kashi-heigoの随筆風ブログ-冬瓜オバさん


 この間、菜園畑で、大根と白菜に液肥をやっているところに、例の親愛なる、同級生の冬瓜オバさん(E子)がやってきた。また油を売りに来たのだ。
「平ちゃん、あんた何をしとーらけエ」と声をかけてきた、
最近あまり肥しをやっていないから、少し液肥を希釈して与えているところだと応えた。すると、E子が言う、
「あんた、窒素肥料ばっかりじゃ、ダメながやっそう。根肥えをやらんにゃ。化成肥料を使わっしゃい」と。


 昔はチッソは葉肥、リン酸は花肥・実肥・根肥、カリは実肥・根肥などといわれていた。大根のように根菜類は、窒素のほかにリン酸やカリ肥料も必要である。E子は、そう言いたいらしい。僕は、化学肥料を使わない主義である。これを言うときっとまた強烈な自説を押し付けてくるにちがいない。無肥料・無農薬が僕の信条だと言ってやった。


kashi-heigoの随筆風ブログ-ミニカボチャ

すると、E子ときたら、
「平ちゃん、大飯くらいのあんた水だけで生きられるがけエ。ごはんも肉も食べたかろう、酒は飲まんでもいいがアー」 と面憎いことを言う。
頭にきた僕は、E子が気にしていることが、つい口を突いて出てしまった。
「E子、あんた、毎日美味いごっつぉ(ご馳走)ばっかし、食っておるから、そーい肥るがや。俺は、あんた、ここに来た時、秋巡業で相撲取りがやってきたのかと思ったわい」


 E子反撃に出る、

「だら(馬鹿)、きゃ(これは)何を言うがアー。もうちょと真面目に百姓をやらんかい。あんたの畑の夏のトマト、あっりゃ、さくらんぼかと思ったわ」と。.
頭にくることを言う。

 実際、僕の畑のトマトはミニトマトで糖度が高くて、評判だったんだが、甘くするために水を控えたから、少し実が小さかったかもしれない。その上に、まだ言い足りないのか、罵詈雑言を浴びせてくる。
「それに、あんたのところのカボチャは、ありゃ夜店のおもちゃかのー。ままごと遊びの道具かと思ったわ」
 僕の作ったカボチャは、坊ちゃんカボチャで小さいのだが、味が好いのだ。癪に障ることを言う。だから、言ってやった、
「お前のところの、カボチャは、ハロウイーンにでも出すのか、なりばかりデカくて、不味いだろうが・・・」と。


 E子は専業農家の農婦である。畑作では自信もあろう。そこへ来ると僕は、俄か百姓である。いくらなんでも、お株をこれ以上奪ってはいけない。ここは、少し、下手に出ておいた方が得策である。少し、僕も反省してしばらく黙っていた。


kashi-heigoの随筆風ブログ-聖護院ダイコン


「平ちゃん、大根、菜っ葉は、マメに間引きをせんと駄目ながやっそ。肥しはあまりやらん、間引きの手を抜くじゃ、ろくな大根にはならんよ。太い大根を作るには、肥しをケチっては、駄目ながよー。私、ちょっこし手伝ってあげるっちゃ」
僕は、やっぱり肥しをたくさん与えて、立派な大根を作るべきだろうか迷ってしまう。僕がつくれば、きっとE子の脚のように太くて寸足らずなのになってしまう。 2011.10.26