kashi-heigoの随筆風ブログ-朝市


 第二土曜に町の朝市が開かれる。この朝市には、近隣の農家の主婦が、朝採れの野菜の数々を持ち寄って、店を開くのである。農家のカミさんの小遣い稼ぎというところだろうか。まあ、たいして変哲のない朝市である。この時期、我が家庭菜園の夏野菜も途切れて、秋野菜が豊富に出現するまでいくらか間がある。サツマイモは、なんとか収穫できるものの、サトイモ、ジャガイモなどまだである。ブロッコリーも人参も白菜もずーっと先である。
 先人の教えに、「十里四方のものを食すれば、人みな健やかなり」とある。「高いものを買わなくていい、健康を考えて十里四方からの旬のものをこの朝市で買い求めよ」と解釈した。家から十分ほど車を駆って向かったのである。朝の七時半スタートである。妻は葉物野菜が欲しいと言う。

 

 

kashi-heigoの随筆風ブログ-農婦

 

 


 まだ、開始まで少し時間があったが、すでになかなかの盛況で駐車場も満杯だった。町民会館のホールがその会場である。入り口には、コーヒーや主婦の手作りのケーキが振舞われている。近所のサバエさんも、あの冬瓜オバさんの姿も遠くにあった。

 入口から、少し入ったところに、リンゴと梨をテーブルの脇に山と積んで、売っている威勢のいいご婦人がいた。白い日本タオルを頭にかぶっているが、顔は浅黒く日焼けしている。たしかに見覚えがあった。顔は幅広く、目も鼻も大きい。腕など僕の首周りより大きい。同級生の富子、通称「トンコ」だった。名前を発すか発しないうちに、彼女の方から、
「あれえー、懐かしやー、平ちゃんじゃないがー」という。
次々と来る客の応対に忙殺され、それ以上話をする余裕などない。彼女の商売の邪魔をしては、いけないと思った。トンコの店で、梨とリンゴを買い求めた。それぞれ10個以上は、入っていた。締めて、大枚一枚、1000円だという。
「平ちゃん、この梨とリンゴ、少し器量悪いけど、味が好いがよー」と。「今朝、畑に行って拾ってきたから、格安なが・・・」と言って、その上に4つも5つもサービスをしてくれた。

 

kashi-heigoの随筆風ブログ-りんごと梨


 彼女の名前は、<野里富子>。僕が、高校を卒業したのと同時期に、もう結婚したと聞いていた。大きな農家の跡取り娘で、婿とりだったが、先年、主人が病気で亡くなったとの風のうわさだった。果樹園もやっているとは知らなかったが、あの元気な様子では、ご主人の不幸から立ち直ったに違いないと思う。



そこに、先ほどの同級生の冬瓜オバさん、
「平ちゃん、後家さんに、そいでかいと(そんなに沢山)サービスして貰ったがあー。なーん、わたしのなんか、あんたの半分しかないわ」と。
あるかないかの小さい目でウインクするのだ。どう言う意味なのだろう。僕は、都会ではちっとももてなかったが、田舎に住まうと、不思議にトンコにも冬瓜オバさんにも、よく持てるのだ。                                    2011.10.13