kashi-heigoの随筆風ブログ-神社にて


 先日、従兄弟の長男の結婚式に招待を受けた。田舎の結婚式に参列するのは、久しぶりである。会場までは、バスを仕立てて行くという。バスの出発まで少し間があった。玄関先には、靴や草履がいっぱい並んでいる。従兄弟の長男ともなると、係累も芋つるのように増え、知らない顔の方が多い。出がけに、家内の言葉を思い出した。「あなたは、もう年寄りの部類だし、代替わりなのよ。大人しく、目立たないようにね」と。家内に一本釘をさされた。結婚式で本家風など吹かせるなと言いたかったらしい。床の間には、祝い酒が、ところ狭しと並んでいた。


 幼いころも、<嫁どり>といえば、一世一代の行事だ。<嫁どり>も自宅が会場で親戚が準備に駆り出されて、庭や家をきれいに掃除し、祝い幕など吊り段取ったものである。当日は、誰言うともなく、お祝に近所の人が集まって、家につながる路地や庭先が埋った。子供にも、お菓子やお餅が配られた。


 結婚式の会場は、県庁所在地の護国神社で式を挙げ、披露宴の会場はホテルだという。神社で神道に則った式に参加するのは、初めてで興味深かった。キリスト教のスタイルのチャペル挙式に慣れている僕には、新鮮に映った。「三三九度」の杯を交わし、荘重な空気の中、美しく装った和装の花嫁と、凛々しい花婿が結婚を誓う姿もまたいいものである。
 場所をホテルに移して、宴が開かれる。会場には、百数十人の招待客があった。最近は、仲人を立てないらしい。主賓の挨拶の次に、新郎が堂々とスピーチをする。新郎・新婦は、同郷で大学時代に知り合い、そのあと愛を育んだという。新郎の勤務する東京で二人は、すでに同居生活をしていて、今風の<出来ちゃった婚>なのである。


kashi-heigoの随筆風ブログ-文金高島田

 昔の花嫁は文金高島田を結い、角かくしに黒の大振り袖であった。この花嫁を一目見ようと集まった近所の人たちが、口々に「あーい、綺麗やー、顔上げっしゃい」と声をかける。祝膳は、鯛の塩焼き、赤飯など、縁起のいい料理が黒い足付きの膳でふるまわれた。松竹梅や寿の文字のかまぼこや鶴亀饅頭もあった。引き出物には、幅の広い昆布や鰹節があったように思う。
 田舎での<嫁どり>は翌日にも持ちこされ、近所の女房衆を集めて、御膳が振舞われる。数日して、紺の絣に赤いタスキをして、白い日本タオルを冠った若嫁さんが、かいがいしく働く姿は、幼い僕には、晴々しく映ったものである。

kashi-heigoの随筆風ブログ-披露宴


 ホテルの披露宴では、花嫁が三度もお色直しをした。テーブルはフランス料理に、和風料理が豪華にアレンジされ、酒もシャンパン、ワイン、日本酒、ウイスキーにビールと盛りだくさんである。引きで物は、重くて持ち切れない。ケーキ、和菓子、饅頭、お赤飯に、なんとメロンまでついていた。豪華絢爛たる披露宴は3時間半に及んだ。二人は、ホテルに一泊したあと、翌日はオーストラリアのゴールド・コーストに新婚旅行に行くと言う。一週間の後、東京の新居で新たな生活が始まる。


そういえば、僕の結婚式は、自宅の仏前で挙式。親戚の坊さんが、お経を読む簡素なものだった。披露宴は、そのころできた街のドライブイン。翌日、近所の奥さん方を招いての茶会があったから、新婚旅行は、近くの温泉に一泊しただけだった。 2011.10.22