして冷静さを失わないように勤めていた。 が、それすらも試すようにまた蓮側の屋根が崩れて二人はぴったり寄り添うことになり急遽ここから出るために大急ぎで穴の部分を広げるため手作業で掘る事となった。 そんな中、天候が変わったのかチラつき始めた雪にキョーコが見せた笑顔は今の蓮にとっては何よりも大きな罠で、うっかりそれにはまってしまったら脱兎のごとく逃げ出すキョーコの後姿が容易に想像できた。 「はあ~!だいぶ手が冷えてきちゃいましたね・・・」 少し湿り気を帯びた雪の塊を掘り進めて、キョーコの手袋は濡ているうえ外気は冷えてきているため手袋をはずした指先は真っ赤になっていた。 「貸して?」 そのあまりの痛々しさに、蓮は自分も手袋を外しその大きな掌でキョーコの手を包み込むと大きく暖かな息を吹きかけた。 「あっ・・ありがとうございます!・・温かいです・・」 そう言って照れながら蓮の手の中から逃げ出そうとしたキョーコを、逃がすことはしなかった。 「つ、敦賀さん!?」 きゅっと強めに握られた両手に、熱が集中してくるような気がしてキョーコは声を上ずらせた。 すると蓮は、まっすぐキョーコを見つめた。 「・・・最上さん・・・俺・・怖い?」 「へ?」 「俺のこと・・怖い?」 「え・・・・」 「正直に言って?俺のこと・・怖い?」 じり・・っとさらに寄ってキョーコに迫る蓮は、この状況じゃなければ・・と考え始めた。 (・・・・できれば・・・こんな冷えた所じゃなくて・・・) 暖かな炎が燃え盛る暖炉の前で、淹れたてのコーヒーとホワホワと揺らぐ湯気がさも美味しそうなホットミルクを持ち他愛もない会話をしながらゆっくりと会話を途切れさせ・・・ 少しずつ、お互いの距離を測りながら顔を寄せ合い最初は触れたかわからないほど微かに唇を重ね・・今度はそれを確かめるように・・あとは欲望の赴くまま炎に照らされて獣のように・・・・・ 「るがさん?・・敦賀さん!?大丈夫ですか!!?」 「・・・え?」 「大丈夫ですか!?寝ちゃってませんか!?」 いつの間にか意識が違うところへ飛んでいたらしい蓮は、慌てているキョーコを見て手をぱっと放しまた手袋を装着すると作業を再開させながら謝った。 「ごめん・・少しぼーっとして・・すぐに出よう!」 「大丈夫ですか!?寒いですか!?・・・唇・・少し紫になってますね?」 キョーコは蓮に暖めてもらった掌を、蓮の頬にぺたりとくっつけてきた。 その行動に蓮は心臓を躍らせ、目を見開いた。 するとキョーコがゆっくりと蓮に近づいてきた。 今まで何度となく経験してきたことなのに、キョーコ相手だと心臓が勝手に早鐘を打ち始めることに蓮は驚きながらも瞳を閉じその瞬間を待った。 ぷに・・・ (・・・・?) 頬に暖かで柔らかな感触しか来ず、蓮は首を傾げながらうっすら目を開けた。 そこで見えたのは、至近距離でぼやけてはいるがキョーコが自分の頬を寄せているだけだった。 だが柔らかな頬からぬくもりが伝わってきて、ほわりと胸の中も温かくなった。 「ど・・どうですか?こういう時は人肌がいいと・・聞きますし・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・そうだね?」 キョーコの言葉に、不埒な考えが次々と浮かぶが恥ずかしそうに・・でも嬉しそうにホワホワと笑うキョーコを目の前に必死に耐えた。 何とか微笑み返すとフフっとキョーコが笑った。 「敦賀さん・・・あったかいですね?」 ふわふわホワホワ笑うキョーコに、キョーコの頬の柔らかさとぬくもりにプツン・・っと軽い音がした。 気がした。 「・・つるがさ・・・・」 次の瞬間には蓮の体はゆらりと動き、吸い寄せられるようにキョーコの顔を下から覗き込むように薄く開いた少し冷たい唇を食むように重ねてしまった。 「っん・・」 抵抗されなかったとか、口の中は程よく温かいとか、鼻から抜ける吐息が頬にくすぐったいとかそんなことよりも。 (・・あまい) 想像していた以上に甘美なその感覚に、頭の中がトロリとして『我慢』ってなんだったっけ?と蓮のブレーキをも簡単に壊してしまった。 「っつ!?敦賀さん!?」 更なる甘美を求め蓮は口付けを、スノージャケットに覆われているキョーコの肌に施そうとした。 がっちりと首元まであげられていたはずのチャックはいつの間にか少し下りていて、剥き出しになった首筋を少し吸い上げると途端に悲鳴に近い声で名前を呼ばれた。 しかし、箍がぶっ壊れた男にそんな声ぐらいでは聞き取れているはずもなく雪で囲まれた空間で体をのしかからせ始めた蓮にキョーコは目をグルグルと回し始めた。 「敦賀さん!?つるがさ・・・・・きゃあああああああああ!!!」 ジャケットの裾からいつの間にか進入していた冷たくなった蓮の手は、ぬくもりを求めるかのようにフリースのインナーの上から一番温かくて柔らかな心臓あたりで暖を取るように怪しげな動きを取り始めた。 そして思いっきり、キョーコの悲鳴が上がった。 耳の中にダメージを食らえば、暴走していた本能に少しブレーキがかかり蓮は慌ててキョーコのジャケットの中から己の手を抜いた。 「ご、ごめん!!ここでするつもりは・・・」 「・・・・・ここで?」 蓮の言い訳に青ざめるキョーコ。 それを見て失態に告ぐ失言に気づき、閉口する蓮。 沈黙がその場を包んだのもつかの間・・・。 ドザアア・・・ 蓮とキョーコの頭上に最後のかまくら屋根が崩れて落ちてきた。 幸いにも大した厚さでなかったため、生き埋めになることなく肩までは埋まったものの二人はそこから脱出することに成功したのだった。 *********** 「蓮!全然戻って来ないから心配したぞ!?」 ホテルへと戻ってきた二人の元に駆け寄ってきた社は、他のスタッフや一般客の目もあるため小声で二人を叱った。 同時に謝る二人の微妙な距離感に、社は首を傾げた。 「なんかあったのか?お前ら・・」 「・・・・い・・え・・・」 蓮が何とか誤魔化そうとして、顔を引きつらせながらキョーコを振り返るとキョーコは顔を俯かせたまま小走りに蓮の傍を離れ自分の部屋に戻っていってしまった。 「・・・・はあ・・・・」 落ち込んでいる蓮も、トボトボと部屋へ帰り始めてしまったので社は訳がわからないままも巻き込まれないようにそっとしておくことに決めた。 夕食の時も、その後のミーティングの時もキョーコは他の女優陣たちと仲良く談笑していたため蓮は声をかけることさえ出来ずまたもや凹みながら部屋へ戻ろうとした。 その時、ホテル内に設けられているセレクトショップが目に付いた。 この周辺の名産やお菓子、おみやげ物が売られているのが確認できた。 「・・・・あ・・」 ふらりと立ち寄って見ていると、そこにあったのは小さなスノードームだった。 ガラスドームの中には、今日の二人のようにかまくらに入った二体の人形が可愛らしく並んでいた。 (・・・・ちゃんと話をしよう・・) 蓮はそれをひとつ手に取ると、レジに向かった。 キョーコの部屋を目指して歩いていると、キョーコがこちらに向かって俯き加減で歩いてきた。 「最上さんっ」 「!?・・・あ・・敦賀さん・・・あのっ・・」 逃げられる前にキョーコの元に駆け寄ろうとした時、一般の女性客が蓮を探している声が聞こえてきた。 二人は慌てて非常階段扉の向こうに身を潜めた。 ニアミスでも会えないことにがっかりした声を出しながら去っていく女性客たちをやり過ごし、二人は安堵のため息をついた時お互いの距離の近さに驚きながらも離れることはしなかった。 「・・・今日は・・・ごめん・・・つい・・・でも!・・・君のことが好きだから・・・キスもしたいし、その先だって・・・君の全てが知りたいんだ」 真っ直ぐな視線と、真剣な面持ちにキョーコは耳まで真っ赤になった。 「っ!・・・で、でも!こ、心の・・準備が・・・」 「わかってる・・・だから・・ごめん・・・我慢・・出来なかった・・・最上さんの・・・キョーコちゃんの可愛い笑顔を見たら・・・抑え切れなかったし、あんな可愛いことするから俺・・誘われてるのかと・・」 「さそ!?」 「うん、だからキョーコちゃんも悪い。これからは無防備にあんなことしないように!特に俺以外に!」 あまりの口ぶりにキョーコは、呆けて口を開けたまま固まった。 「・・・聞いてる?キョーコちゃん・・・ちゃんとわかった?」 今日キスをした角度と同じように、下から覗き込んでくる蓮にキョーコは焦りながら頷いて体を仰け反らせた。 「わっ・・わかりました!わかったから・・・少し・・・ちか」 「だって・・・キスしたい」 「!!?」 ぎゃあ!?っと喉で叫んだキョーコの心の準備が整うのを待っているのか、蓮は下から覗き込んだ姿のままじっと眉尻を下げて見つめていた。 その表情に、反則だと心の中で叫びながらもキョーコはぎゅうっと目を瞑った。 それを確認した蓮は嬉しそうにその唇を堪能した。 少しかがんでいた蓮は、膝を伸ばしキョーコに覆いかぶされるようにその細い体を抱きしめた。 いつの間にか爪先立ちで必死に蓮の所業に付いていこうとしていたキョーコだが、深く貪られ始めるとタシタシと蓮の厚い胸板を叩いた。 「~~っ!!・・ぷは!・・・・だ・・だから!」 「ちゃんと待ったよ?」 キョーコに怒られた途端しょぼんとして、キョーコだけに見える耳を垂れさせる蓮に動揺しながらも手に持っていた小さな紙袋を慌てて差し出した。 「だ、だって!これも一緒につぶされちゃうと思ったからっ」 半分言い訳、半分本当でキョーコが差し出した中身を見て蓮は驚いた。 「同じの・・・」 「へ?」 蓮の言葉の意味がわからず首を傾げているキョーコに、蓮は先程買ったスノードームを同じような紙袋から出してキョーコに見せた。 「あ!・・・・」 「ね?」 キョーコが持っていたのも、蓮と同じかまくらの中で雪を眺める二体の人形が入ったスノードームだった。 そのことに二人は気恥ずかしくも、おかしくもなってお互い笑いあった。 笑い声が途切れかけた時、蓮が真っ直ぐキョーコを見つめながら口を開いた。 「キョーコちゃん・・・」 「つ・・・れ・・蓮さん!」 急に名前を呼ばれ、蓮は驚きと嬉しさで目を見開いた。 「!?」 「こ、こんど・・・これを持って・・・お家に・・お邪魔しても・・・良いですか?」 真っ赤な顔でスノードームを差し出すキョーコに、蓮は破顔した。 「もちろん!」 無事、二人の仲も元通りになり撮影も済んで帰ったその日。 二個のスノードームが蓮の家で仲良く並び、翌朝朝日に照らされて輝くのを二人は特別な想いで見ることになるのだった。 end