kashi-heigoの随筆風ブログ-ミーコA


 家の飼い猫ミーコは、ほんとうに困りもの。この寒い季節、夜中に外に出たいと襖戸をガリガリやって、せがむのである。昼間は、ソファで寝たいだけ寝て、夜深更、騒ぎ立てる。その度に、家内はつき合って、不平も不満も言わない。そこまでは、家内の業余とでも言うべき道楽であるから、許そうと思う。しかし、そのたびに寝室を開け閉めされると、せっかく温まった空気が冷やされてしまう。この季節、我がままミーコのために、玄関の表戸が少し開けてある。ドロボーなんぞ、いやしないが、なんとも外の寒気が家の中に入りこんで来るからやりきれない。

 ミーコが出たいと言えば、玄関戸を開けて出してやり、後はほっておけというのだが、「ミーコが可哀そうだ」という。そのことで、先日もいさかいがあった。ミーコが戻るまで、家内は深夜玄関で待っていた。なかなか戻って来ないものだから、ミーコを探しに表に出たりしたという。ついには風邪をひいてしまったのだ。ミーコを恨めばいいものを、「あなたが、意地悪だから・・」と言う。


 猫好きと言えば、上の娘もそうである。ニューヨークのアパートに猫を二匹も飼っていた。クロともう一匹は、白と茶のぶち猫だった。どうも二匹とも捨て猫で可哀そうだとばかり、拾って来たようだ。無聊をかこっているときも寂しい時も、なにかと相手をしてくれると言う。彼女は二匹の猫の写真を、いつも肌身離さず持ち歩いていた。


 家内は、僕の身の回りのことなど、相当手を抜くのだが、猫の世話だけは甲斐甲斐しい。かって、埼玉のT市に住んでいたとき、猫は家内、犬は僕の好みで飼っていたのだが、この愛犬も老衰で死んでしまった。それと軌を一にして、家内の猫活動が始まったのだ。猫好きの人は、すぐに仲よしになるものらしい。いつの間にか、グループが出来て、野良猫の餌やり、避妊・去勢の手術と懸命だった。そのうち、知らぬ間に、軒下に段ボールが置かれていた。寒い冬の野良ネコ用のベットである。病膏肓に入るとはこのことで、手のつけようがなかった。

 この間、家内の兄が都会からやってきて、我が家で食事をしたときのこと、その彼ときたら、開口一番、「猫はどこだい」と家内に尋ねていた。思わず膝を打った。きっとこの家系の猫好きのDNAが、家内と娘とに受け継がれているらしいと。

kashi-heigoの随筆風ブログ-クマ1

 哀しいかな、僕だけが被害者である。我が家には、飼い猫は、ミーコだけではない。家のガレージに、外猫のクマもいる。ノラ猫を、家内のたっての希望で飼うことになったのだが、こやつときたら家内には、「ニャーン、ニャーン」と愛想がよくて、僕と顔があっても、精々「ニャン」と一鳴きで済ませていたのだ。

 だから、「クマよ、よく聞け。この家の主は、俺であるぞ」と二、三度言ってやった。

 このクマ、実に生きるのに長けたやつで、このごろ僕にもすり寄ってきて、媚を売る。尻尾など微妙に僕の足に絡ませるのである。


 ネットで知り合った、<猫博士>によると、猫は、こめかみと頬、しっぽの付け根に臭腺を持っていて、テリトリーやお気に入りに、擦り付けて自分の臭いを付ける。「あなたは、クマに気に入られたんです。あなたは、きっと強引な求愛に弱い人です」と決めつけられてしまった。

 猫の師匠と崇める人の言葉だけに、僕は少し傷ついてしまった。      2011.10.30